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【相続#6】負の財産を相続するとどうなるのか②「相続人のターン」

 こんにちは。行政書士の大野です。
 前回の記事では、ある相続において、すべての財産を相続人のうちの1人に承継させるという遺言があった場合、負の財産(債務)の相続債権者は誰に対して債務の履行を請求すればよいのかを考えました。

 今回は、相続人の立場からみていきましょう。


民法第902条の2

まずは、民法を読んでみましょう。
 
(民法)第九百二条の二 
被相続人が相続開始の時において有した債務の債権者は、前条の規定による相続分の指定がされた場合であっても、各共同相続人に対し、第九百条及び第九百一条の規定により算定した相続分に応じてその権利を行使することができる。ただし、その債権者が共同相続人の一人に対してその指定された相続分に応じた債務の承継を承認したときは、この限りでない。

最判平21.3.24

 次に、判例の一部抜粋を読んでみましょう。

(最判平21.3.24)
各相続人は、相続債権者から法定相続分に従った相続債務の履行を求められたときには、これに応じなければならず、指定相続分に応じて相続債務を承継したことを主張することはできない。(専ら、このときの判決において初めて示された判断とは、『相続人の1人に対して「財産全部を相続させる」旨の遺言がされた場合の遺留分額の算定において、遺留分権利者の法定相続分に応じた相続債務の額を遺留分の額に加算することの可否について判示したもの』でありました。)
 

相続債権者は遺言内容に縛られることはない

 相続債権者は遺言の内容に拘束されません。相続債権者の立場としては、仮に資力がない相続人へ債務が承継されるようなことになれば、債権回収について大きなリスクがあるからです。

 つまり、相続債権者は、法定相続通りに相続人に債務の履行を求めることができますし、各相続人は債務の履行に応じなければなりません。
 

債務の履行に応じた相続人は、その後どうなるのか

 それでは、債務の履行に応じた各相続人は、その後どのような権利を行使することができるのでしょうか。
 
 最判平21.3.24の判示の中で裁判官は、債務の履行に応じた場合も、相続債務をすべて承継した相続人に対して求償し得ると判示しました。

誰も負債の相続なんてしたくない!

 遺言書に債務の承継についての指定があった場合(今回の場合は、すべての財産を相続人のうちの1人に承継させるという遺言内容でした)には、相続人間においては、誰が債務を負担するのかということを対外的に明確にし、債権者の承諾を得るためにも、免責的債務引受契約を締結することが重要になります。

 それでは、免責的債務引受の効果はどのようにすれば生じるのでしょうか。

①    相続債権者とすべてを相続する相続人との間で、免責的債務引受契約を締結し、契約した旨を相続していない相続人に通知する
②    相続人間同士で免責的債務引受契約を締結し、相続債権者がすべてを相続する相続人に対し承諾をする

参考(民法第四百七十二条、免責的債務引受の要件及び効果)

民法(免責的債務引受の要件及び効果)
第四百七十二条 免責的債務引受の引受人は債務者が債権者に対して負担する債務と同一の内容の債務を負担し、債務者は自己の債務を免れる。
2 免責的債務引受は、債権者と引受人となる者との契約によってすることができる。この場合において、免責的債務引受は、債権者が債務者に対してその契約をした旨を通知した時に、その効力を生ずる。
3 免責的債務引受は、債務者と引受人となる者が契約をし、債権者が引受人となる者に対して承諾をすることによってもすることができる。
 

本日も最後まで読んで頂きありがとうございました!


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