予備校に行きたい
彼らの顔は死んでいる。
派手な色の私服、ヘッドホン、黒縁メガネ、など
多種多様な姿の彼らに共通する、死。
よく歩く道に予備校がある。
私が子供の頃通っていたのは、
元からあった建物を予備校にしました、
という感じの所で、古い建物の温もりがあった。
対して、この予備校は、
初めから予備校として産まれた、
純正で、無機質で、大きな予備校である。
まさに、予備校の中の、予備校…!(vc:立木文彦)
この道の歩道が、交通量の割にとにかく細い。
そのため、様々な予備校生が自然に列となって、
無機質な入り口に吸い込まれていく。
「頑張れ!受験生!」
的なCMで、受験生を描写する場合、
大体が机に向かって勉強する姿か、
意気込んで受験会場へ向かう姿などである。
そんなCMで、
この瞬間を切り取った方がよいのではと思うくらい、
彼らの死に顔は美しい。
待ち受ける長時間の拘束に対する諦め、
変わらない日常がまた訪れる憂鬱、
予備校に友達がいない寂しさ、
模試の結果が悪かった悲しさ、
死に顔の理由は様々だろう。
それでも彼らは、今日も建物に入る。
何もない私は、彼らをただ眺めている。