菊山宰

身体は男性、それ以外は女性性に魅せられ、在りたい自分像は品のある無性。細部を省けば「心は女性」と言うのが伝わりやすいかもしれない。

菊山宰

身体は男性、それ以外は女性性に魅せられ、在りたい自分像は品のある無性。細部を省けば「心は女性」と言うのが伝わりやすいかもしれない。

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思春を熟すエンドロール

幼少から反抗、初めての死と生まれ変わり 二人目の自分と生きる 恋に死 自らの裸を恥じて再生 数多の片恋 衣が朽ち落ちていく、歩く様 芸術と知らずに魅せられ、芸術と成していく キスの味を思い出せず、感触に蝕まれ自涜 快楽が永遠と信じる夜 己の形も見れなくなって、脳内花色 友の手と大人の背 肉を齧る 魚の骨を探す 強制美に死 裸足を見つめ再生 物という垢 己の匂い 芸術を探し、芸術を壊していく 才が無いまま星を追う 観客席が尻を喰う 「私はそちら側に行けるような人では

    • わたしのはだかを、私が撮るのは。

      こだわりもなく、ただ純粋に、単純に、自分の裸を撮りたいと思ったのは何年前だったか、それにきっかけは何だったかしら。絵画で見た肌の美しさだったような、映画で見た幼子の肌だったような、それとももっと複雑な要素が織りなって芽生えたのか。断片的には思い出せるような気もするけれど、捏造も含まれてしまっている気がして断言できない。 自分の撮影のきっかけは定かではないにしろ、ヌードの美しさに魅せられた最初は絵画であることはわかる。 サンドロ・ボッティチェッリの『ヴィーナスの誕生』はもちろ

      • ティーショーツと母の声。

        フローリングの冷たさを裸足で遊び、臀部をさらさら撫でるパジャマのくすぐったさとはまるで内緒話。隣の部屋に住む誰かよりも少しだけお尻が寒い。 勿体無いとわかっていながらも、渋々布団から出ると案の定、眠気はため息をするように去ってしまった。 今日は私以外誰もいないとわかっていながら、当たり前の習慣で鍵を閉める。蓋を開けてパジャマを下ろしても下半身の寒さはそう変わりはしなかった。お尻を飾る蝶もずらし、体温ごと便座へ預ける。瞼を閉じて生理現象の快楽を感じながらも、睡眠時間と断片的な

        • ガス抜記。

          お口から出た言葉のどれが真実に近くて、どれが取り繕うために縫い合わされた言葉なのか。自分へ向けられた言葉もそうだけれど、他人の対話を聞いたりする上で探りながら聞いてみると、どれくらい諦めが混じったメッセージなのだろうと、一歩下がった状態で冷静に掬い上げようとすることができる気がした。それでも掬い上げた意図は水のようにさらさら落ちてしまう。たとえ落ちてしまわなくとも虚像の塊、その人の別人格を作っただけに過ぎないのではないか。 だから私は「誰か」である貴方に虚像を握って欲しくなく

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        • 16本
        • エッセイ
          45本
        • 1本

        記事

          +3

          絵(ヌードアート)を描きました。

          絵(ヌードアート)を描きました。

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          皺と太陽の狭間

          午前十一時、晴れた日の窓 この柔い光に似た微笑みという顔が 私の中にも存在しているのかしら 鏡は私に反抗している 名前も性格も家族構成も知っている あの人より 数秒間しか知らない人間の顔の方が 鮮明に知っている気がする ことがある 人間だ 人間 歯磨き粉の味 喜怒哀楽はなく唇を伸ばす 子供の頃の面影を探している 気恥ずかしさに負けて 大人の顔 空腹が財布に手を伸ばし お母さんの手料理は夢に閉ざされた 十三時を針が追い越している はしゃぐ予定がないまま 脚のだるさだけが

          皺と太陽の狭間

          大人五歳と靴。

          寒ささえ感じる涼しさの到来に不思議な懐かしさを覚えるのは今年に限ったことではない。十月に生まれた私だから秋の匂いに敏感なのか、夏が終わった瞬間の外気の匂いは鼻をするりと潜り、全身に心地よく浸透する。波のない水面にインクを一滴落とした画のように美しく心は舞うが、感触のない冷たい羽毛が包んでくれたと錯覚するほど秋は優しく訪れる。 当月の六日を迎える二日ほど前の、二冊の文芸書を買って書店から出た瞬間のあの匂いは忘れらない。 私事ではございますが、誕生日を迎え二十五になりました。欲

          大人五歳と靴。

          バニラアイスの上で足も尻も沈んだけど。

          赤信号は危ない。 音の強弱が激しくないが穏やかすぎないジャズの雰囲気の音楽が、落ち着いた男性の歌声に重なって心地いい。まだ楽曲名もほとんど覚えていない最近知ったばかりのアーティストのプレイリストは、思考を巡らせるのには丁度いい。言葉がすっと脳に入ってきてしまうと思考が簡単に遮られてしまう不器用な頭で、そんな自分がもどかしい時も多々あるけれど、臓器が溶け出してしまうほどうっとり独りに浸ることが好きな自分の感受性の繊細さは愛している。 ブレーキペダルに乗った足と、背もたれに密

          バニラアイスの上で足も尻も沈んだけど。

          ドライヤーマイク。

          シャワーヘッドとドライヤーに録音機能が搭載されていたとすれば、アカペラで歌っていた時間はカラオケで歌っている時間を遥かに越えるに違いない。幼い頃から私の歌声を知っている家族よりも、長い付き合いの友人よりも、鏡の横に置いてる歯ブラシと浴室内のシャンプーの方が、私の歌声の魅力を一番知っているのではないかしら。 すれ違う他人の生活を覗き見ることは叶わないので、一人で過ごす姿のだらしなさを想像することは容易ではないけれど、きっとあの素敵なスカートをお召しになっているご婦人も、常に色

          ドライヤーマイク。

          砂時計みたいに歌う散文。

          十七時を回った瞬間、タイヤも急くように回っていた。 太陽が私たちの足の下までじりじり落ちていく。この黄金色に感じる寂しさと懐かしさは、きっと一生消えることはないのだと思う。これは、子供時代が楽しかった証なのでしょうから、こちらから頭を下げてでも一生消えないでほしい感覚。 夜が明けたら 浅川マキの歌声が車内の空気を震わせている。こんなに美しい夕暮れ前に、絶妙に溶け合わない歌詞。けれども曲を変えたいと思えないのは、彼女の歌声が私の心にだけ溶けてくれているからだ。 夜が明けた

          砂時計みたいに歌う散文。

          幽体離脱ができなくてよかった。

          羽根がもう駄目らしい。自分でもわかっているはずなのに、羽ばたかせることをやめない純情さに目が離せないどころか、脳の一部を抉られた気分で見ていた。 虫が苦手な大きな理由は羽根である。外に出ている羽根の模様、羽音、そのどれもに拒絶している。そう、夕方の鐘の音までが楽園だった幼少期にカブトムシがさわれたのもそれが理由だと思う。セミやトンボももちろん近寄りがたいけれど、私の視線を独り占めしたその種類が特に駄目だった。蛾だ。 反射的に走り出してしまうほど苦手なその生き物に、自分の残

          幽体離脱ができなくてよかった。

          私は私でしかないのかしら。

          なぜ、私は私でしかないのかしら。 なぜ、私はこの身体から離れられないのかしら。 なぜ、皆は当たり前に疑念を抱かずそれを全うできているのかしら。 菊山宰を置いてしまうと恥ずかしい気がするので、ここは治姫という人間が妄想していることにしよう。 雨が上がったので、どうしようもない嫌悪を抱えながら濡れた道を散歩している。濡れた木を見て立ち止まった治姫が耽ったのである。 雨上がり、木の葉に乗った水滴が人々とし、その一粒が私とする。それぞれ大きさは異なれど空から生まれた水滴であると自

          私は私でしかないのかしら。

          夏を、する。

          カシュッ。CMに採用されそうな気持ちのいい音を予想して、引っ掛けた指が急くように鳴らした音は、カキッ。泡が少量フライング。焦って唇を尖らせ迎えに行く。瞬く間の悲しみは苦味によって一瞬で上書きされる。 「おいっし...」 やっぱり今はCMの撮影中なのではなかろうか。流れる汗も嫌ではないし、むしろビールの美味しさを引き立てる脇役に昇格している。もっと喉を鳴らして、伝う汗を感じたい。美味しい、美味しい。喉が痺れる。 さっきまでの暑さにも感謝しなくては。帰路で浴びる灼熱は地獄を

          夏を、する。

          一輪に静寂と母性

          枝のゆく方に咲くのか 咲く方へ枝が迎えるのか 真理は根だけが知っていて 花瓶と一緒になった夜 内緒話で打ち明ける 嬉しそうに笑いながら 悲しそうに涙を溜めるんだ 「どこで咲いているのが綺麗なのかしら」 頷くこともできない花瓶に 同情している私が一番に涙を溢してはいけない 「お前は今が美しいよ」と 言ってはいけない 何も言わず じっと、じっと、穏やかに 不気味なほどに見つめてごらん 男か 女か などの無意味さを消してくれる 花弁と毛先の間に 無限

          一輪に静寂と母性

          美しい言葉選び、美しい表現。そう言っていただけることが年々多くなってきて嬉しい限りです。自分が思う美しさを美しいと言っていただけるのは、手のひらを表にしてじっと魅せているところへ、読者様が手のひらを重ねてくださったような心地なのです。折り紙の何かにでもなってしまいそうです。

          美しい言葉選び、美しい表現。そう言っていただけることが年々多くなってきて嬉しい限りです。自分が思う美しさを美しいと言っていただけるのは、手のひらを表にしてじっと魅せているところへ、読者様が手のひらを重ねてくださったような心地なのです。折り紙の何かにでもなってしまいそうです。

          否定する恐ろしさがわからない人間がわからない非人間。

          「こんなこと言いたくないんだけど」 「別にディスるわけじゃないんだけど」 これを前置きにする言葉はずるい。そう思うなら言わなければいいと思ってしまう。 これらは水平思考をする前に声に出てしまっていると、私は思うんです。常に自分から湧き出す選択を「〜かもしれない」と自分で打ち切れる人はかなり少ない。と私には見える。感情にコントロールされすぎているとも言えるかもしれない。 あー...みっともない。つい頭の中で漏れてしまう。 「いや、でもさ」 「いや違う」 これが反射的に出

          否定する恐ろしさがわからない人間がわからない非人間。