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『一度きりの大泉の話』を改めて読み直してみる~その1

「青のパンドラ」連載再開がいつになるか見当もつかない状況なので、やろうかどうしようか迷っていたことを試してみようかな~と

それは、改めて「一度きりの大泉の話」(以下:大泉本)を読み直して、気になった点を拾い上げることです。
私が萩尾望都批判を始めたのは、大泉本がきっかけなのですが、今まで大泉本そのものに対してきっちり向き合って批判してきたことってほとんどなかったし、あれから三年以上経って、当時とは捉え方が変わってきた点もいくつかあるので……

今まで書いてきたことと重複するものも多いでしょうが、気にせずにガンガンやっていこうと思います。
では、まずは「前書き(そもそものきっかけ)」から。引用はとくに記載のない限り、すべて大泉本からの引用となります

前書き(そもそものきっかけ)
 漫画家になって50年経ちました。
 (中略)
 ところが。
 この数年、周りが騒がしいので困惑しています。
 大泉の頃のことでお話が来るのです。急に。これまではほとんどなかったのです。

 というのは、竹宮先生が2016年に自伝本を出版され、そこに大泉の時代のことや私のことが登場するらしいのです。私は読んでいませんが、好意的に書かれていると聞きました。
 別にご自分のお話をされるのは構いません。
 が、この自伝本が出版された直後から、静かだった私の周辺が騒がしくなってしまいました。

 自伝本を読まれた方や、編集に携わった方から、この本を読むよう繰り返し勧められました。読んでないと言っても「読んだはずだ」と断定されたり、竹宮先生との関係がどうなってるのかと執拗に聞かれたり、関係を修復するように言われたり、さるテレビ局からは大泉時代のドラマ化の企画まで持ち込まれました。
 「協力できません」とお断りしました。「本は読みません」とお断りしました。今はお付き合いはありませんとお断りしました。それでも半年とか1年後にまた定期的に蒸し返されますので、落ち着いて仕事ができません。

  仕方がない、もう、これは一度、話すしかないだろうと思いました。
 これで私の気持ちをご理解いただき、外部からのアプローチが収まるよう望みます。

大泉本を読んですぐに思ったのが、こんな本を書かなければいけないほど、周囲の声がうるさかったというけど、マネージャーの城さんが間に立って、逐一断ってもらうようにすれば済むことなのでは?ということでした。

竹宮さんが2016年に出版した自伝本というのは「少年の名はジルベール」(以下:ジル本)のことですが、大泉本を読んだ萩尾ファンたちが当時、「盗作呼ばわりした肝心の部分を書かないのはずるい」「竹宮さんは自分だけジル本を書いてすっきりしたかったのだろう」「自分たちだけでは大泉サロン伝説が盛り上がらないから萩尾さんの名声を利用したかったのだろう」などといった意見を語っていて、当時は私も竹宮さんについてほとんど知らなかったこともあり、竹宮さんってそういう人なんだろうか?と半信半疑で聞いていました

だけど、今は全く違うことを考えています。竹宮さんには、どうしても「少年の名はジルベール」に萩尾さんのことを書かなくてはいけない事情があったのでしょう。
それは、萩尾さんにあるメッセージを伝えたかったということです

そのメッセージとは「萩尾さん、もう私に執着しないで。私に囚われず、あなたは自分の人生を堂々と生きてください」といったものではないかと思っています

今までもさんざん書いてきたことですが、萩尾さんの竹宮さんへの粘着っぷりは、度を超えているとしか言いようがなく、当の竹宮さんが気づいていないわけがないんです。というか、竹宮さんに気づかせたくてやってるとしか思えないんです。
このような精神構造がどういうものなのかよくわからないのですが、ことあるごとに竹宮さんに嫌がらせしないと気が済まないのでしょうか?
簡潔にどんなものだったかを書きだしてみます

・「トーマの心臓」でサイフリートに鞭打ちさせる
・「温室」というタイトルのマンガ(裸の少年が出てくる)を描く
・竹宮さんの好きな作家である光瀬龍氏の原作で、竹宮さんが阿修羅王のイラストも描いた「百億の昼と千億の夜」の漫画化を萩尾さん自身が希望して実現
・竹宮さんと親しくしている寺山修司氏と一緒に仕事を始める
・竹宮さんの好きなコクトー原作の「恐るべき子どもたち」を漫画化する
・竹宮さんがサンリオ文庫でル・グィンの作品の表紙を描いた後、早川文庫のル・グィンの作品の表紙を萩尾さんが描く
・少年に対する性的虐待を描いた「残酷な神が支配する」を描く
・竹宮さんが「吾妻鏡」を描くことを知って、わざと一年前に「あぶない壇ノ浦」という同じ鎌倉時代を描いた漫画を描いたと思われる
・日本漫画家協会の理事を十年以上も竹宮さんが続けているようだけど、数年前に萩尾さんも理事に加わった

この中でもとくに卑劣な「あぶない壇ノ浦」の件ですが、男性編集者が萩尾さんに「竹宮先生が鎌倉時代を描いたのはご存知ですか」と聞いたのは、ひょっとして、萩尾さんの竹宮さんに対する粘着っぷりは業界の一部で有名だったからかもしれないと思いました。マンガ評論家の米澤嘉博氏も「でも萩尾さんのが出る前に、阿修羅王の姿を描いた人がいたようですが…。」(「月刊OUT」1984年4月号)と竹宮さんと思われる人のことを語っていて、この方も萩尾さんに対して何か思うことがあったんじゃないかと思わせる口ぶりでしたし

おそらく、萩尾さんにジル本を読むように繰り返し勧めてきた人や、竹宮さんとの関係を修復するように言ってきた人の中には、「竹宮さんもあれだけ折れてるんだから、萩尾さんももう竹宮さんに執着するのはやめてあげなよ」といった話をした人もいると思うんですよ。言われて当然のことをしてきたのですから。
萩尾さんは自分に不利になるようなことは決して書かない人なので、本当はもっと別の、もっと核心を突いた何かを言われた可能性は高いと思っています。
で、仮にそう言われていたとしたら、萩尾さんの精神はとてもとても平静ではいられなかったと思うのです

ということで、大泉本執筆の一つの大きな動機は、「私は竹宮さんをストーカーしているわけではない!」と訴えたかったということもあるのではないかと思います。萩尾さん自身も、竹宮さんがなぜジル本で自分のことを書いたのか、その原因が自分の竹宮さんに対する執着っぷりにあることを察していたのでしょう。
ずっと竹宮さんに嫌がらせしていたのに、竹宮さんはそんなことに全く動じずに、ジル本で自分のことを褒めたたえている……すべては完全に萩尾さんの空回りだったわけで、実はこれは萩尾さんにとって相当に屈辱的なことだったのではないかと思います

それで、そもそも竹宮さんのストーカーなんてしてない!とアピールせずにはいられなかったのかなと思ってます

萩尾さんという人は、それがたとえ本当のことでも、批判されれば反射的に否定せずにはいられない、とにかく、自分自身を攻撃されたくない人のようなので、光瀬龍氏の件も寺山修司氏の件も、竹宮さんが好きだなんて後から風の噂で聞いた、竹宮さんの「排他的独占欲領域」には近づかないようにしていた、と主張すればそれで通ると考えたのでしょう。「あぶない壇ノ浦」の件も、自分に都合の良い部分だけを並べて、不都合なことを一切書かずにいれば、読者が信じてくれると思ったのか、どうしてあんなに稚拙な言い訳ができるのか、心底不思議なのですが、どんなに状況的に真っ黒でも、自分が強引に白だと主張すればそれで済むと考えてるのでしょう。
ほんと、この人は自分でも言っているように「人間がわからない」人なのだとつくづく感じさせられます

上で箇条書きで挙げたのは、萩尾さんについても竹宮さんについても、さらには当時の漫画事情についてすら詳しくない私が、ここ数年で発見したものだけなので、実際はここに書かなかった細かいものも含めて、竹宮さんにあてつけてきた、ぶつけてきた、と思われる行為はもっと大量にあったのだろうと思います。
完全な部外者の私ですら、見つけるたびに「またか!」「よくやるわ!」と驚き呆れていたのですから、実際に矛先を向けられた竹宮さんはたまったもんじゃなかったでしょう。竹宮さんに罪があるとは到底思えないのですが、その原因を作った(最初に萩尾さんを拒絶した)のは竹宮さんですしね

おそらく、萩尾さんが竹宮さんに粘着することなどせず、本人が大泉本で語っているように、「私は一切を忘れて考えないようにしてきました。」という発言が事実だったなら、竹宮さんはそもそも萩尾さんのことなどあえてジル本に書く必要はなかったんじゃないかと思うんですよ

そんなわけで、竹宮さんは純粋に善意だけで、「私に対する執着からどうか解放されてほしい!」という萩尾さんへのメッセージをジル本に込めたと思うんです。萩尾さんの醜い行動の数々は見ていて辛かったでしょうし、そんな行動に駆り立てられてしまう萩尾さんを救えるのは、その原因となった自分しかいないと考えたのではないでしょうか

けれど、その善意の結果があの大泉本出版となったわけで、まさに踏んだり蹴ったりで、竹宮さんはお気の毒としか言いようがありません

そして、大泉本は今まで萩尾さんが竹宮さんに対して行ってきた数々の嫌がらせの集大成みたいなものなのでしょうね。どんなに怪しい言い訳を並べ立てようが、実際は萩尾さん自身がどうしても書かずにはいられなかったのだろうというのは、過去の数々の行動からみて明らかでしょう

ということで、萩尾さんが大泉本を書いた真の意図は

・「私は盗作なんてしていない」と訴えたかった
・「私は竹宮さんのストーカーなんてしていない」と訴えたかった
・竹宮さんが推進する(?)大泉サロン伝説をぶっ壊したかった
・自分がいかにひどい仕打ちをうけたかを通じて、竹宮さんの真の姿(?)を暴きたかった

といったあたりに集約されるのかなと思っています

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