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読書記録「娘について」

作家は、キム・ヘジン。

1983年生まれ。2012年東亜日報新春文芸当選作「チキン・ラン」で文壇入りし、2013年長編小説『中央駅』で第5回中央長編文学賞を、2018年長編小説『娘について』で第36回シン・ドンヨプ文学賞を受賞した。その他の作品に、短編小説『オビー』、長編小説『九番の仕事』、中編小説『火と私の自叙伝』などがある。

https://www.chikumashobo.co.jp/author/006666/

これまでに読んだことのない作家だったので、ジャケットというか表紙で選んでみた。
個人的には、日本の本屋大賞(翻訳部門)受賞作、韓国で話題になった作品、好きな作家の別の作品、世代の近い作家・・を読んでいるのだけれど、いずれにも当てはまらないときには、表紙で選んでみる。まあ、日本の作品もそうだけどね。

これは長編小説と呼ばれる分野で、日本の長編・・に比べるとだいぶあっさりしているように感じる。

母と娘の関係は、どこかのタイミングで、守る・見守る側と守られる・見守られる側が逆転する。
私の場合は、母の晩年、本当に一、二年しかなかったけれど、幼児期の完全に見守られる立場から、反抗期を経て、同じ同性として理解が深まり、反面教師となったり同化したり、そして、お互いが社会人となってしばらく経つと、どこかで娘が見守る立場になっていくのではないかと思う。

この母娘も、強弱関係と併せて変化していく。母は、特に介護施設で勤務していることもあり、自分や娘が将来どれだけ弱くなっていくかを知っている。そんな中で、娘の恋人が同性ということを知り、手塩にかけた娘が職場で揉めていることを知る。
母は、自分の育て方がよかったのか悪かったのか、「普通」を求める考え方が欲張りなのか、娘はいつからこうなってしまったのか、そう思い詰めるうちに、日常が変化していく。
大きな変化はつまり、娘に止めてほしい行動を、自分も重ねてしまうこと、きっといつか、いつでも起きてしまう。

後半の次の一節、私にも思い当たる節がある。

とても深い眠りから覚めたら、全て噓だったことになっていればいいのに。すべて元通りになっていればいいのに。

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