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歌で食べていく 働くオペラ歌手

私の職業はオペラ歌手です。
というセリフを聞いて何を思うでしょうか。
残念ながら日本では「凄いわね、それで仕事は何?」と聞かれてしまうことがあります。これには様々な理由があると思います。日本ではどんなに素晴らしい歌手でも歌だけで生きていくのは厳しいというのが現実です。

一方ヨーロッパはどうでしょうか。私はイタリアに住んでいますが、どんなにお金がないイタリアでも歌だけで(オペラ歌手として劇場で歌う)生きていくことは可能です。もちろんそこにたどり着くのは決して簡単なことではありません。ですが、私と同世代の優秀な歌手は自分で稼いだお金でSUZUKIの車を買って大喜びしていました。まあイタリアはイタリアで問題を抱えてはいますが、とにかく歌だけで生きていけるだけの出演料と公演回数があります。

私は日本の音大のキャリアサポートに疑問を感じることがあります。一般企業に就職したい学生には手厚いサポートがあるにも関わらず、音楽家として、演奏家として生きていこうという学生にはサポートが一切ありません。野放し状態で、経済的に自立しようとする学生も僅かです。もちろん実家が太いとか資産家だとか経済的に自立しなくてもいい人ならそんなこと考えなくてもいいのかもしれませんが、全員が全員そんな豊かなわけではなく、いつかは経済的に自立しなければなりません。

日本で演奏家として働く場合、一回の出演料はどれくらいなのか、副業をしないと生きていけないのであれば、どんな副業をするのか。一方で欧米で同じ仕事をするなら、一回の演奏のギャラはいくらくらいなのか。これくらいは学生のうちに知っておきたいです。具体的な額や生きていくための日々のスケジュールを知って、私はこんな生活嫌だと思えば、普通に就職して演奏は趣味で続けるという選択も学生のうちにできます。欧米の方が演奏だけで食べていく未来があるから留学しようという選択もできるかもしれません。
まずはこういった具体的な情報が圧倒的に足りていないと感じます。そして、何より卒業後、演奏家として働くための道も示されることはありません。謎に包まれています。フリーランスとして働いてくのであれば、学生のうちから、フリーランスとはどういう働き方をするのか知っておく必要があります。

音楽家を育てる教育機関であるはずの音楽大学なのに、こういった演奏家としてのキャリアサポートは一切ありません。具体的な道筋がわからないからとりあえずみんなと同じ道を歩く、というパターンがよく見受けられます。ですが、あなたが本当にしたいことは何なのでしょうか?歌を生業としたいのでしょうか。それとも歌は楽しく続けられたらいいのでしょうか。どの選択も間違いなんてありません。人の幸せは人それぞれなのですから。どちらにせよ、大事なのは自分は何を望んでいるのか、を知ることです。歌を生業としようとは思わないけれど、音大まで行ったのに趣味でやるなんてカッコ悪い…なんて考える必要はありません。あなたの人生はあなたのものなのですから。

というわけで、今回はヨーロッパの歌手の働き方について書いていきたいと思います。以前何度かこちらのnoteにオスロとプラハの劇場の働き方を書きましたのでぜひこちらもご覧ください。

まずオペラ歌手の働き方は、大きく2つあります。
フリーランスと専属歌手です。

私が知る限り、ドイツ、チェコ、ノルウェー、オーストリアは専属歌手として働くことができます。国立の劇場に専属歌手として働くことになれば、それは立派な国家公務員です。
一方、イタリア、イギリス、スペイン、ベルギー、オランダ等ではフリーランスとして働くことになります。プロダクションごとに劇場と契約します。エージェントに所属することができれば、エージェントが大きな仕事をとってきてくれます。よく間違われることがありますが、ここで注意したいのは、エージェントに所属してもフリーランスであるということは変わらないということです。

では一体いくら稼ぐことができるのでしょうか…..
続きはまた!



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