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『ツバキ文具店』を私がアピールしたいと思います。
小川糸と鳩子の魅力
大学の課題ですが本当に好きな作品なので紹介したいと思います
大学の授業でビブリオバトルをする課題があったのですが、書き出してみたらかなり長くなったので削らずに全文を投稿してみようと思います。
今回紹介する本は小川糸の『ツバキ文具店』です。私はこの本を読んで丁寧に生きる人の魅力に気付きました。主人公の代書屋としての姿勢はもちろんですが小川糸の書き方も丁寧で、素朴な風景を決して誇張はせずに伝えてくれます。大きな起承転結がある話ではありませんが登場人物の心理描写を小川糸も主人公の鳩子も温かく伝えてくれます。
『ツバキ文具店』は幻冬舎文庫から2016年に出版された小川糸のフィクション小説です。著者の小川糸は1973年山形県生まれで、2008年の『食堂かたつむり』以来『ライオンのおやつ』や『つるかめ助産院』などの小説を出版しています。ちなみに今あげた3つの作品はいずれもテレビドラマ化しています。小川糸の作品は日常に寄り添ったものが多く、些細な描写も丁寧に書くので、読んでいるうちに自分の心が落ち着くような、ホットミルクで一息つくような気持ちになることができます。
続いてあらすじを紹介します。
雨宮鳩子は鎌倉で文具店を営みながら代書屋もしています。幼い頃から先代である祖母に厳しく育てられた鳩子はそれに反発し一時は家を離れて生活していました。ですが祖母が亡くなったことを機に実家に戻り後を継ぎました。ツバキ文具店には様々な事情を抱えたお客様が訪れ、鳩子に手紙の代筆を依頼します。『ツバキ文具店』は大きく4章に分けられており、それぞれ春夏秋冬が題についています。代筆の仕事を通して鳩子が先代と向き合いなおすなど人間味のある温かい話が静かに続きます。舞台である鎌倉を鳩子や友人が練り歩くシーンもあります。実在するお店や神社仏閣も出てくるのが見どころの一つでもあり、鎌倉が舞台になった理由も読んでいくうちに分かるようになります。
私がこの本で引用したい部分は115頁秋の章に出てくる「文字は、体で書くんだよ。」というセリフです。代筆の仕事をするうちに壁にぶち当たった鳩子が先代と向き合う勇気をだすシーンの一つです。誰しもが人と向き合うことを恐れることがあるかと思いますが、『ツバキ文具店』では作中通して鳩子がお客様やご近所など人と向き合い続けます。仕事につまずいた鳩子を助けるのは先代の台詞でした。このセリフは仕事での壁を乗り越えるきっかけにもなり、鳩子が先代へ寄り添い向き合う勇気をだす『ツバキ文具店』の象徴と言えるものの一つだと思います。
私はこの本を読んで鳩子が人と丁寧に向き合う様子を著者である小川糸が丁寧に書くことが魅力だと思いました。鳩子が代書屋として邁進する姿やそれを周りの人々が温かく見守る様子は読んでいるだけで心温まるものがあります。刺激が欲しいときではなく穏やかな気持ちになりたいとき、『ツバキ文具店』は静かに寄り添ってくれる一冊だと思います。
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初めて読んだのは高校二年生のときでした。私はシリーズ物が得意なので、単発かあ、と思いながら買ったのですが、今では絶対に捨てられない大切な一冊になりました。
ここまでしっかり語るのは初めてですが、やっぱりいいですね、本もSNSも、ツバキも。
相変わらず長くなりましたが、ハートはしなくともぜひ『ツバキ文具店』を読んでいただけたらと思います。それでは!