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その37 雇用と人事制度
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最近?話題のジョブ型雇用って何だろうと思いまして、雇用の仕組みの中でどのような位置づけになっているのか、またそれぞれの仕組みにおける一般的な評価制度について整理してみたいと思います。一般論、本になっているような内容を引いていますが、実際の会社では個別性が高いと思いますのであくまでも参考ということでご理解いただければと思います。
何に対する報酬なのか で仕分けしてみました
普段はあまり考えることは少ないかなと思いますが、私たちの給料は私の何に対して支払われているのか ということから考えてみたいと思います。
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ある会社の場合、賞与は「成果主義」をとっていて、半期毎の期首に目標を設定して、その進捗を上席の考課者と共有しながら指導を仰ぎ、時に支援をいただきながら目標達成を目指していきます。月例給与は、二段目の「行動主義」を採用しており、年に1度のスキル・ベースド・コンピテンシー評価で月例給与と賞与(この二つを合わせて年収基準額)が決まります。年種基準額は前年のコンピテンシーの発揮度から今年の発揮度を推測して給料が決められているということになります。少し理屈っぽいお話を追加するなら、スキル・ベースド・コンピテンシーの前提となるとコンピテンシーの根拠はスキルとなります。もっとややこしいお話としては私たちが発揮するコンピテンシーを支える「スキル」が比較的言語化しにくいことと、「スキル」の物差しが「行動」や「能力」と仮定すると、左辺(結果)と右辺(原因)の等式の中に未知数が二つある状態となるので解は出せないということになります。最近習った言葉では解が無限に存在する「不良設定問題」というらしいです。
スキル(?)=行動(顕在化)+能力(?)
まあ、私の仮定と立式が間違っているのかもしれません。
あらためてコンピテンシーとは
コンピテンシーを定義します。コンピテンシーとはある状況または職務において高い業績をもたらす類型化された行動様式(引用:キャリアコンサルタント養成講座サブノート)、あるいは、優れた成果を創出する個人の能力・行動特性のこと(野村総研)とされています。「行動」と「成果」は第三者から確認することが出来ますが、「能力」は「行動」と「成果」から推測するということになりそうです。
コンピテンシーは総合力?
成果を出すための能力や行動特性がコンピテンシーであるとすると、その成果の内容や質によって発揮されるコンピテンシーは変わってくるのではないかと思います。例えば「新技術」の開発であれば、その技術領域の専門知識として既存技術と新技術の差異、メリット、成立させるための要件定義といった能力とそれを見出す行動力、実現させるためのプロジェクトマネジメント力、予算化するための企画力、予算を通すための折衝力などなどあらゆる能力が求められるのではないでしょうか。「新規開拓営業」ではどうでしょう。自社の商材の強み弱み、他社商材との比較の能力、新規開拓ですから、アポイントメントのタイミングでどれだけ訴求力のある概説が出来るか、会ってみようと思わせられるかの話術、コミュニケーション力、その前には誰がどんな製品やサービスを欲しているかのマーケティング力と顧客(候補)の気持ちを汲み取れるかの共感力、顧客候補とつながりを作る顧客チャネルなどなどこちらも一筋縄ではいかない多彩な能力が必要になりそうです。
これらの項目をコンピテンシー項目として細かく分類することは、その会社が欲するコンピテンシーを明示するという視点から意味はあると思います。一方、「成果」のプロセスとしての「行動」や「能力」をコンピテンシーの項目カタログを使って、物語を作成する(成果を説明する)ことになります。この物語をコンピテンシー項目毎に再分解してそれぞれのコンピテンシー項目で評価点をつける作業をします。評価のための作業ではありますが、当事者自身も彼、彼女を評価する上席の方も相当の労力が必要になるように思います。
要するにコンピテンシー評価はどのような方向に「総合力」が発揮されたかを表現するくらいがちょうどよいのではないかと思っているということです。
最近? 話題のジョブ型雇用
典型的なジョブ型雇用が定着している欧米、特にアメリカは、多様な文化性を持つゆえに価値観を一つにして仕事に取り組んで大きな成果を上げるための方法の一つとしてジョブ型雇用、職務等級制度を作り上げてきたのではないかと思います。それは職務と賃金がダイレクトに結びついていて、職務記述書(ジョブ・ディスクリプション)にすべての職務が記述され、雇用契約書に添付されます。極端な例で申し上げると職務記述書になければ職場の整理整頓も朝礼も後輩指導もする必要がないという事になります。モチベーターは賃金。より多くの賃金を得るためには新たな雇用主を見つけるか、新たなスキルを身に着けるかという事になります。日本より解雇が容易な環境下では、企業はより安い労働力を採用しますしPay for Workの視点から、働く側に専門性の高いポテンシャルが無ければ企業による育成(投資)もないでしょう。
以前にもお話したとおり、これでは雇用と老後をある程度補償する代わりに三つの無限定性の受容と組織内育成で自律的成長の機会を留保するフレームの日本のメンバーシップ型雇用にあまりにもマッチしないということになります。しかし、ある日本の経済団体が「ジョブ型」を打ち上げたために、これに呼応しようとジョブ型を標榜しながら、実態は「役割主義」をとっている企業が散見されるようです。ヨーロッパでも同様な傾向がみられ、ガチガチのジョブ型というよりは役割主義を採用する傾向になっているようです。あくまでもホームページに載っている情報の範囲での私の見立てですが。
日本の企業でもすべての従業員に同じ雇用・評価制度を適用しているわけではなさそうです。その背景までは分かりませんが、部分的に職務等級、役割等級を採用している企業もあるようです。同じ会社の中でもそれぞれの組織機能をよく観察して、雇用や評価の仕組みを変えて、組織と個人の成長のために最良の選択をしたほうが良いのではないかと私は考えています。
役割等級制度
では、私たちが次に何を選択すべきか ということになります。まだ研究中のところですけれど、価値観や判断基準の面で多くの人に受け入れられやすのは「役割主義」ではないかと思っています。職務主義のようなジョブディスクリプションの煩雑な管理を役割定義で回避する一方で、職務と職責、権限を具体的に表現できる、さらにその達成度の職責の遂行度という形で、可視化も比較的容易なのではないかと思っています。
自律的な研鑽の仕組み(キャリアオーナーシップ)
キャリアオーナーシップという言葉が、法政大学の田中研之輔先生のオリジナルであればお叱りをいただいてしまうことになりますが、目指す姿を端的に表しているような気がして引用してみました。
役割等級制度で職務と職責が明確になってくると、どのような能力を高めていく必要があるか、あるいはどのような研鑽を積むべきかが明確になってくるような予感があります。人事評価に使う時間が減った分も、自己成長に充てた方が良いですよね。
これは組織内に限らず、組織と個人をより未知の領域にいざなうステップになりえるのではないかと考えています。
いかがでしたでしょうか。今回はちょっと深入りして雇用と人事制度の考察をしてみました。文中にあった様に研究中の内容でもありますので、これから私自身の考え方が変わっていく可能性もありますが、よりよい選択をするための視点の一つとして眺めていただければと思います。
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