世界と人間
著者 梅原猛
「世界と人間」より。
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伊勢神宮には皇室の祖先神が祀られているが、
出雲大社には、いわば皇室に敵対した、
前時代の支配者、オオクニヌシノミコトが祀られている。
つまり、味方よりも敵を手厚く祀る
というのが記紀の伝統的神道なのである。
しかるに靖国神社は、
戦争で犠牲になった味方の人のみを祀り、
敵の人を祀らないようにみえる。
これは果たして、
伝統的な日本の神道といえようか。
日本人の道徳心を作ったものは、
儒教と並んで、仏教ではないかと思う。
仏教が説くのは、
人間の平等と自利利他ということである。
この仏教の平等主義が、
日本では身分社会の倫理である儒教の倫理を和らげているのである。
また日本には、
自分を犠牲にして社会のために尽くした人間を、
もっとも偉い人間と考える風潮がある。
これは仏教の利他の精神であるが、
この仏教と微妙な形で神道が連なっているのである。
神道は明治以後は
超国家主義的なイデオロギーに支配されたが、
神道はもともと、
自然の中にいる神々に感謝を捧げ、
その神々の前で自分の卑小さを感じ、
祈りを捧げる宗教なのである。
.
宗教の教祖になれば、組織が必要である。
組織は必ず建物を必要とする。
建物を建てるためには、
金集めをしなければならない。
そして組織を守るためには、
信仰よりも金集めそのものが目的になるのである。
むしろ信仰は、
そこで金集めの大義名分にならざるを得ない。
それゆえ、
親鸞(しんらんしょうにん)にしても、道元にしても、
彼の教えを聞く、
数十人の弟子に囲まれたのみであった。
あの弟子の多い法然すら、
教団を作ろうとする意図を持たなかった。
私は、真の宗教家には、
そのような教団作りにエネルギーを費やす暇は、
ないのではないかと思う。
「世界と人間より引用」
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真理の全てがギュッと詰まっている本ではないでしょうか。
さすが日本の哲学者という印象を受けました。
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