いちごつみ㉚2023(志賀玲太・橋爪志保)
2023年の1月に、志賀玲太さんと作ったフリーペーパー「いちごつみ㉚」のデータを公開します。本フリーペーパーは、2023年1月文学フリマ京都の「のど笛」ブースで委託配布、2023年5月文学フリマ東京の「ジングル」ブースで配布されたものと同じ内容です。
「いちごつみ」とは、相手が作った短歌から一語とって歌を作り、それを繋げていくあそびのことです。
以下のダウンロードボタンから、PDFをダウンロードしてお楽しみください。また、読み上げ機能等でお楽しみいただいている方向けに、テキストも貼り付けておきます。
以下テキストーーーーーーー
いちごつみ㉚ 2023.1.3-14
S:志賀玲太 H:橋爪志保
S 特急を見送ってから鈍行で開く文庫にくすぶる日射し
H 雑踏に背を見送って表情を戻せば笑っていたのに気づく
S 表情はレンタルできると聞きました だから皆似た顔なのですか
H 糸くずを取ってやるのと思い切りつねるのは似た愛の風向き
S 持て余す雪見だいふく正直に生きないわたしがひとまずつねる
H 「正直」と検索すれば出る皆の本音と正直(まさなお)さんのツイート
S 消えてった本音も空に浮かぶようにスマイル座とかわたしが探すよ
H 夕立が洗った道のきらきらは未練のように浮かぶというが
S リハーサル 洗ったシャツは好きなだけはたいてみじめな明日に怯えて
H 好きならば きみはわたしの胸にある小部屋に泥の靴で踏み込め
S 乾燥を待つだけの身でなお清く小部屋に積まれた古い油彩具
H 砂まじる風が抜けてく玄関に古い記憶の横顔がある
S 玄関に立てかけてある祖父の絵の上下が未だわかっていない
H 伝えたいことばかりある魂で二人で黙って見る無題の絵
S たいていの景色は無題 荻窪の電信柱を家で飼いたい
H 人なんて西荻窪の西友の看板くらいのサイズに住める
S 欲張りなぼくら見つめる国中のバーガーキングはやりすぎサイズ
H 生きているから毎日が生曜日(いきようび)せめて両手でできる欲張り
S バンザイの絵文字は両手が嬉しそう 浮ついたままの街でいてくれ
H 金色の画鋲のように文末へ絵文字を刺して文を射止める
S 十日月 金色だから輝けるアップルパイにわたしなります
H きみのことひらがなで呼ぶ星の夜 夜の星 星の夜 輝ける
S 星型のクッキーの角丸くってその優しさで光れと思った
H 優しさと痛みをともに分け合った曲げわっぱです 命のような
S キムチチゲ辛いからって分け合った帰りを襲う雨 雑な雨
H 雑なハグたくさん受けて笑ってるけど信頼の比喩にはしない
S レゴで作られた造花に笑ってるあの子はお手入れ不要のいい子
H 好きな子に好きな子がいてこの街へ鈴カステラをりんりん鳴らす
S 鈴の音は空が凍てつくほどに遠くへ 嫌がったって助けてあげる
H 助けてね扉と窓をとじるまでくすぶる夢に飽き足りるまで
【プロフィール】
・志賀玲太(@Petzvaled)1996年東京生まれ。同人誌「ジングル」所属。WebメディアQuizKnock編集・ライター。
・橋爪志保(@rita_hassy47)1993年京都生まれ。同人誌「羽根と根」「のど笛」「ジングル」所属。歌集に『地上絵』(書肆侃侃房,2021)。
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橋爪と志賀の短歌をもっと読みたい!という方は所属同人誌「ジングル」をぜひよろしくお願いいたします。
また、橋爪の個人歌集は全国の書店または以下リンクからお求めいただけます。
【告知】
現在、志賀と橋爪は新たに「いちごつみ」で短歌を制作中です。発表形態はまだ未定ですが、X(旧ツイッター)などで詳細が決まり次第追って告知いたします。お楽しみに!
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