1分でわかる「ゴシック哲学:幽玄の世界」とは!【RE-CEREBRO】1分で脳を再構成する-EP087
「ゴシック哲学」は、厳密な学問体系として確立されたものではなく、ゴシック文学や建築、美術などに内在する美意識や思想を哲学的に解釈した概念です。
その根底には、中世ヨーロッパのキリスト教的世界観と、近代的な合理主義の台頭に対する反動があります。
光と影、生と死、理性と狂気といった二項対立的な要素を併せ持ち、人間の心の奥底に潜む不安や恐怖、そして神秘的なものへの憧憬を表現します。
幽玄的な世界観でゴシック哲学を語るとすれば、それは「翳りゆく世界の美学」と言えるでしょう。
古城の廃墟、月明かりに照らされた墓地、深い森の奥深く… そこには、生者の世界から隔絶された、静寂と闇に包まれた空間が広がっています。
朽ち果てゆく石造りの建築物、蜘蛛の巣が張ったステンドグラス、風に揺れる蔦の葉… それらは、かつての栄華と、時の流れの無情さを物語っています。
しかし、ゴシック哲学は、単なる滅びの美学ではありません。
闇の中にこそ、真の美しさや深遠な真理が隠されていると考えるのです。
それは、人間の理性では捉えきれない、神秘的な力や、異形の存在への畏敬の念にも通じています。
ゴシック的な幽玄の世界は、私たちに、生と死、光と闇、理性と狂気といった、相反する要素が織りなす世界の複雑さを認識させます。
そして、それらを受け入れることで、人間の存在の深淵へと迫っていくことができるのです。
参考文献:
* ゴシック建築とスコラ学 (ちくま学芸文庫)
* ゴシックの本質 - みすず書房