コンプレックスとアイデンティティ
初めて顔に化粧品を塗ったのは小学5年生の時だった。
当時大好きだった男の子に、
目の下のクマをからかわれて「はずかしくてもう学校に行きたくない」という私に
母が「こうすれば目立たないよ☺️」と目の下にちょんちょんとファンデーションを塗ってくれた。
大してクマが隠れたわけではなかったけれど、
ちょんと塗ってくれたそれは、わたしに絶大なパワーを与えてくれた。
なにより、私の気持ちを汲んで何も細かいことも聞かずに大人の使う特別な道具をわたしに使ってくれた母の愛情が嬉しかった。
私の家族はいつも悩みに寄り添ってくれた。
私はひどいワキガだが、それをコンプレックスとは思っていない。
むしろ「ワキガのオンティーヌ」にアイデンティティの重きを置いている。
それもやっぱり家族が私のワキガを認め寄り添ってくれたことが大きい。
私のワキが本格的に臭くなりはじめ
市販の一般的なものでは効かなくなり始めた頃
一緒によく効くデオドラントを研究してくれた。
ワキガ手術のこともたくさん調べてくれた。
それは本当に本当にありがたくて
コンプレックスだったはずが
ずっと向き合ってるうちに私の大事な一部として受け止めることができた。
高校に入ると大切な友達も味方でいてくれた。
多感な時期でまたクマを気にし出した私は何千回も友達に聞いた。
「今日はクマひどくない?!」
本当に鬱陶しかったと思う。
でも彼女はいつもこう言ってくれた。
「あなたが気になるなら何万回聞いてもいいんだよ。私は毎回、気にならないよ、魅力的だよて答えるからね」
もちろん、クマがひどいときはハッキリ言ってくれた。
誕生日には高校生には高いハイブランドのコンシーラーをプレゼントしてくれた。
クマと向き合ってきたから、スキンケアにも詳しくなった。
デオドラントを極めたり、スキンケアするのが楽しくて仕方がなかった。
いつしか友達が私にデオドラントやスキンケアについて聞いてくれるようになった。
コンプレックスはすっかり「わたし」を構成するアイデンティティとなった。
悩みを一人で抱え込んでいたら、きっとこうはならなかった。
周りの人が悩みを受け止めてくれたから、私も受け止められた。
今。
私のTwitterDMにはワキガや多汗、見た目の悩みを保護者の方にわかってもらえないとか、言えない。というお子さん側の悲痛な声が届くことがある。
母世代になったからこそ、伝えたい。
自分の子供の悩みって聞くだけでも辛い。
可愛いあまり「気にすることない、大したことない!」とわざと軽く終わらせることもあるかもしれない。
もしくは「可愛い見た目の何が不満なの?」と思ったりするかもしれない。
でもどうか一言目は受け止めてあげて欲しい。
コンプレックスがアイデンティティになった女はそう思うのだ。
落ち込んだりもしたけれど、私は今日もワキガです。