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シリーズ糖と血糖値と糖尿病② インスリンが分泌されるまで。


血液に糖が流れ込んでキタァ!ってのを感知するセンサーの役割を持っているのは、膵臓のランゲルハンス島B細胞です。ここでは、インスリン分泌のシステムについて勉強しましょう。

ココがポイント!
① 糖はグルコース輸送体(GLUT2)を通って、膵臓ランゲルハンス島B細胞に入り、インスリンを分泌させるよ。
② プロプレインスリン→プレインスリン→インスリン&Cペプチドの過程を覚えよう!

 糖は細胞に入ると分解されてエネルギーに変わる体にとって超大切な栄養素ですが、血液の中にあってもあまり意味がありません。そこで、役に立つのがランゲルハンス島B細胞です。糖が入ってきたことを感知したら、余すことなく体に取り込むために筋肉や脂肪細胞に『糖を取りこめー!』って、インスリンを使って知らせるのです。

センサー機能を解説!
 血液に入った糖は全身へと運ばれます。その中で膵臓に達した糖は、ランゲルハンス島B細胞の表面にあるGLUT2という糖の輸送体を通って、細胞の中に入ります。このGLUT2という輸送体は糖だけを通すトンネルで、糖の濃度が高い血液から低いB細胞の中へと濃度勾配に応じて糖を流します。これを糖の受動輸送と言ったりもします。 
 B細胞に入った糖は解糖やクエン酸回路、電子伝達系によってATPを作る原料になります。このATPはカリウムイオンチャネルを開き、カリウムが細胞外へと出て膜電位が変化します。ココで生じた電位差によって、電位依存型カルシウムイオンチャネルが開きます。すると、細胞内へカルシウムイオンが流れ込んできます。カルシウムイオンはカルシウム依存性の酵素を活性化して、インスリンの入っている小胞を細胞膜に融合し、中のインスリンを細胞外へ放出します。ちなみに、小胞に閉じ込めてあった物を,細胞の外へ出すシステムをエキソサイトーシスと呼びます。
 つまり,血糖値が高かくなった分だけランゲルハンス島B細胞に糖が流れこみ、沢山のエネルギーが作られます。その結果,糖の量に応じて沢山のインスリンが分泌されるというわけなんです。すごく良くできたシステムですよね。

インスリンは成熟してから放出されるんです。
 インスリン遺伝子からインスリンが直接作られるわけではありません。まずはプレプロインスリンというタンパクが出来ます。これには『僕達、これからインスリンになる修行に出まーす!』というシグナル配列があって、小胞体内でクルっと立体構造をとります。するとシグナル配列だけ切取られてプロインスリンに出世します。
 その後,ゴルジ体で塩基性アミノ酸2個並んでる場所がカットされますとインスリンが出来ます。このとき,インスリンから切り離された部分がCみたいな形なのでC-ペプチドって呼ばれます。C-ペプチドにもなんか働きがあるっていう研究をしている人もいますが,今のところよくわかっていません。

インスリンの成熟過程と測定
 糖尿病の患者さんはインスリンが超大切です!
 貯金が山のようにある人にとって,今月の副収入がいくら入ってくるかって,あまり興味ないかもしれませんが,貯金がない人は『今月いくらはいってくるんだろう・・・』ってすごく気になりません?糖尿病の人にとって,インスリンはお金より大事なんです。だから,インスリンをどのくらい作れるのかって,めちゃくちゃ知りたいんです!
 血液中の血糖値は採血してグルコースを測定すれば良いのですが、実は膵臓がインスリンを分泌出来ているかを測定するのは至難の業なのです。なにせ、インスリンは3分ほどで血液から半分なくなります。10分もすると1/8くらいの量になってしまうので、インスリンが十分作れているのか、足りているのかをちょちょいとは判断できないのです。

どうしたら良いのでしょう?
 そこで役に立つのがインスリンができる時に切り離されたCペプチドです。Cペプチドが半分になるまでには10分ほどあります。しかも、ほぼそのまま尿に排泄されるので、蓄尿といって24-72時間尿を貯めて測定する事で、尿を溜めていた期間(1-3日)に分泌されたインスリンの量を推測できます。
 こうして、膵臓がインスリンを分泌する能力(インスリン分泌能)を測定します。インスリン分泌能は、糖尿病の病態を把握する上でとっても大切な検査なのです!

 次回はインスリンによって血糖値が下がるメカニズムについて説明しますね!

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