調和ってる
音の飛んだピアノをあえて弾くときみたいな、なんの気負いもない朝を過ぎていく。新しい職場へは1時間近く車を運転しないと着かない。毎日、ひやひやする。事故を起こすんじゃないか。誰かを傷つけるんじゃないか。山道を運転しているときに視界が縦揺れして止まらなくなったときは焦った。(すぐに車を停車させて、塩飴を舐めたら治った)誰にも言わないけど、出勤が命がけ。その価値があると思っている程度には、今の仕事をしているときに私はただのお金引換券じゃなくて、私で、いさせてもらってて、楽しいけど。仕事じゃないみたい、ってよくその人にとっての天職についた人がこぼす言葉だけど、今の私、そうかもしれない。仕事じゃないみたい。
車を運転しているときに流すスピッツ、YUKI、People In The Box。一時間は、音楽を聞き流すにはすこし長すぎる。そういえば、よく事故を起こすことを心配してくれたひとがいたなあ。そのときは、なんてことない世間話のように流してしまったけど。後々になって「あれはやさしかったな」と思い出す人って、たまにいる。やさしい人はどうして、やさしいことを、そのときに気づかせてくれないんだろう。ジャーン。とアコギがいい感じに鳴ってしまうから、思い出すことが綺麗になりすぎる。そんな自覚はある。
ここ最近はそういう、怒り以外の感情の余韻にひたって、またその人と出会いなおしたいかどうかを考える。考えて、ああまた会いたい、もう少し大事に関わりたいと思ったとしても、点と点がつながるかどうかなんてわからないのに。時間がありすぎる。落ち込んでもいい時間と同じくらい、希望がなんだか有り余る。こういうの、おもいこみが激しい、って言うのかな。
もしもまた出会うことができたら、同じくらいわかりづらい優しさで接したい。さるすべりの花、きれいだな。かじったら酸っぱそうなピンク。深い森、木漏れ日。ちょっと暗いくらい。涼しい。太陽のある方向が光ってる。朝だから、光がある。こぼれているというよりは、垂れてるくらいのかすかな。