脳卒中片麻痺患者の感覚障害と運動機能
視床出血で運動機能は良いが、感覚障害が重度の患者を治療する際
これはどこまで運動機能が影響しているのだろう?
感覚障害の影響はどの程度なんだろう?
感覚障害は運動にどのような影響を及ぼすのだろう?
と疑問を持ったため調べてみました。
ちなみに、私の担当の症例は外側腹側核〜前腹側核群が主に障害されています。
「脳卒中片麻痺患者における体性感覚障害が運動機能に及ぼす影響」
金子文成先生,PTジャーナル・第48巻9号 2014年9月
簡単に基礎から(^ ^)
○体性感覚(somatosensory)
・皮膚感覚
・深部感覚
体性感覚のうち運動に関連する感覚は運動感覚(固有感覚)という。
○運動感覚
①関節位置及び四肢または体幹の動きなどの感覚
②努力感、筋張力、重量、スティフネスなどの筋出力に関連した感覚
③筋収縮のタイミングに関する感覚
④姿勢及び身体図式の大きさ
などから構成されています。
○体性感覚機能と運動機能との関係
1.体性感覚遮断による運動への影響
体性感覚を遮断した場合に運動へ及ぶ影響として、以下のような事が分かっている。
1)運動感覚を遮断しても単純な筋出力や関節運動は可能
2)運動感覚の遮断により複数関節間の非協調が起こる
3)運動方向、手の予期成形(preshaping)などの正確性が低下
4)歩行は可能であるが、不規則で非協調となる
5)運動中の環境への適応が障害
私の担当の症例も、協調性が低下し手の予期形成がうまく起こらず協調性が低下しています…
ちなみに予期形成とは、
コップを掴む際、掴む前から物の形に合わせて手の形を作っておく事です。
感覚障害の影響が強い方は、学習も進みにくい印象です。学習に関しても載っていました。
2.感覚系と運動系の統合と運動学習
一次体性感覚野を実験的に除去されたサルでは、すでに習得された動作のパフォーマンスはほとんど低下しないにも関わらず、過去に体験していない新規課題の学習を遂行する速度が遅くなる。
これは体性感覚野から運動野への皮質–皮質間投射が新しい運動スキルの学習に重要な役割を果たしていることを示している。
3.体性感覚機能障害と回復
Connellらの報告では全ての身体部位及びモダリティに関して感覚機能障害は初期と比較して6ヶ月時点において回復している傾向にあるものの、歌詞における触覚は回復が統計学的に有意ではなかったとしている。
回復期間については上肢における触覚及び立体認知は4ヶ月までに大きく回復する。それに対して固有感覚は6ヶ月を過ぎても回復が継続されていた。
《まとめ》
感覚障害の影響で,協調性や手の予期形成(preshaping)などが障害される事で動作を円滑に行うことができなくなる。また、新しい環境への適応・学習が難しいため、動作の学習を行う際はより時間をかけ学習を促していく必要があると考えられる。予後に関しては固有感覚は6ヶ月を過ぎても回復が期待されているため、回復期から生活期へとリハビリを繋ぎ患者さんの支援をしていく必要があると感じた。