知識ゼロから見に行く相馬野馬追⑤
いよいよメインの甲冑競馬と神旗争奪戦である。
今回は有料観覧席ではなく、馬場内入場証を購入して臨んだ。
入場証には2種類ある。馬場内入場証(6000円)と特別撮影エリア入場証(10000円)である。
どう違うのか。
■2種類の入場証と撮影エリア■
特別撮影エリアは第一コーナー付近に設けられている。
図の位置からだと、ゴール前の白熱した争いをとらえることができる。
一方、馬場内入場証は第二コーナー撮影エリアの他、馬場内に立ち入ることができる。
撮影場所の自由度が高いのだ。
ならば第一コーナー馬場側からゴール前を狙えばよいとなるが、撮影者が群がり、殺伐とする。
こちらは手持ちのコンパクトデジタルカメラ(コンデジ)で、競走馬の撮影にはあまり向かない。
そこで第一コーナーから第二コーナーの中間地点に陣取り、先頭の馬を狙うことにした。
何度かトライして雰囲気写真が撮れればもうけもの、といった案配である。
■12:00 甲冑競馬■
レースは合計8回。それぞれに騎馬武者8騎が臨む。
発馬長の旗が振り下ろされた。
疾走する馬は、こちらが想像していたよりもはるかに速い。
夢中でシャッターを切り続けたものの、満足のいくような撮影には至らず。
何枚か撮ってもピントが甘い。
ようやく慣れてきた。
途中、目の前で落馬があった。
振り落とされたというよりはバランスを崩して落ちた様子で、武者は土手まで転がっていった。
主を失った馬はそのまま走り続け、トラックを周回している。
こうなると、人の手ではなかなか停められないようだった。
撮影していて困ったのは馬が走り去った後に立ちのぼる土煙である。
こちらは柵の手前で立って撮影しているのだが、土煙が容赦なく降り注いでくる。目が痛い。
【結論】馬場内での撮影ではゴーグルを着けましょう
■13:30 神旗争奪戦■
神旗争奪戦ともなると、さらにカオスである。コンデジのズーム機能で追ってみた。
花火とともに打ち上げられた神旗の落下地点に馬で駆け寄り、鞭でからめ取った者が勝者。
では、見ていくことにしよう。
上空には風もある。落下地点に向けての風の読みが勝利の鍵となることは言うまでもない。
神旗争奪戦は神旗31本が打ち上げられるというが、これ以上の撮影は断念して引き上げることに。
■軍事教練としての野馬追■
相馬野馬追は平将門が下総国小金ヶ原牧(千葉県松戸市~流山市付近)にて野馬を捕獲し、神馬として奉納したことに由来するという。
神馬を奉納するというのなら、それは神事である。
だが、神事の名目で朝廷を欺き、武者を集めて軍事教練を施していたという説もある。
房総には江戸期に3つの馬牧(小金牧、佐倉牧、嶺岡牧)が設けられ、幕府に馬を献上した。
牧の遺構は部分的にではあるが、現在も残されている。
基本的に、放牧されていた野馬は勢子(せこ)に追われ、土手に追い込まれて捕獲される。
3日目に行われる野馬懸とほぼ同じ仕組みであり、軍事教練と呼ぶほどの人数を必要としない。
では、野馬追がいかにして軍事教練になり得るのか。
そのことを考えるうえで、甲冑競馬と神旗争奪戦は重要な手がかりとなる。
ポイントは、両者ともに真剣勝負であるということだ。
甲冑競馬は甲冑を身につけ旗を背負った状態で、馬をいかに速く走らせるか。
神旗争奪戦は風を読んで落下地点にすばやく移動しながら、武者が神旗を鞭でからめ取る。
馬をすばやく走らせるという行為は同じでも、競技としてのスキルはまるで異なる。
これを弓を持っての的射にすると、軍事教練であるともろにばれてしまう。
あくまでミニゲームの体裁で、真剣勝負を通じてスキルを磨くことを目的としたならばどうか。
むろん、落馬して後続や周囲の馬に踏みつけられようものなら、ただの怪我ではすまない。
これは命がけのミニゲームでもあるのだ。
当時の野馬追で競馬や神旗争奪戦が行われていたかどうかはわからない。
本部席を見上げながら、想像をめぐらせてみた。
もしこの場に将門公がおられたならば、眼下に広がる光景にきっと大喜びされたに違いないと。
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