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その33 発達課題 エリクソンとスーパー

 まずはエリクソンとスーパーのご紹介をしたいと思います。
 エリク・エリクソン(米.精神分析家、医師、発達心理学者.1902-1994)はドイツに生まれてアメリカで活躍した医師で、生涯の人格的発達モデル(漸成的発達理論:社会文化的・歴史的要因を考慮した8段階のライフ・サイクル理論)を示しました。

 ドナルド・スーパー(米.キャリア・カウンセリング心理学者.1910-1994)は「個々人の生涯発達を支援する」実践家でもありました。スーパーの理論には個人の発達上に時間と役割の概念が取り込まれライフ・スパン(時間軸)、ライフ・スペース(役割軸)をライフ・レインボーという形で可視化しました。

 この二人は同様の時代背景の中で一方は発達心理学の視点から、一方はキャリア・カウンセリングの視点から理論を展開しました。年齢を軸にした理論展開は、各発達段階における「課題」を提示しており、興味深いものとなっています。

ここでお話する課題とは、主に精神面で会得する、あるいは超える成長の視点のことです。成長過程で親子や学校、地域社会、就労と生活などからの影響を受けて、関係性への気づき、ルールや習慣などへ順応し、それを学習することでこころの成長を遂げていくということです。下表では年齢に対応する(キャリア)発達課題を短い言葉で表してみました。

皆さんはどのように感じられましたか。私自身これらの理論を学んだ時に、確かにそういう傾向はあるなと思ったことが多くありました。また、「発達」という言葉のイメージから幼年者に生起する事象では?という思い込みがありました。しかし、それはどのような世代でも成長に必要な課題があるという気づき、視野の広がりにつながりました。

添付の図を参考にすることで、これからの皆さん自身がどのように現実を受け止め、どのように対処していけばよいかという参考になるのではないかと考えています。

個別性が高い事がらです
 人の顔が一人ひとり違うように、成長の過程は個別性が高いことを改めてご理解いただければと思います。今回ご紹介した研究者の理論は年齢を軸にそれぞれの世代の特徴などを表現しています。これらの成果は長年の研究によって導き出され般化され納得性の高いものと考えています。

一方で該当する年齢(層)のすべての人に当てはまるものではなく、そういった傾向があるといということを表現していると受け止めていただければと思います。エイジズム(ageism)という言葉があるように、年齢によってその人の価値観や行動が決められてしまう先入観は、個々人の尊厳の視点から受け入れられるものではないと考えています。

 また、心理学の世界では研究標本(サンプル調査)の偏りが注目されることもあります。それはWestern, Educated, Industrialized, Rich, Democraticの頭文字をとってWEIRD(異様な)と呼ばれ、標本(被験者)に選ばれる人が研究者の近くにいるケース、要は学内の学生や有識者などが多く、国や民族、文化性の違いが考慮されていないケースが存在することが指摘されています。

統計学上は母集団から抽出される標本(被験者)は、無作為抽出でなければそのデータの公平性・客観性を担保できないとされています。このような視点があることも理論の紹介に付記させていただきます。
 

参照・引用文献
渡辺三枝子編著.新版キャリアの心理学第[2版].ナカニシヤ出版.2018.P46
森津多子・向田久美子.改訂版心理学概論.一財)放送大学教育振興会.2024.P131、P19
国家資格キャリアコンサルタント養成講座 基礎理論 RCDS第3版 Ver3.30.リカレントキャリアデザインスクール.2022. P1
基礎理論 授業サブノート Ver3.30 リカレントキャリアデザインスクール.2022. P56

いかがでしたでしょうか。今回はちょっと堅苦しい感じになってしまいましたが、ご参考になればと思います。
このブログへのご質問・ご意見は大島までいただければ幸いです。
メール: ooshimatomohiro@gmail.com

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