痛みと鎮痛剤について正しく理解しよう。
痛みのメカニズム
痛みの伝導
痛みは大きく2種類に分けられる。1つは打撲のような機会的な痛み、つまり痛覚神経からの刺激を有髄であるAδ繊維を使って跳躍伝導するシステムである。2つ目は発痛物質を受けとったC繊維が興奮して痛み刺激として認識される。C繊維はAδ繊維に比べて細いうえに無髄であるため、比較的ゆっくりと伝わる。
これらの痛みを受け取る神経は一次ニューロンと呼ばれる。
脊髄後角から入った一次ニューロンから放出されるグルタミン酸は二次ニューロンのAMPA型受容体やNMDA型受容体に結合し、サブスタンスPはNK1受容体に結合して脱分極を誘発する。これによって二次ニューロンへと痛み刺激が伝わり、視床へと向かう。視床にて刺激を受け取った三次ニューロンから大脳皮質体性感覚野へ刺激が伝わると、痛いと認識される。
抑制系
セロトニン神経やノルアドレナリン神経(下降性疼痛抑制系)が、脳幹のあたりから二次ニューロンへ投射しており、これが興奮すると痛みの伝わりを抑制する。そのため、興奮していると痛みを感じないという現象が起きる。また、SSRIを使って疼痛を抑制できるなどの知見もある。
炎症による痛み
炎症部位では細胞の障害によってブラジキニンが遊離して一次ニューロンのブラジキニン受容体に結合する。すると、プロテインキナーゼが活性化してカルシウムチャネルが開くことで脱分極を起こして一次ニューロンが活性化(発痛)する。また、障害された細胞膜から遊離したアラキドン酸からシクロオキシゲナーゼ(COX)によってプロスタグランジン(PG)やトロンボキサンA2(TXA2)炎症物質が出来る。その中でもPGE2は一次ニューロンの受容体に結合してプロテインキナーゼのはたらきを活性化させることで、ブラジキニンの作用を増強させる。
鎮痛剤
オピオイド系鎮痛薬:オピオイド受容体を活性化することで下降疼痛抑制系の神経が興奮し、痛みを感じなくなる。また、一~三次ニューロンにもオピオイド受容体が発現しており、抑制的にはたらく。
抗うつ薬:下降性疼痛抑制系のセロトニン神経の働きを活性化することで痛みを抑える。
NSAIDs: COX阻害によって炎症を抑制することで鎮痛作用を発揮する。アスピリンだけはCOXに対して不可逆的な阻害作用があるため長期間作用が持続する。
アセトアミノフェン:鎮痛作用の機構はあまりわかっていない。痛みの伝導路の閾値を下げる効果があり、痛みの伝わりを抑えるとされている。また、下降性疼痛抑制系のはたらきを増強するとの報告もある。
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