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心の中に、アーティストを飼う。自分の感覚を尊重する生き方から学んだこと。

こんにちは、発明家の高橋鴻介です。

今年の5月からワーキングホリデーを活用し、オランダに住んでいるのですが、日本でクライアントワークを中心としたデザイナーとして働いていた頃と比べて、働き方も生き方も大きく変わりました。

一番大きな変化は、アーティストとして活動するようになったことです。
今は、自主的に作品を制作したり、アーティスト・イン・レジデンスに参加したりして、自分の思いついたアイデアを表現することに時間を使っています。

自分の感覚や直感に向き合って、モチーフも自分で選び、表現も自分で決める。そうやって活動していく中で気づいたのは「アーティストとしての自分」をもつことが、心にとてもいい影響を与えてくれるということです。
今までよりも自分の感覚や直感を尊重できるようになったことで、自己肯定感が高まり、心のバランスが取れるようになってきた気がしています。

そこで今回は、「心の中に、アーティストを飼う」というテーマでノートを書いてみようと思います。はじめにことわっておくと、これは「みんなアーティストになったほうがいいよ!」というアーティスト指南ではありません。「たとえアーティストにならなくても、アーティストを心に飼うと生きるのが楽になるよ」という小さな提案です。

💡こんな人に向けたノートです
・クライアントワークに疲れた人
・自分の感覚に自信が持てない人
・デザイナーとしてのキャリアに悩んでいる人

日本で「デザイナー」として生きていた頃

私が日本で働いていた頃は、主に広告代理店でクライアントワークに携わっていました。クライアントの要望に応じてアイデアを考え、クライアントが求めるデザインを提供することが中心の仕事でした。そうした経験を通じて「人が必要としているもの」を考え抜き、客観的な視点でアイデアを考える力を養えたのは確かです。

ただ、同時に自分の「感覚」や「直感」を置いてきぼりにしていた気がしています。クライアントワークで重視されるのは、自分の感覚よりも「それが社会においてどのような課題解決になっているか?」「それがクライアントにとってどんな意味があるか?」といった社会性や客観性のある視点です。
自分がどんなに「これは面白い」「これは好きだ」と思っているアイデアでも、それがとても主観的な視点で、上手にロジカルに説明できないからと、引っ込めてしまうことが多くありました。

社会やクライアントの要請を最優先し、自分の感覚が求められないことが当たり前になり、仕事に追われる中で、だんだんと、自分の感覚について考える時間も減っていきました。

そうすると、何が起こったか。
段々と、自分の感覚や直感が信じられなくなっていったのです。
どんなにアイデアを考えても、なんだか自信が持てない、肯定できない。
そんな日々の中で、その当時は精神的な不安定な状態が続いていました。
自分にとっても、思い出すととてもしんどい時期です。

オランダに渡り「アーティスト」になる

オランダに渡ってからは、日本での仕事を一段落させてきたこともあり、急に暇になりました。やることがないというのは自分にとって不安なことなので、友人に薦められたアーティスト・イン・レジデンスに応募してみることにしました。

今まで、自らを「アーティスト」と呼称したことはなかったし、なんだかそう呼ぶことがおこがましい気がしていたので、最後まで悩みましたが、なんとかいくつかのプログラムに応募。運の良いことに、その中の1つが通過し、9月にオーストリアでレジデンシープログラムに参加できることになりました。

🇦🇹オーストリアのSchmiede Halleinという場所に滞在しました

人生で初めてゲットした、アーティストという肩書き。
プログラム開始直前まで不安でいっぱいでしたが、実際に参加してみると、
それは今までの生活にはなかった、たくさんの変化がありました。

最も大きな変化は、アーティストとして場にいることで、「あなたは何を感じてこれを生み出したのか?」という個人的な感覚を問われるようになったことです。

デザイナーだったときと比較すると、社会的な背景やソリューションといった客観的な事実より、「その人が何を感じているか」という主観的な事実について語ることが重視され、それについての対話が膨らんでいくイメージです。

今まで私は、それを問われる機会が少なかったので、最初は動揺しました。
口をつぐんでしまった私に、キュレーターの人が言ってくれたのは「アイデアよりも、君が何を感じたのかに興味があるんだ」という一言。

その言葉に促されて、少しずつ率直に自分が感じたことを話してみると、
今まで抑圧されていたものがふっとあふれるような感覚になりました。
個人的な感覚をすくい上げて、否定せずに、言葉にしていく。
そんな単純なことが、もしかしたら自分にはできていなかったのかもしれません。

レジデンシー期間、様々なアーティストと会話しました。
それはまるで、心のリハビリのような期間でした。
今まで「自分の感覚だから」「説明しづらい直感だから」と避けてきたことが、少しずつ話せるようになっていました。

すると、どうでしょう。
不安定だった自分の心が、以前より安定してきたことに気づいたのです。

主観と客観。自分と社会。その2つの間で。
今までは、社会や他人の要請を聞きすぎていたのかもしれません。
自分の心の声を聞き、その感覚について話す相手や、環境ができたこと。
それによって心のバランスが取れるようになったんだと思います。

「心の中にアーティストを飼う」ことで、
自分と社会のバランスをとる。

きっと、このnoteを読んでいる方の中には、僕と同じように、クライアントワークに疲弊していたり、自分の感覚に自信を持てずにいる方がいらっしゃるのではないでしょうか。

そういった人は、もしかしたら心の中の自分と社会のバランスが崩れてきているのかもしれません。そんな自分の感覚を信じられなくなった人におすすめしたいのが、今まで話してきた「アーティストを心に飼う」ことです。

方法はとってもシンプル。
「私は何を感じたか?」について話す、書くことです。
他人の言葉を借りず、自分の感覚を丁寧にすくい上げ、言葉にしてみる。
自己否定せず、自分の直感を価値あるものとして扱い、人に伝えてみる。
そのための時間をつくること。

自分の感覚に向き合うときには、きっと

「これは、多くの人にとって当たり前なことなんじゃないか」
「これは、話す価値がないことなんじゃないか」

といったネガティブな感情に直面すると思います。
大事なポイントは、それを一旦横において、まずは書いてみる、口に出してみること

別に、当たり前だって良いんです、話す価値がないことなんてありません。
自分の感覚や直感を抑圧してしまうのは、いつだって自分自身です。
これは、それを辞め、自分の感覚を取り戻す訓練でもあります。

そして、これは勇気のいることですが、
それを人に見せてみる、話してみることも良い効果を生むと思います。
他人と相対化することによって、見えてくるオリジナリティもあるはずです。

きっと、話してみても、すべてが肯定されることはないかもしれません。
でも、その自分の感覚や直感に耳を傾け、表現するという積み重ねのなかで、自分の感覚を肯定していくこと。
それが、不安定だったあなたの心を、もっと安定させてくれるはずです。

最後に、この頃自分自身に投げかけている言葉を置いておきます。

あなたの感覚には、直感には、きっと意味がある。
だからもっと、それを尊重してあげましょう。
あなたという個人こそ、この社会の最小単位なのですから。


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