openpageが考える2022年のカスタマーサクセスとは?潮流となる動きと取り組み
2021年は、カスタマーサクセスに特化した様々な発信を行ってきました。
読者の皆様、そしてお世話になった皆様、ありがとうございました。
本記事では、2022年は「カスタマーサクセス」はこんなトレンドになってく、というまとめ記事にしたいと思います。
※カスタマーサクセスの新規取り組み、デジタル化、効率化、スケールをご検討の企業様はお気軽にご相談ください!
2022年のカスタマーサクセスとは?①:ヘルススコアからプレイブックへ
プレイブックとはなにか?
カスタマーサクセスにおける「todoリスト」のようなイメージです。
カスタマーサクセスにおいては「ヘルススコア」が有名な施策なのですが、データを集め統合する難易度から、やや馴染みにくい概念でした。
一方、プレイブックはスプレッドシートでも作れる簡単なものです。
わざわざ「プレイブック」と言葉にせずとも、既に取り組んでいるカスタマーサクセス担当は多いと思います。
プレイブックの作り方は簡単で、カスタマーサクセスのフェーズ(オンボーディング、アダプション、エクスパンション)に沿って何のタスクが発生するかをスプレッドシートで整理すれば完了です。
例えばSmartHRが公開しているSmartHR のオンボーディング戦略では、オンボーディングフェーズでは下記のタスクがあると整理しています。
このように自社の製品や業務に沿って整理し、体系化していく「プレイブック作成業務」は2022年様々な企業が取り組むことでしょう。
2022年のカスタマーサクセスとは?②:製品から結果とサービスの競争へ
「なぜあなたのチームのプロダクトは太ってしまうのか」というスライドで、ITソフトウェア製品の機能は実はほとんど使われないという統計データを紹介していました。
SaaSはどんどん新機能を開発していくことが出来るのですが、たくさん機能があっても使われない(むしろカスタマーサクセスの負担を増やす)ことにも繋がります。
そこで考えるべきは、機能ではなく「どれだけ効果が出せるか」です。
製品機能ではなく「効果を出すためのサービス」を提供しているんだという発想の転換が必要です。
サービス提供をするのはカスタマーサクセス組織ですので、カスタマーサクセス一人ひとりの成熟度を高めていくことが重要です。
RIZAPはサービスレベルを高く維持するため、採用率を3.2%に絞り、192時間のカリキュラムに沿って従業員を教育しています。
カスタマーサクセスも、製品自体の良さはもちろんながら、結果にコミットできる人材をどれだけ厳選&育成し、最強のサービス提供環境を整えていくかも重要になるでしょう。
2022年のカスタマーサクセスとは?③:オンボーディング以前のオフボード
先日、ALL STAR SAAS FUNDの神前さんと話していたときに、「カスタマーサクセスはオンボーディングの前のオフボードが重要」という話が出ました。オフボードとは、これまでの常識や考えの癖をリセットすることです。
書籍「THE CATALYST 一瞬で人の心が変わる伝え方の技術」によると、そもそも人には変化を妨げる慣性があると説明されています。
製品を契約しているのにやる気がなさそうな顧客がいる理由は、「これまで通りでいい」という現状維持の慣性が強く働いてオフボードが出来ていないからです。
反発、不安、現状維持・・・このような新しいことを始めることを妨げるマインドがある、ということを認識し、お客様は現状から変えていくべきなんだと気持ちを変えるコミュニケーションがカスタマーサクセスには必要です。
そのためには、カスタマーサクセス組織はコーチングのような高度なコミュニケーションスキルを訓練する必要があるでしょう。
また、カスタマーサクセスだけでなくマーケティングやセールス段階でも、オフボードを意識したコミュニケーションが重要です。
freeeでマーケティング分野の執行役員を勤めていた中東孝夫さんは、マーケティングにおけるプロセスの中で「現状維持」(そもそもこの製品の導入は必要ないのでは?この分野は大きな課題ではないよね等)の気持ちの払拭に頭を使ってるとお話を聞きました。
オンボーディング以前に、オフボードをマーケティング・セールス・カスタマーサクセスが一貫となって訴え、製品を利用し問題解決をするモチベートに務めるべきです。
2022年のカスタマーサクセスとは?④:上場SaaSは次のフェーズであるクロスセル体制を整備
多くの上場SaaSはマルチプロダクト(複数製品を持つ)体制に変わり、新規事業、M&Aを積極的に行うことによる製品ポートフォリオ拡充に取り組んでいます。
例えば、私が前職で所属していたVisionalグループは、社内のインキュベート組織とM&Aにより、HRtechならびにDX領域の新事業を積極的に膨らませていました。
そうすると、財務的に重要となるのはクロスセルによる売上拡大、つまり既存顧客向けセールスです。
プレイドの野村修平さんもカスタマーサクセスとしてのセールスの重要性についての記事を書いて話題になりました。
各社、まだシングルプロダクトのカスタマーサクセス体制整備に取り組み最中である企業様がほとんどなのですが、上場しているSaaSベンダーを中心に
その次に必要となるマルチプロダクトのクロスセル体制を整えていく1年になるでしょう。
2022年のカスタマーサクセスとは?④:カスタマーサクセスの人数不足と教育(主にバーチカルSaaS)
私は前職が人材業界だったため、現在も人材エージェントや求人媒体の方々とSaaS領域の求人の情報交換をしているのですが、よく話題になるのは「バーチカルSaaSでビジネス系の人数不足が深刻化している」ことです。
というのも、バーチカルSaaSは各業界に根づいたプロダクトとなるため、人材要件が難しく採用に苦戦します。「業界専門性を持つ×ITに強い×ベンチャー気質」という条件が、人材要件としてはなかなか難しいのです。
しかし、マーケティングでお金をかければ顧客数は増やせるため、客観的にみて取引を膨らませ過ぎて、組織が破綻しているケースが目立つという話を聞くことが増えました。
具体的には、社内残業が増えすぎている、育成不足に陥ってる、顧客不満が大きくなっている、商談機会が損失している、オンボーディングがほとんど出来ていない…といったことが採用とマネジメント不全から起こっているのです。
そのため、出来るところからカスタマーサクセスのリソース拡充、デジタルによる自動化、データ利用による効率化に取り組むことを本格的に行う企業が次第に増えていくでしょう。
2022年のカスタマーサクセスとは?⑤:PLGでのSaaS市場再編
これまでの日本のSaaSベンダーの成功パターンは、大手企業に高単価販売、手厚くセールス/CSの人件費をかけることでした。
しかし、昨今の米国SaaS市場ではPLG(プロダクトレッドグロース/製品を中心に事業を牽引する)モデルが急成長しており、一気に市場の評価がひっくり返りつつあります。つまり、「ビジネスエンドユーザー向け、単価が安い、製品が使いやすい」といった特徴のプロダクト中心の経営がとても流行っています。
notion、zoom、Slack、Shopfy、figma…といった企業が先行例ですね。
決算が読めるようになるノートの下記記事では、低ARPU(低単価)の企業のARR成長率や時価総額が、高ARPU(高単価)の企業に勝っていることを定量的に分析されています。
ALL STAR SAAS FUNDの前田ヒロさんはYou Tubeにて、このようなPLGモデルのSaaSを「SaaSの第二世代」と名付けてます。これはSLGモデルのSaaSとは異なる経営スタイルであり、カスタマーサクセスだけでなく経営の方法全般が再編するインパクトがあります。
カスタマーサクセスは2013年頃に米国Gainsightなどの躍進で流行し、日本に2018年頃それが流れてきたことを考えると、2020年頃に流行りだしたPLGは2025年頃に日本でも流行るのではないかと思います。
それに応じて、徐々にではありますが、カスタマーサクセスの方法もよりテックタッチ、プロダクト主導なものに変化していくでしょう。
2022年のカスタマーサクセスとは?⑥:SaaS以外のカスタマーサクセス戦略の取り組み
2021年にopenpageの製品を経営していて気づいたことは、SaaS以外の領域でも、自社でカスタマーサクセスを導入できないか検討している企業が増えてきていることです。
具体的には、BtoBの製造業やSIerがそうです。BtoB取引においては、従来、営業企画、CRM、ルートセールス、カスタマーサービスといった部署や職能が社内にあります。これら役職の方々がカスタマーサクセスの取り組みをキャッチアップし、自社の取り組みに活かそうとしているのです。
これは、BtoBマーケティングについて、SaaS企業が盛んに始めたのちに大手企業もキャッチアップしていったのと似た構造です。
昨年は私自身もBtoBの製造業やSIerの企業様社内勉強会に呼ばれるシーンもありました。
BtoBの製造業やSIerは、SaaSより売上・従業員規模が大きく、複数製品を持っているため、カスタマーサクセスの財務効果はSaaSを上回る可能性もあります。
openpageの製品もこれに対応するため開発を進めなければなりません。
おわりに
お読みいただきありがとうございました。
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藤島 誓也:Twitterアカウント
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