愛を贈り続けてくれる人をおもって…。
こんにちは。
8月になってはじめての記事になります。
みなさん、いかがお過ごしでしたか?
夏休み中のわたしは、ほとんどの時間を書棚と本の整理をして過ごしておりました。
息子たちに読み聞かせた童話を箱から出して並べてみると、またあの頃の時間が戻ってきたみたいに…部屋の中は明るくあたたかい雰囲気に。
好きなものに囲まれていることは、とっても落ち着くことなのだと改めて感じております。
さて。
今年の夏休みはコロナの蔓延で旅行をあきらめたという方も少なくないと思い…せめて、楽しい旅の絵本を…ということで。
本日は日本を代表する絵本作家である林明子さんの人気作『こんとあき』(福音館書店)をご紹介します。
『こんとあき』は旅の絵本であると同時に愛の絵本でもあるんですよー💛。
生まれてくる孫娘のために祖母が手作りしたキツネの縫いぐるみが〈こん〉。←男の子です
孫娘である少女の名は〈あき〉。
あきはこんを、時にはお兄ちゃんのように慕いながら大きくなった。
こんはあきを赤ちゃんの頃からずっと見守り続けてる。
いわば、こんは遠くに住む祖母の身代わりとして送り込まれているんです。あきを守るために、ね。
そんなことはどこにも書かれていないんだけど、最後まで読むとそのワケが、そうか…とわかって、じんわりと心に広がる。
あきが大きくなってくると、当然、縫いぐるみであるこんは古びてくるわけで…修理が必要なほど、あちこちがほころびて…。
そこで、〈さきゅうまち〉に住むおばあちゃんに修理してもらうために、ふたりで出かけます。
特急電車とおぼしき電車に乗って、停車駅でお弁当を買いにいったこんが駆け込み乗車をしてしっぽをドアに挟まれる、到着した町にある砂丘でこんが野良犬にくわえていかれ、砂の中に埋められる…などの大ハプニングを乗り越え、ふたりは無事におばあちゃんの家へ。
ここには、あきの両親も登場しませんし、そもそも縫いぐるみのこんが人間のようにふるまっているメルヘンの世界なのですが…。
でも、おばちゃんが登場すると、ガラッと物語の空気感が変わります。
物語の本質というものが、霧が晴れるように見えてきて…地に足がついた感覚になる。
これは、おばちゃんが動かしていた物語なんだと、わかるんです。
こんは、おばあちゃんの愛情の化身。あきを全身全霊で見守る使命を与えられたおばあちゃんの弟子(なんてこともどこにも書いてないですけど…)。
あきが成長したことを、おばあちゃんはたしかめるために旅をさせた。
こんとあきが、おばあちゃんに抱きしめられている絵で、大きなカタルシスが得られて…いつもわたしはここで泣きそうになる。
傍にいられなくても、大きな愛で見守ってくれているのが祖父母という存在で、そのために募り続ける会いたさ、関わりたさが、こんという縫いぐるみとなって孫娘のもとへ行き、寄り添い続けた。
あきのおばあちゃんに感情移入できる年齢にさしかかっているわたくし。
今回はそのような読み取り方が出来るように…成長した(⁈)ということかもしれません(笑)。
林さんの絵の素晴らしさは、主人公はもちろん、画面の中にいるすべての人々を生き生きと描き分けていること。
脇役の個性が光っていて、子どもたちが受け取れる感情が一場面でいくつもあるってこと。
こんとあきが乗っている列車のお客さんたち、ひとりひとりも、どうかゆっくり見てください。
会いたい人に、会えないこの夏。
遠くから愛を贈り続けてくれる人の顔を思い出しながら、『こんとあき』を是非お手元で!