腰痛概念の重大な転機
■従来の腰痛概念に重大な転機が訪れたのは、
アメリカ医療政策研究局(AHCPR)が1992年までに発表された
急性腰痛に関する論文の体系的レビューを実施し
『成人の急性腰痛診療ガイドライン』を報告した1994年のことである。
■AHCPRが『成人の急性腰痛診療ガイドライン』に着手した理由は次の4点。
(1)アメリカでは腰痛の罹患率が15~20%と高く、就業不能の原因として挙げられる第1位が腰痛である。
(2)腰痛はプライマリーケアにかかる患者が訴える2番目に多い症状であり、整形外科医・神経外科・産業医を訪れる最大の理由でもあり、外科手術を受ける3番目に多い疾患でもあることから、経済的・心理社会負担がきわめて大きい。
(3)腰痛による活動障害のある患者の大部分は臨床転帰を改善させる有効な診断と治療を受けていないという科学的根拠が増加中。
(4)腰痛の研究機関が増加してきたために、
一般的に行なわれている腰痛治療の体系的評価が可能となった。
現存する科学論文には欠点があるものの、
現在行なわれている治療法の有効性と安全性に関する結論には充分な科学的根拠がある。