カスタマーサクセス:ロータッチ施策の入門と基本(米国のカスタマーサクセスに学ぶ)
日本国内のカスタマーサクセスの記事は、「ハイタッチ」に関する情報は多いのですが「ロータッチ」に関する情報はあまりありません。
しかし国土が大きい米国では逆で、ロータッチでいかにカスタマーサクセスとしての顧客体験を作り込むか、という情報が多く流通しています。
そこで本記事では、米国のカスタマーサクセスのロータッチ施策としてどのようなことが行われているのか、その取り組み概要について紹介します。
皆さんのカスタマーサクセス組織の改善にお役立てください。
カスタマーサクセスのハイタッチとロータッチの違い
これはもう皆さんご存知かと思いますが、ハイタッチはカスタマーサクセス担当者が直接に担当顧客を持ち、個別サポートをする。
ロータッチはカスタマーサクセス担当者は担当を持たず、ツールやプログラムを利用して大勢の顧客にサポートをする、という方法です。
米国のカスタマーサクセスイベントなどでよく話されている話題は、「いかにロータッチのカスタマーサクセスを、ハイタッチのように丁寧で個別化された(自分ごとに感じるような)体験に磨いていくか」というものです。
ロータッチ、という表現はよくよく考えてみれば、ハイ(高い)に対してロー(低い)コミュニケーションという意味でもあるため、一見失礼なスタイルでもあります。
一斉配信のメールやヘルプサイトはなかなか見らず、ロータッチを辞めてしまった会社もあるでしょう。
そこで米国のカスタマーサクセスでは、デジタルマーケティングのツールを用いて、顧客データを元にいかにパーソナライズされた顧客体験を提供するか?という議論が盛んです。
セグメント化によりカスタマーサクセスのロータッチ体験を磨く
ロータッチで優れた顧客体験を提供するうえでキーワードとなるのは「セグメント」です。ある一定のカテゴリに顧客企業を区切ることを指します。
1対多のコミュニケーションであるロータッチは、気をつけなければ機械的な一斉配信になってしまい、無視されるコミュニケーションに陥ります。
※いっぱいになった郵便物受けをイメージしてください。
そこでロータッチ施策を行ううえで、自社の顧客の主要なペルソナをいくつか描いたうえで、代表的な顧客のタイプを3タイプ程度に分けて、それぞれのユースケースに合わせたコンテンツをMAを用いて配信することが米国ではよく行われています。
対象となるセグメントに合わせたコミュニケーション設計をすることで、1to1のラブレターに返信させるのです。
カスタマーサクセスプラットフォームを導入し、ロータッチをさらに高度化
また、セグメントに加え更に1to1な顧客体験に感じてもらうよう、取り組みとして行われているのは、カスタマーサクセスプラットフォームを用いた高度な自動配信です。
例えば、GainsightやTotangoといったカスタマーサクセスプラットフォームは、自社のスコアや顧客ステージの情報をMAに連携させる機能があります。これを用いて、利用率が高い顧客にはアップセル情報を配信し、利用率が低い顧客にはオンボーディング案内を配信する~といったコンテンツ配信の最適化が行われています。
ここまで来るとデジタルマーケティングやCRMの領域に近く、実際にこのような施策を担っているのは元マーケターのCS Opsか、CRM(カスタマーリレーションマーケティング)チームが兼務でロータッチを担っていることが多いです。
米国では、ここの人材確保が難しい~という議論まで発展しているのですが、日本でもロータッチ施策やその組織についての話題が今後なされていくことでしょう。
ロータッチにおける効果計測指標(KPI)
ロータッチにおける指標としてよく設定されているのは、真ん中の「メール開封率」や「ヘルプサイトアクセス数」といったロータッチ施策の反応率をKPIとしながら、顧客の稼働としての「ログイン数」「機能利用率」をKGIとするものです。オンボーディングとしてカスタマーサポートにおける「問い合わせチケット数」の減少を目標とする会社もあります。
またチャーンレートにどう向き合うか?ですが、話を聞くと契約更新に関しては更新期日が近づいてる顧客を社内アラートし、人が直接対応することが多いようです。他のロータッチ的な取り組みとしては、契約更新が近づいたタイミングで管理画面内に契約更新電話のポップアップを表示して更新を促すようなことをする会社もあります。
後者となると、マーケター的な知見に加え、契約更新におけるプロダクトマネジメント、グロースハックといった知見も求められます。
営業、マーケティング、プロダクトマネジメントのハイブリッドの経験を有する人材はなかなか市場におらず、領域ごとに強い人材で業務分担して実現することになるでしょう。
ロータッチで用いるカスタマーサクセスツール
ロータッチをするうえではカスタマーサクセスにおける関連ツールの利用は必須になります。
最も一般的なのは「カスタマーサクセスプラットフォーム」と「テックタッチ(メール / ポップアップ / ヘルプサイトなど)」の組み合わせです。
例えば、totangoで製品利用の情報をモニタリングしながら、totango上で利用が滞っていると判断されたセグメントに対してはhubspotで連絡し、zendesk(ヘルプサイト)の入門者情報を伝える。といった利用方法です。
また、pendoのような製品を導入し、SaaSの管理画面の中にポップアップやウォークスルーを埋め込み、オンボーディングや契約更新のタイミングで自動告知する、といったことも行われています。
おわりに
お読みいただきありがとうございました。
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藤島 誓也:Twitterアカウント
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