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オープンプラットホーム通信 第190号(2022.12.27発行分)


オープンプラットホーム通信とは、福岡を拠点に活動していうNPO法人ウェルビーイングが毎月発行しているメールマガジンです。noteではバックナンバーを公開していきます。
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メールマガジンのコンセプト


オープンプラットホームとは、人、団体、組織が自由に集まり、交流し、知恵や勇気、パワーを充電し、また、旅立っていくことができる「みんなが集える場」のことです。

初めての方へ
はじめまして。
NPO法人ウェルビーイングは、人々のwell-beingの実現するために自ら活動することを目指し、全国各地で活動している人たちを結び、集まり、分かち合い、元気になるオープンプラットホームの実現を目指しています。
well-beingとは、「良好な状態、安寧、幸福」という意味です。このメルマガでは、ウェルビーイングに集う理事や会員のそれぞれのウェルビーイングな日々やアンウェルビーイングな日々を綴ったエッセーをお届けします。

喫茶去 第89回 よいということ(8)


聖賢に自分もなれるのか、なれないのか。なれるし、なれると考えて行動しなければ、なんのための学問かと問うたのが石田梅岩(ばいがん[1685-1744])でした。いや、なれない。なれないからこそ、古代中国の聖賢たちの思想と生き方を学んで、それにならうのだと主張したのが荻生徂徠(そらい[1666-1728 1133-1200])でした。このふたりの思想家たちはほぼ同時代ではあるけれど、じっさいの交流も接点もありませんし、おたがいのことをどれほど知っていたかも分かりません。いっぽうが京都、たほうが江戸にいたことが大きいのかもしれません。もっともふたりの出自と活動圏と方向性のちがい(おおざっぱに云えば、農家の次男vs将軍侍医の次男、庶民の心学vs武家の古学)を考えれば、かならずしも地理的な理由だけではないのでしょう。

聖賢問題にかぎると、徂徠の立場ははっきりしていて、中国の古代以降は東西いずれの国においても聖人は出ていないと云うのです(「東海は聖人を出ださず、西海も聖人を出ださず」(学則))。近世日本の儒学の源泉となった朱熹(しゅき[1133-1200])はだれしもがやり方次第で聖人になれる立場をとって、その論証に苦心しているけれど、学習の力でそうなれるはずはないから、それは無駄骨だと断言します(「いにしへは学んで聖人となるの説なきなり」(辨道))。ではその聖人たちの仕事とは何なのか。そして聖人になれないわたしたちの生きるべき道はどのようなものなのでしょうか。

聖人たちは天下が平穏になるための道づくりをした人たちであり、伝えられた「詩書礼楽」の道がそれである(「先王の道は天下を安んずるの道なり」「先王の道は詩書礼楽なり」(辨道))。具体的には、詩経・書経・礼記などに伝えられた詩文・書道・礼儀・音楽の世界。これを学ぶこと。すなわち聖人に「なる」のではなく、かれらの遺産に「ならう」ことがわたしたちの生き方なのだと云うのです。これだけだとなにかのんきな文人のたわごとに響くかもしれませんが、徂徠の構想は儒学の語彙で云いかえると、修身・斉家・治国・平天下という一生の課題(身を修め、家をととのえ、国を治め、天下を平らかにする)をより実践的な場におきなおすことにありました。なぜなら「聖人になる」ことは「修身」に深くかかわりますが、そこにこだわりぬくと一身の修養がそのまま家・国・天下の平穏にむすびつくかのような錯覚にとらわれるから。徳を修めることと、国を治めることは同じ次元にあるのではなく、人格者でありさえすれば天下が平和になるわけではない、という現実判断ですね。いわば修身を斉家・治国・平天下の仕事からきりはなして、家政・法・政治・経済という領域を個人の徳とは別の次元においたことになります。そしてその斉家・治国・平天下の道はすでに聖人たちが制度化して残してきた、と云うのが徂徠の主張です。

うん。うまく要約できているのか不安です。
今回は尻切れのまま これにて失礼いたします。ぶつぶつ。


☆☆筆者のプロフィール☆☆
関 一敏
勤務先:NPO法人ウェルビーイング・ラボ

感じ考え組み立てる 第64回 無心に事象に向かい合って感じ考える


突然の入院と右側の腎臓摘出手術を受ける中で、いろいろなことを考えました。内容は普段思ってもみなかったことです。しかし振り返ると、これまでこの連載で取り上げてきた「手で触れて考える」は今回の入院でも大きな意味を持っていました。

手術後に一番苦しんだのは、数日続いた痛みを伴う悪夢でした。これから抜け出すためにも、触れて考えることは大きな意味を持っていました。

今回は「先入観に囚われず、手で触れるようにして感じ、考える」ことの大切さについて書きます。

自分でその現場に行き、虚心坦懐に感じ考えることは、事象を理解する上でとても大きな意味を持っていると思います。私の場合、幸いにもいくつかの場面で虚心坦懐に感じ考えることができ、その経験が今でも私を支えてくれています。

例えば「無くなったら困る大切なものは何ですか」という質問系列Wifyを作ったときのこと、この質問を持って初めて中国に行き、この質問を北京の小学校でした際の様子は、今でもはっきりと記憶に残っています。あの時の子供たちの率直な反応は、今でも中国という言葉を聞いたとき、私が何か感じ考えるときの出発点になっています。「先入観がない」ということは、「無知」にもつながり、「歴史的・社会的な認識も未熟なまま、現実に出会い、その際の一時的な印象で一喜一憂する」と批判されるかもしれません。しかし自分で無心に捉えた、その時間と空間の中での出来事の記憶は、そこから様々なことを考え始める出発点になります。だから私の場合はWifyを続けることができたようにも思います。

しかし最近はネットやSNSの普及や、それに伴う莫大な量の情報のネット上の蓄積によって、先入観を持たないまま事象に向き合うことが、以前よりずっと難しくなったように感じます。例えば「目の前の風景を見て感じ考える」、「物を見る」という日常的な行為についても、それが難しくなってしまいました。私自身も、いつでもスマホを持ち歩いており、油山の紅葉でも老いたカマキリでも、印象に残ったものは直ぐに写真に撮ってしまいます。昔のカメラよりはカメラの性能が上がっており、きれいな写真が撮れます。写真を撮り、それを保存したり、公開したりすれば、それで終わりです。しかし、このようにするのではなく、自分の目で捉えた事象を、無心に追い、自分の手で記録する事はできないでしょうか。電子的な助けを借りずに、自分の手で記録することの大切さは、しばらく忘れかけていました。しかし今回の入院を契機に、自分の手で関わることの大切さを改めて考えるようになり、久しぶりに純粋輪郭画法を使ってみました。これはベティ・エドワーズが開発した方法で、見たままを紙の上に線で描く方法です。エドワーズはアナログ画という方法も開発しており、こちらは以前福岡大学で医学部の新入生の授業を担当した際に、「感情を描く方法」として用いていました。なぜこうした方法を、今回の入院を契機に大切だと思い始めたのか、別な機会に書くつもりです。

☆☆筆者のプロフィール☆☆
守山正樹
勤務先:NPO法人ウェルビーイング・ラボ

ドクター・マコ At Home! (アット・ホーム) 第139回 コロナとパルスオキシメーター


一見、大きめの洗濯バサミのような形態であり、人差し指の先端を挟むとすぐに、血中酸素飽和度が表示される器械=パルスオキシメーター。ですが、原理を考えたのは日本の技術者だったそうです。

今回の新型コロナの蔓延により、特にベッド数が不足という事態に陥った際にも、自身で簡単に測定が出来、その都度、採血の必要がないものです。

その発明者は、青柳卓雄さん。新潟生まれで新潟大学工学部卒、島津製作所を経て、1971年に日本光電工業に入社。上司に「ユニークなものを開発せよ」と言われました。

麻酔科医との会話がきっかけで、動脈血の酸素濃度を簡単に測れる装置の開発に打ち込みました。当時は採血しなければ酸素レベルが読めず、患者さんの顔色で判断していたのです。

青柳さんは拍動を利用し、動脈血だけの信号を取り出すことに成功、連続測定を可能にしました。大発見だったのですが、すぐには脚光を浴びませんでした。米国で麻酔中の酸欠事故が問題化した80年代にやっと有用性が理解され、企業が相次ぎ製品化しました。各国に広まり、多くの命を救いました。

晩年まで改良に尽くし、2020年に84歳で死去。米紙は長文の訃報を載せました。日本光電の小林直樹特別研究員は「論文を書くより、役に立つものを作りたいという根っからの技術屋でした」と言う。その死を悼んだ米イエール大学の名誉教授は、青柳氏を2013年のノーベル医学生理学賞の候補に推薦した、との秘話を明かしました。

全国で10万人超が自宅療養という名の「自助」を強いられる時代、パルスオキシメーターは我々の命綱になっています。当院にも備えているし、各スタッフも自前の物を持っています。最近、11月下旬に川上は、福岡日赤に「心房細動」の治療のために、短期入院をしたのですが、ナースが各部屋を巡回してモニターする場合も、血圧・体温・パルスオキシメーターは、ルーティンで、必須のようでした。必ず測定するのです。幸い、これで引っかかることはありませんでしたが。

コロナ禍でなくても、何らかの突発的な症状に対するモニターとしては十分優秀な装置です。以前、この欄でご紹介した「PCR検査」がノーベル賞なら、当然パルスオキシメーターも受賞すべきだと思うとは「身びいき」でしょうか? それにしても、日本人技術者って、色々な物を発明しているのに、こういう不測の事態が発現するまでに(発現してからも)、脚光を浴びることが少ないのですね。
 

☆☆筆者のプロフィール☆☆
川上 誠
勤務先:川上歯科医院

編集者後記


今年も最後の発行になりました。
1年間ご購読いただきありがとうございました。
来年も楽しいメールマガジンを発行していきたいと思います。
来年もよろしくお願いします。

(いわい こずえ)
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ご意見、ご要望などお待ちしています。
編集:NPO法人ウェルビーイングいわい こずえ jimukyoku@well-being.or.jp
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