ジメジメた夜は
僕は同い年の同居人と二人暮らしである。趣味や好みなどはわりかし近いと思う。強いて言うなら聴く音楽のジャンルがちょっと違うくらいだ。そんな2人が最近ハマっているコトは、「グリーンカレーチャーハン」を作ることである。
コトの始まりは、かなり異国料理にハマっていた時期、勉強のためと機会があれば片っ端から色んな人を連れて食べまわっていた頃の話。その日は同居人と、何処か食べに行こうと作戦会議をしていた。作戦会議と言っても、僕の狙いは既に決まっており、家の近くにある少々風変わりな「タイ料理屋」の一択であった。勿論、半ば強引ではあったが、同居人も承諾してくれた。いや、ノリノリだった。家の帰り道にあったため、店内をなんとなく覗き見てはいたが、実際に入るのとではやっぱり大きく違かった。壁中に貼られたメニューや安い業務用家具、独特の匂いや少し狭い店内などなど、現地かと錯覚してしまうほどの雰囲気がたまらなく最高であった。そして僕達は、あの伝説のグリーンチャーハンとも出会ってしまったのだ。
あの日から、そのタイ料理屋しか行かなくなった。グリーンカレーチャーハンの虜だった。しかし、僕らは頻繁に外食をするほどのお金持ちでもないため、我慢していた。そんなある日、夕食の買い物をしていたら、「グリーンカレーペースト」を見つけたのだ。目から鱗であった。僕らは自宅で限りなく近い再現に成功し、そのお店にはあんまり行かなくなった。貧乏なのだから当たり前に自炊である。いたしかたない。
ある晩、またまた食べたくなりまたまたグリーンカレーチャーハンを作っていた。夏の暑さと料理の熱により、なんだかテンションが上がった。同居人が風呂からあがり、さらに蒸気が加わり、なんだかイラついた。そんな夜に、同居人が突然ジャズを流し始めた。今の今までジャズなど流したことがないのに、こんな蒸し暑いジメジメた夜にジャズを選ぶセンスを呪った。本場のジャズがもしかしたら手に汗握りパッション溢れのジメジメた音楽なのかもしれないとも考えた。ただ、同居人よりも圧倒的に僕のほうがジャズを好きでよく聴く。さらには、この日本という地でアジアンな料理しながらジャズってもうカオスでは。
僕寄りのチョイスをしてくれたのはとても嬉しい。だが、なんか、“坂本慎太郎”とか“スチャダラパー”とか“Beatles”とかかけてほしかった。いや、ジャズ以外だったらなんでもよかったと思う。
それと、コレを書いてみて生まれた、あのタイ料理屋への罪悪感とは一生向き合わないつもりです。