頭頂葉損傷が手の機能に及ぼす影響
以前私の担当していた方で、髄膜腫術後で頭頂葉から補足運動野の髄膜腫を除去した方をフォローで入らさせて頂きました。
【理学療法評価】
感覚障害:表在深部共に軽度鈍麻
運動:右片麻痺 BRSⅤ-Ⅴ〜Ⅵ-Ⅵ
認知機能:問題なし
高次脳:運動性失語、理解は短文レベルは可能
HOPE:右手で箸が持ちたい、包丁を使えるようになりたい
『到達運動(リーチ)』『把持運動(手操作)』に分け考えましたが、到達運動時に代償が入り、肩の外転や肩甲帯の挙上を伴いリーチするため、緊張が上がってしまったり細かい操作になると手が固くなり箸が使えない症例でした。その疲労もあり、ある程度箸の操作は可能でしたが、3食箸を使うのは疲れて難しい状態でした。
【頭頂葉とリーチ】
主に関わるのは下記の2点と言われています。
①腹側経路=what
②背側経路=where.how
背側経路は空間位置の認知のみならず運動制御にも関わっている。特に把握運動の制御に関わる。
【到達運動と手操作運動】
①到達運動
背側経路の頭頂葉で背側・内側が関与(MIP,V6a,7m,VIP)
②手操作運動
頭頂葉の外側、つまり頭頂間溝にあるAIP,PF野が関与
【頭頂葉の各部位の機能】
●頭頂葉
・CIP野:
頭頂間溝の後方にあり、平面や軸の3次元的な傾きに選択性を示す
・AIP野:
視覚運動型:暗闇で視覚情報なしでは少し反応を示す
視覚優位型: 視覚情報を元に反応、暗闇で手を動かしても反応しない
運動優位型:物体には反応せず、運動で反応を示す
F5からの情報と出された指令を元に自己の運動のモニターを行う
MIP野:
到達運動に先行して活動、多関節や皮膚の刺激で応答
VIP野:
手の届く範囲の身体部分中心座標を表現
両手、身体両側の統合を担う(body sbhma)
●前頭葉
F5:
物体の3次元的な特徴に基づいた運動のプログラムの選択が行われる
【まとめ】
本症例では手操作はCTから大きく障害されていないと予想されました。
到達運動に関する空間的座標のズレ(VIP)や到達運動時にMIP野が先行して活動したないため到達運動前の準備段階が行えていない影響もあるのではないかと考えられます。
勿論、補足運動野も損傷されているため体幹機能の低下(pAPA's)などもあり体幹-肩甲帯が安定しない事や手の運動麻痺、手の可動性の低下も影響しています。
目に見える運動機能だけでなく、見えない脳機能の事も考えつつ目の前の患者さんを良くしていく必要があると思いました。
【参考文献】
・手操作運動のための物体と手の脳内表現
・タッチの大脳メカニズム
アドバイスや何か意見があれば是非お願いします‼︎