遅ればせながら。「悪は存在しない」
観てきました。映画「悪は存在しない」。
今、住んでいる近くで、太陽光発電パネルの設置のために、大規模に山の斜面が切り崩されていて、知り合いから「この映画とリンクするような気がするから観て」と勧められていました。そうでなくても、浜口監督自身が脚本も作り、何を伝えようとしているのか、気になっていました。
前半の導入部分から、林の中を自分が歩いているようなカメラワークと何かが起きそうな音楽、車の後部からガラス越しに見える美しい山の景色・・・映画の中で起きていることを体験しているような不思議な感覚になりました。
長野の自然豊かな場所にグランピング場を設置する計画を進めようとする東京の芸能事務所。一方で、自然の恵みを享受しながら地域で慎ましやかに暮らしてきた人たち。
この設定だけを考えれば、明らかに東京の芸能事務所の人を「悪い人」にしたくなるけれど、そんな単純ではない・・・
住民説明会のシーンがとてもリアルで、参加しているような気分に。「バランスが大切」という言葉に考えさせられ、そして、そのあとのストーリー展開・・・グイグイ引き込まれ、えっ、ここで終わるの・・・と。
映画館を出てからもう5時間は経っているけれど、ずーっと考え続けています。
そう、「悪は存在しない」。
それぞれの立場やバックグラウンドがあって、善か悪か、割り切れないことばかり。それが社会なのかな、割り切れなさを知ることが大人になるということなのかと思うことがあります。
割り切りようのない複雑さの壁にぶつかるたびに、私は「物事の複雑さを知ることが全てのスタート」という言葉を心の中で繰り返してきました。思考停止状態にならないように。ここがスタート地点。やっとスタート地点に立ったんだ。絡んだ糸を解くように、一つずつ丁寧に物事を考えたいです。
追加(2024/05/23)
「悪は存在しない」を観た方と話していて、ラストシーンについて、私と全く異なる捉え方をしていて、そういう視点もあったかと驚きました。
話を聞くほどに、あぁ、そういうことかもしれないと、しっくりくるのです。映画を見終わった後もずっと映画が続いていくこの感覚、これも映画の魅力なのだなと感じました。
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