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おおたさんの話 #04

 あかるい夜空に、満月が出ていました。きょうも昼のあいだは日差しがつよく、夏のような青い空に、真っ白い雲が浮かんでいました。おもえば、この二、三日、わたしはいつも日傘をさして出かけていましたが、海沿いの公園に咲いているアジサイはどれも、雨傘がひろがるように丸く膨らんでいて、まだ小さな花が、うすく色づきはじめていました。
 海からの南風が心地よく、樹々の新緑は梢にいくほど青々として、鮮やかにひろがっていました。いまも、すずしい夜風は心地よくて、月明かりがまた差してきた夜空に、丸い月がふたたび顔を出してきました。白く照らされたうすい雲の帯が、おだやかに吹かれては、満月の下をながれていきます。夫は、太鼓が聞こえてきそうな月だといっていました。夕方の海で、子供たちと帽子をひろいに海に入ったと、話していました。

 夕暮れの波うちぎわで、子どもたちが四、五人遊んでいました。昼を過ぎていちど大きく引いた潮が、ゆっくりとふたたび、真夜中の満潮にむかい上げはじめていました。
 南よりの微風が海から吹いていて、まだあかるい西日のなか、わたしは砂浜に腰をおろして海を眺めていました。日に焼けてあたたかい砂。穏やかな潮風。子供たちの呼び合う声。まだすこし早いかもしれませんが、月の出を見にでてきたのか、海沿いの道や、砂浜を、連れ立って歩く人が増えてきていました。たしか、きのうか、一昨日の晩ぐらいからの、満月だったはずです。あともうしばらくすれば、左手の水平線のほうから、月がのぼってくるころでした。わたしは仰向けになって、暮れはじめた空を見上げました。
 あしたも一日、きょうみたいに日差しがつよくなるのか、夜になって涼しくなったいまも、空はあかるく晴れていて、雲を白く照らした満月が、部屋の窓から見えました。食事のときに、わたしも満開になるのを楽しみに待っている、海沿いの公園のアジサイが、徐々に色づきはじめていたと、妻から聞きました。

 きょうは友だちと、丘の上に遊びにいきました。ずっと、ずっと遠くのほうに見えても、まだぜんぜん大きくて、灯台みたいに真っ白い風車がありました。そのあとは、みんなで海にいって、夕方まで遊びました。砂浜に字を書いたり、大きい山や、お堀や、灯台をつくったり、砂のお団子を並べたりして、ほかにも、膝くらいまで海に入ったりしました。
 でも、遊んでいる途中で、弟の帽子がどこかにいってしまいました。お姉ちゃんとわたしで、波うちぎわにぷかぷか浮かんでいるのを見つけて、大変でした。弟の帽子を取りに、海に入ってくれたおじさんがいました。三人で、おじさんにありがとうのお礼をいいました。
 きょうの夜は、白くて丸い月で、満月だと、おじさんはいっていました。
 ほかにも、太鼓の音がきこえてきそうだと、いっていました。

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オオタアキラ
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