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スプリントインターバルは魔法なのか

以前のペダミミ「ワットバイクで出来るインターバル編」で「スプリントインターバル」というメニューについてご紹介したことを覚えてらっしゃる方、果たしていらっしゃるでしょうか。

具体的には、数十秒「全力」で踏むワークセットを数分間のレストを挟んで何度も繰り返すものです。

もうこの構成を聞いただけでそのキツさは想像に難しくないですが、実施した選手も「この世のものとは思えない辛さ」と称する悪魔のインターバルです。

しかし、私の経験ではここまで数名の選手達で有意と言って良いであろう短時間パワーの向上が見られた他、20分パワー、FTPまでもが大幅に改善した選手まで見られます。

そういった経緯もあり、ITOC(当コーチング)の一部選手からは「スプリントインターバルは魔法」という声まで聞かれるほどです。
そこまで言っていただけるとコーチ冥利に尽きます。ありがとうございます。

しかしながら、私はなるべく科学的根拠に重きを置いたトレーニングを選手達に提供しようと日々精進している(つもり)のコーチであります。

自分で作ったメニューを褒められて素直に嬉しい反面、なんだか悔しくなってしまい、なんとかこのパフォーマンス向上に関してエビデンスを引用し、納得のいく記事が書きたい、という意欲を駆り立てられました。
自分でやらせたメニューが褒められたけど何か悔しいから自分で欠点も利点も指摘しよう、というわけです。

世間的にもあまり関心のないインターバルである事は重々承知しつつも、可能性を秘めたメニューであることもまた事実。

そのため、今回はスプリントインターバルの生理学的背景について深く掘り下げて見ていきましょう。
ひと記事完結です。


スプリントインターバル(SIT)とは?


スプリントインターバル(SIT)とは基本的に「20-45秒程度のダッシュを数分間のレストを挟んで繰り返すもの」と定義されます。(1)

混同されがちな10秒程度のダッシュを30秒程度のレストを挟んで繰り返すいわゆる"インターバル耐性"を身に付けるために行うメニューとは別物で、SITにおいては数分間の長いレストで割と十分な程度まで回復させてから追い込む、というのが大事になります。
(あるいは数分間休まないと続けられない、とも言います)

ただし、ワーク強度は「全力=オールアウト」です。
負荷設定のためのテストもパワーメーターすらも必要ない、非常に取り組みやすくフレンドリーかつ原初的なインターバルでもあります。データ解析を無視すれば心拍計すら無しで取り組むこともできます。

ですが、毎回「この数十秒で人生を終えるつもりで踏んでください」と、選手にはよく言っています。オールアウトとはそういうものです。

さて、具体的なメニュー構成は様々なバリエーションがありますが、

30sec → 2min (2)
30sec → 4min (3),(4),(5),(6)

(ワーク強度は全てオールアウト)

と、ここに挙げた以外にも30秒ワーク、4分レストとされている研究がほとんどのように感じます。どうやらこの構成がゴールドスタンダードである模様です。

セット数は対象者のトレーニングステータスに応じて4-12セットまで幅広く設定されており、当然ながら高いVO2max等を有する選手ではより多量のスプリントが要求される、と考えて良いでしょう。

レスト強度はパッシブ(1),(2)、もしくはアクティブでも非常に低い強度(6)で設定されており、いかに回復に重点を置いているかが伺えます。これはやってみると良くわかりますが、パッシブレスト4minでも一瞬に感じるほどです。

このように、ほぼワーク・レスト構成が固定されているため非常に簡単に作れて取り組みやすいインターバルではあります。

ですが、繰り返し全力でもがく、という特性上、疲労もかなりのものになる上に十分な効果を得るには週に何回か行わなければならない、という報告が多くみられるため、実施するなら現実的には他のインターバルメニューを中止しなければならないこともあるでしょう。

果たしてそこまでしてスプリントインターバルは取り組む価値があるのか?
今回はそれを掘り下げていきます。

スプリントインターバルの効果

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