歴史香る世界のスパイス料理 第5回中世のスパイス香るドリンク - スパイス航路に導かれ <了>
本記事は、雑誌『小原流挿花』2018年10月号に寄稿した記事を追記再構築してnoteに投稿したものです。当時は4ページで5品の料理を紹介しましたが、noteではボリュームがあるので、全5回としました。その第5回です。
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スパイスとドリンクの“おいしい”関係
中世の飲み物にスパイスが関連しているものがあります。その名も「ヒポクラテスの袖」。中世スパイス入り赤ワインで今のグリューワインに近いです。この名前は紀元前4世紀の古代ギリシアの医学者ヒポクラテスの袖の状態が、ワインをベースにシナモンを中心としたスパイスを入れて漬け込む際に使われた布袋(フィルター)に似ているところからつけられています。沸騰した赤ワインにジンジャー、シナモンスティック、カルダモン、砂糖を鍋に入れてかき混ぜ、最後にレモンを絞って完成です。
ノンアルコールジュースが世に登場してきたのは今から200~300年です。それまで果汁はジュースではなく、スパイスと共にソースやドレッシングとして振舞われていました。たとえば、1530年頃に開催されたミラノ大司教の晩さん会ではオレンジを使った料理が出されました。料理を引き立てるためにオレンジを供したわけです。ここでは、砂糖とシナモンで味付けしたオレンジのフライ、コショウとオレンジのソースを添えた牡蠣などです。スパイス入りワインもあることですので、オレンジソースをスパイス入りジュースに見立てて飲むことは出来そうです。
オレンジジュース、シナモン、砂糖、コショウ、最後にレモン汁をふりかけて完成です。オレンジ、シナモン、砂糖の甘さにコショウのアクセント、そしてレモンの果汁の酸味がほどよいルネサンスの知恵とも言うべきドリンクを飲むのもいいですね。