介護士から見た「高齢者虐待」
こんにちは、おーじです。
今回は、昨今よく見かける介護士による高齢者虐待のニュースについて、当の介護士はどう思っているのかをシェアします。
はじめに
「当の介護士」といっても、私の周りの介護士100名ほどの意見をすり合わせたものですので、必ずしもすべての介護士の総意ではありません。それをご理解の上で、続きをお読みください。
結論
ずばり「気持ちはわかる」と思っています。というか、多くの介護士がさまざまな暴力的衝動を感じた経験があります。それを表に出してしまったか、抑えられたかの問題なのです。
そもそも介護士って
介護士とはいえ、普通の人間です。よくこういったニュースのコメンテーターは「プロとしてあり得ない」などと発言しています。一体、どの業務に関するプロフェッショナルだというのでしょうか? そういう外野の人の言う「プロ」って言うのは往々にして「接し方」や「コミュニケーション」を指しています。これは大きな誤りです。
介護のプロとは、「自立支援」のプロの事です。要するに高齢者が一人で生活できるよう手助けすることです。その中に「ユマニチュード」や「タクティールケア」などの技術が複数あり、それらを総合的に用いて、結果的に高齢者の能力を「引き出す」ことが目的です。
しかし、上記のような内容の薄いコメントであっても、TV画面の向こうの介護について何も知らない人が聞いたら「確かにプロじゃないね」と誤解するのでしょう。
介護士も普通の人間です。何もなければ他人に暴力を振るうわけがないでしょう。
ニュースが報道される背景
高齢者虐待のニュースや保育園児虐待のニュースなどは定期的に報じられます。その理由を考えたことはお有りでしょうか? ただ事件が発覚したから報道していると勘違いしていませんか? 事件はもっと頻繁に発生しているでしょう。
では何が理由なのか? それは「法改正」です。例えば「介護保険法」の場合は、3年に一度、法改正が行われます。ですので、こういった報道が過熱するのは3年に一度です。
事件報道と法改正の繋がりは、世論操作によって改正案を通りやすくするためです。報道によって
虐待をしてしまうほど全国の介護士に負荷がかかっている
人手不足が原因
待遇が良くない(給料が低い)から人が集まらない
待遇を良くしてやればいいのに
以上のように多くの人の意識を一つの方向に向けることができます。その積み重ねもあり、前回、前々回の法改正で介護職員の待遇は徐々に良くなってきています。なぜ、このように周りくどいやり方をしているのかについては、別の機会に説明します。
衝動を抑えられる人と抑えられない人の違い
では、暴力的な衝動を抑えられる人と抑えられない人の差は何なのでしょうか。これについては個々の介護士について深い理解がないと判断はできません。それにどんなバックボーンを持っていようが、誰だって抑えられないほどの衝動を経験する可能性だってあります。
介護施設自体虐待が起こりやすい構造になっている
そもそも介護施設自体が虐待の起きやすい環境になっているという、根本的な問題があります。なぜなら「プライバシーの保護」は介護業界において重要なテーマですが、プライバシーを保護できる環境とは、他者の視線が届かない環境を指します。
また、サービスの内容的に高齢者(お客さま)が介助(商品)に依存するケースが多くあります。例えば、車椅子移動が楽だからといって歩かなければ、足の筋力は弱まり、寝たきりになります。そのため、高齢者が「歩きたくない」と主張しても、介護士はあの手この手で歩かせようとします。
介護施設では四六時中、お客様の要望をお断りしています。それが双方にとって、どれほど大きな心的ストレスになっているかわかりますか? 高齢者からすれば、お金を払っているという思いや自分より若い人に説き伏せられるストレスから感情が爆発しやすくなっています。
虐待が起こるのは主に夜勤中です。想像してください。
深夜3時、周りの人は寝静まり、眠気を我慢してオムツ交換を数十回行う介護士。疲労困憊の状況。
とある高齢者のオムツ介助に行くと、「眠いから」という理由で、介助を拒否される。しかし、オムツを変えなければ皮膚に悪影響が出たり、ベッドまで汚してしまったりする。どうにか説得を試みるが高齢者は機嫌が悪くなり、唾をかけたり、物を投げたり、暴力を振るったりしてくる。
これを経験した介護士の気持ちは理解できますか? 「眠いのはこっちだよ」と思わない自信はありますか?
これが介護現場です。日常です。毎日、何度もこのようなことが起きています。
まとめ
高齢者虐待について、介護士サイドは理解があります。騒ぎ立てるのは多くの部外者、もしくは介護に希望や理想を持っている方です。ですので、こういった報道を見たときは、周りと同じように介護士を批判するような事だけはやめてください。「残念ですね、どうでもいいけど」くらいのスタンスが適切かと思います。
また、こういった問題からご家族を守りたいと思うのであれば、高級有料老人ホームをご利用されると良いかと思います。