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大東紀行 2023/1/25

つぶれた会社、というかクビになった会社のオフィスには在宅勤務者の自分にも一応デスクがあった。
目の前の壁に貼っていた一枚のポスター、サウス ボロジノ アイランド。

島、といってもそこそこ沿岸にある島と、海に囲まれた離島とは違う。南大東は御蔵のような後者だ。
船で上陸するときはカゴをクレーンで釣って貨物のように、というのだから
これは、不確実ではあれ、黒潮洗う桟橋にタラップのつけられる御蔵よりシビアなんじゃないのか。
毎度、転職のたびどこかの島に旅するのが通例。「島は予定通りいってかえってこられない」が身に沁みているからだ。
堅気の勤め人で「帰宅できないから有休、あと1週間プラス」とはいかないだろう。
ここの会社へ入る前には老母連れで奄美大島、小笠原父島・母島といってきた。
今回は次の会社に入る前に北・南大東である。

貨客船だいとう 690t

北大東行きの船便「だいとう」は出航予定が1月26日発となっていた。この便は危険物の積込の関係らしく、市街地に近い泊港ではなく那覇新港から出航する。
その関係でチェックインが当日12時まで。
出航時刻自体は17時なのだが、この「当日12時まで」をクリアするには、前泊を要する成田発の早朝便か、前日に那覇までたどり着いておいて前泊かしかない。
どのみち前泊なら成田より那覇のほうが楽しかろう。
泊ターミナルそばの沖縄船員会館を予約する。近辺にはほかにも安ホテルあるのだが、風待ちで泊まる人が多そうな宿を選んだ。

大寒波。勝負はその前日から実は始まっていた。
25日の朝の北陸新幹線で上京予定の母。それを見越して羽田15時半のスカイマークを予約していたのだが新幹線が万一定時運行できないと怖い、と母がいう。24日京成蒲田(東京駅から京浜東北線で直行できる「蒲田」ではなく、「京浜蒲田」でないと詰む。空港近辺のホテルも送迎便中止してしまったりするような現況では、と説得)のアパのシングルを予約してやって、そちらは片付く。
こちらはプータローの身とはいえ、来月からの入社手続とか、任継社保の脱退手続とか、ハロワの手続とか機巧猫《からくりねこ》のテキスト販売の滞りなきよう用意する資材のあれやこれやでぎりぎりまでてんてこまいである。

それらをようやくなんとか片づけた25日午前、高輪の自宅からちいばすで品川へ出て京急。空港快特の蒲田スルーって復活してたのか!ってことで蒲田で母を拾いそこねる。終点から「ひとまず終点まででといで。スカイマーク1タミだから進行方向後ろなー」と母に電話、落ち合う。
空ビルのショップはかつての繁栄を思えば見る影もない。スタバで席を押さえて母に買いにいかせたらホット2つ。
わたしは猫舌だからアイスしか飲まんというのはボケの彼方へいってしまっている。
時間があるので空港神社(ポーター時代は元旦も勤務だからここへ「初詣」にきていた)を見せにつれていく。
隣の歯医者が個人のクリニック(センセイが航空マニアと思われ)から神奈川歯科大になったのは時代の趨勢か。

ひさしぶりの1タミ

スカイマークは中どころのLCCだから、わたしにはなんの不足もない。
ドリンクサービスがホット一択で、猫舌きょう2度目のオアズケであったことを除けば。
老母は3時間のフライト、念のため1度はお手洗いにいく。通路側で持込のスーパードライでここちよいうたたねをしていた彼女には、目の前をばあさんの尻がでたり入ったりでかわいそうなことをした。
フライト最後の1時間半は揺れが激しく、まあ空模様と海況は別物だしなと明日の自分を落ち着かせる。

吸い込まれそうな富士
雲海の夕日

那覇空港のタクシー乗場、プリウス4:クラコン6といった割合。JAPAN TAXIがほぼいないのが都内からの旅行者の目を惹く。
われわれの目の前にきたのは寝ぼけた青磁色のクラコンだった。「泊の沖縄船員会館まで」。
70は過ぎているだろうか、ナビもないクルマに乗車しているドライバーは
「わたし1ヵ月前にこっちきた新人なんですよ」と。
おのれのスマホのGoogleマップで慎重に確認しながらルートを指示する。
「雪、って寒いんでしょうねえええ」「富山っていまでもクスリ売りいるんですか」。
意外にそんな会話がなりたったので「まあそれでも市内主要部は融雪機ありますしね」。
「売薬は健在ですが、もちろん振り売りではなくバンなんかに積んでフツーの営業マンのカッコです」なとと話す。
大寒波の影響は沖縄にもきているが、それでも日中の車内、軽くクーラーをかけるとのこと。

沖縄海員会館EVの貼紙

沖縄船員会館、立て直す前の竹芝の島嶼会館かくや、という雰囲気。

1階の大衆酒場での食事は老母が忌避したので、近所の適当な中国人居酒屋で夕飯とする。
存外にもゴーヤーときくらげの炒め物がウマい。

宿にもどってきてから今度リリースするテキストの編集作業を進めたが、どうももってきたACアダプタからの給電がうまくいってないらしい。1時間ほど作業を進めると残が70%になってしまった。
JMCテキストの紙冊子送付オプションの送付は遅らせられないから、なにが売れているか毎日5アカウントの監視をしつづけなければならない。そのために残量をキープせねばと思うと最後の第9章は帰京してからしあげることに肚をくくった。

《続》

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