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西成活裕先生著『逆説の法則』読書録

東大教授の西成先生が説く逆説の法則。
「急がば回れ」は科学的にも正解。

遠回りに思えることや、
無駄と思える余白や余裕が
実は持続的成長を実現するための鍵となる。

・無駄を排除した急成長組織が突如崩壊する。
・生産性を極めた工場が事故が多い。
・働かない2割のアリを排除してはいけない。

それはなぜか?

渋滞学パイオニア西成活裕先生の紹介

昨年『HORIE ONE』にも出演された西成活裕先生は、日本の数理物理学者。東京大学先端科学技術研究センターの教授です。専門は非線形動力学・渋滞学で、博士(工学)の学位を持っています。渋滞学や無駄学の研究で有名です。著書『渋滞学』は受賞歴もあり、歩きスマホに関する研究ではイグノーベル賞を受賞。

逆説の法則で語られる、空けるが勝ち

本書の中で印象的だった部分を紹介。

『逆説の法則』の中で、
一見直感に反するように見えて、実は合理的な「空けるが勝ち」という原則を提唱しています。

この原則は、私たちの日常生活やビジネスの様々な側面に応用可能であり、
効率と持続可能性のバランスを見出すための鍵となります。

逆説の法則を証明する様々な事例

・交通渋滞の事例

交通渋滞は、車間距離を詰め過ぎることによって発生します。
車間を空けることで、一台が急ブレーキをかけたとしても、後続車がスムーズに対応できる余裕が生まれ、渋滞の連鎖を防ぐことができます。

西成先生は渋滞学のパイオニアとして、交通渋滞に限らず、コミニュケーションの渋滞や組織の渋滞など、日常生活におけるあらゆる渋滞の原因と解消法を科学的に解明することに焦点を当てています。
因みに車間距離を40m以上取ることで渋滞が発生しにくいことを数学的に証明しています。

実際の道路での実証実験では、研究チームの車が約40mの車間距離を保ちながら走行することで、渋滞が軽減されたことが確認されました。
この方法は「渋滞吸収運転」と呼ばれ、実験の結果、後続車の速度が回復したことが報告されています。実はこの交通渋滞の解消ノウハウ、あらゆる場面に応用することができます。

・バケツリレー

バケツを満タンにするよりも、約7割程度の水量で運ぶ方が、こぼれるリスクを減らし、結果として速くリレーを完了できることが示されています。

・生産工場の事例

生産工場では、稼働率を限りなく100%に近づけることが、一見最も効率的に思えます。
実際には隙間がないために小さなトラブルが大きな事故につながりやすく、中長期的には生産効率が低下する原因となります。

急がば回れ」の諺は、この逆説の法則を象徴するものであり、科学的にも正しいアプローチであることが証明されています。

目の前の速さだけを追求するのではなく、
持続可能性や中長期的な成長を考慮する場合、意図的に余白や余裕を作ることが重要です。
(持続可能性が大事!と叫ぶ人に手ぬるいと嫌悪感を抱くことがあった自分が恥ずかしい。)

・組織の事例:持続可能な組織と、突如崩壊する組織

特に、急成長中の組織では、従業員がフル稼働することで短期的な成果を上げることができます。

しかし、そのような状態が続くと、従業員の一人が倒れたり退職したりした際に、他のメンバーも余白がないために、組織全体がたちまち崩壊するリスクがあります。
これは、短期的な視点に立った経営がもたらす典型的な弊害です。
一人あたりの生産性を拡大しすぎることでの弊害があるということ。

一見無駄に見える余白時間こそ、健全な経営、組織運営、スケジューリングなどには欠かせません。まさに、損して得をとれ。

因みにアリ社会でも面白い観察結果があります。アリ社会の内、短期では役立たずの2割の働かないアリが、実は新たな餌場探しに貢献しており、長期的にはアリ社会の存続に貢献しているそうです。

無駄の定義とは?それは目的と立場と期間で決まる

無駄を議論する際には、目的と立場と期間の捉え方が共有化されていないと、無駄かどうかの判断は難しい。
長い目で見ればどんな無駄な知識や経験も役に立つことはある。
例えば期間で言えば、1年でプラスにしたいのか?100年後にプラスに転じればいいのか?

無駄を巡る議論には、必ず「対立」「反論」がつきまとうのが現実であり、適切な目的や期間の設定が重要です。

西成先生は、今の日本企業は短期目線が過ぎるので、持続可能性と行った観点で課題が大きいことを懸念しています。
VUCAの複雑で変化の早い時代になればなるほど、先が見えなくなる。であれば、予測しやすい短期の未来に集中しようとなってしまいがちで悪循環。

研究の世界も予算がおりるのは短期目線のものが多く、長期的視点が欠落していることに継承をならしています。

まとめ

西成活裕先生の『逆説の法則』は、私たちが直面する日常の多くの問題に対して、新たな視点を提供してくれます。
交通渋滞の解消法をアナロジーで、あらゆる領域に応用可能だというのも非常に勉強になりました。
この法則を理解し、適切に活用することで、より効率的で持続可能な社会を築けるようにがんばりたいです。

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