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モノカキングダム答え合わせ|リクエスト編①【京さん】


まだやってます(笑)

「モノカキングダム」はもう昨年の12月の企画でしたが、未だに過剰考察やってます。
ことばと広告さん、こんなにひっぱってなんかすいません……ありがとうございます。



エントリー作品です。

たまってきたので、マガジンにしました!


先日、モノカキングダム2024の入選作品の8作品の考察が完了しました。

本当に好き勝手に書かせていただいて、ありがとうございました🙇‍♂️

たぶん、全部合わせると4万文字くらいいっています。我ながら狂気を感じます……笑

これを読めば、来年のモノカキングダム対策は完璧(?)かはわかりませんが、本当に勉強になりました。一番得したのは自分です(笑)。時々読み直してます。


今回から、リクエストシリーズです。

実は、京(kyo)さんから、コメントで嬉しいリクエストがありました(もう去年の末ですが……)。


全部行けるって書いてた笑。これはさすがに大風呂敷すぎたw


そんなこと言われたら、うれしくてやってみたくなっちゃうじゃないですか~

ということで、リクエストにお答えして(?)、京さんのこの記事を取り上げます!


選び抜いたのはどのこえ?【京(kyo)さん】



こちらの作品です。いつものように書き出し→中盤→終わりで見ていきたいと思います。

考察すると気がつくのは、普通に読んでいる場合と、考察記事書くぞ~と思って読むのだと、文章の見え方が全く違ってくることです。
普通に読んでいるときに気がつかなかったことに気がつくと、それで二重に楽しめます。

今回考察記事書くぞ~と思って、改めて読んでみるといろいろ気づきがありました。

矛盾するかもしれないですが、「普通の読み」(?)も大事だと思うんですよね。読み手からしたら、一発目の「普通の読み」は、自分が何が大事だと思ったかを把握するチャンスだと思うのです。
これは、「普通の読み」だと、読み終わった後にその文章の一部しか頭に残っていないからだと言えます。
どういうことかというと、読み終わったときに残っている一部が、自分にとって大事だった部分の可能性が極めて高いわけです。
例えば、そのあと読み直して、新たな気づきを得たとしても、最初の「普通の読み」で残っていた一部は、それでもなお大事なわけです。「なんでそれが頭に残ったのか」という問いを立てることができる。

だからこそ、ある意味ですべてを理解しきれていない「普通の読み」も大事だなあって思います。

そんなわけで中身に行ってみますね~



書き出し


言葉を栄養にして、成長していく花の物語。



ある夫婦が花のタネを植えた。
2人でタネを選んで、育てていくはずだったのにー。

選び抜いたのはどのこえ? より

書き出しは「三行で撃つ」。

一発目で、状況理解です。

タネを植えた花の物語。期待値があがるスタートですね。

ただですね、私が書き出しで気になって気になって仕方がなくなってしまうのが、ここです。

育てていくはずだったのにー。

選び抜いたのはどのこえ? より

「だったのにー。」って伸ばしてるように見えてしまうんです(笑)

読むたびにどうしても気になってしまう「だったのにー。」。

いやーツボってしまうんです。ここが、何回読み直してもどうしても気になってしまう。

考察すればするほど、ツボるんです。
自分だったら、たぶん三点リーダ(……)を使ってしまうかもしれない。。それか「繰り返し記号」を2本重ねて「――」かもしれません。

ここが伸ばしに見えることで、私的には、冒頭の読みがちょっとマイルドというか、ライトな印象になりました。
だからこそ最後まで深刻になりすぎずに読むことができた気がします。後述しますが、最後は前向きな気持ちになれる作品なので。

ただ、もし、kyoさんの意図が、そう思わせる意図ではなかったとしたら、一人の読み手の勝手な誤読としてご容赦頂ければ幸いです。


さて、この花のタネ、どんな風に成長していくでしょうか。

最初は、元気にスクスク育っていました。
しかし、すぐ起こる男、よく褒める女の中で、多感に悩んでいる様子が描かれています。

どんな花を咲かせたらいいのか考える日々。
(中略)
『自分なんか価値がないんだ』と、違う意味でその言葉を受け取った。スクスク育っていたのに、急に枯れそうになった。
(中略)
一見嬉しい言葉だったが、買うなと言っていた言葉が、引っかかった。

『ふたりに選ばれて、望まれたわけじゃ無かったのか』と、落ち込んだ。

選び抜いたのはどのこえ? より

価値を否定されてしまう、アイデンティティを否定されるようなことを言われてしまうと、自己肯定って難しくなってしまいますよね。

その逡巡を花に託した—―

この「花」に託すというのが、とても興味深かったです。このストーリーでこういった感情の逡巡を託すとしたら、例えば「子ども」とか「ペット」とかも考えられるかもしれません。じゃなくて、花に託している。

この効果って、例えば、花のこんな特徴にあるのかなと思いました。

・植物であり、コミュニケーションは、男と女のほうから一方的。
・花は受け身。
・うまく育たないと「枯れてしまう」
・でも、そこにも感性はある。だからこそ、夫婦側の声が響く。

「花」の視点になってみると、花にとっての感性は「人間」とか「動物」と違うということに気づきました。
そして、この花がとても多感で、しかも哲学的なレベルの複雑な感情を持っているというのがとても面白かった。

もう少し先をみてみましょう。


中盤①

やがて、夫婦は喧嘩が絶えなくなった。

花を咲かせる前に、男の怒鳴り声で、今にも枯れそうだった。女は、男がいない間、ずっと葉に向かって、男に対する愚痴を言い続けた。苦しかった。逃げたかった。

(中略)

部屋中に響く、汚い言葉の数々。それらを拾って、人喰い花に成長することだってできる。

しかし、花はそうしなかった。このままじゃ本当に枯れると思っていたけれど、生きる意味を考え続けた。

選び抜いたのはどのこえ? より

花にとっても、壮絶な環境だったんですよね。激しく逡巡し、思い悩んでいます。

そして、花は、汚い言葉を拾って成長することもできる、というのが衝撃でした。
そして、でもそうしなかったという選択。

あ、花だからこそ、ここまで深く考えられたのかなという気がしてきます。これが人間だともしかしたらもっと安っぽくなってたのかもしれない。
花に託したからこそ、生きる意味を問いを深めることができたのかもしれない。そう考えると深い気づきでした。

その逡巡の上に、花は、どのような域に到達するのでしょうか。


人を喜ばせるための花ばかり咲かせてきたけれど、ある日、自分が咲かせてみたい花の存在を知った。決して、みんなに喜ばれる花ではなかったが、絶対この花を咲かせたい!と、強く思うようになった。

選び抜いたのはどのこえ? より

ここで、他人を喜ばせるだけでなく、自己肯定の方向に向かう。
これまで、あれ程までに振れ幅大きく逡巡したからこそ、到達した域のように見えます。

花だったからこそ、深く生きる意味を問える——

そんなふうにも思えてきます。



花はこの時、自分にも心の声があることを思い出した。芽だった頃は、自分の声に従い、自由に生きていたはずなのに、いつしか周りの声ばかりに耳を傾け、自分の声を失っていた。

選び抜いたのはどのこえ? より

ここで、「声」です。

あ~、この展開ですか~。やられましたわ~(笑)

たぶん、この辺りが1000字行くか行かないかくらいかと思いますが、花に託し、花が深く逡巡し、花が自ら生きる意味を根源から問うたからこそ、自分の声を失っていることに気がつく

胸熱でした……


中盤②

夫婦からひどい言葉ばかりを与えられたこの人生。花は、ずっと、不幸だと思っていた。でも、本当は分かっていた。

(中略)

ひどい言葉の中にも、不器用な愛情が詰まっていることも本当は気付いていた。だからこそ、ここまで生きてこられたのだ。

選び抜いたのはどのこえ? より


「ひどい言葉の中にも、不器用な愛情が詰まっている」

これはひどい言葉を、言われている側にはなかなか言えない言葉です。そして、もし、最初に書いてあったら、安っぽくなってしまいます。花に託し、花が深く逡巡し、花が自ら生きる意味を根源から問うたうえであるからこそ、この言葉は重みを増したのではないでしょうか。

でも、本当に人を喜ばせるためには、まず自分を喜ばせる花を咲かせることが、大切だということも知った。

選び抜いたのはどのこえ? より

「本当に人を喜ばせるにはどうしたらいいのか?」
この問いは、あまりにも根源的すぎて、簡単に答えることが難しそうですが、ここまで読み進めてきたからこそ、驚くほどスッと入ってきます。


「まず自分を喜ばせる花を咲かせることが、大切だ」
この花は、自分の声を失っていて、そのことに気がつきました。だからこそ、まず自分を喜ばせることが大切という境地に達することができたのではないかと思います。
それは、自己中心的とか利己的とは違った意味での、他者を喜ばせるための自己肯定なのではないかと思います。

あ~美しい展開です。圧巻でした。


終わらせ方

この文章の終わりは、こうです。

花は言う。
どの声を栄養として取り入れるかは、いつだって自分次第

選び抜いたのはどのこえ? より

ここまで、展開させての満を持してのこのことば。キラーフレーズです。

私の感じたことをいうと、私は最初、この「花に託す」ということに関して、花はしゃべらない、受け身だ、というモチーフというか印象を持っていました。

だからこそ、ここの「花は言う。」が響きました。

最後に、花は受け身ではなくなった。本当に自身を肯定することができた。美しく、最高到達点まで展開してのフィニッシュでした。

あとは、ここで終わりにしたっていうのが、すごいですね。自分だったらこっから余計なことを2,3行書いてしまいそうです……どちらが正解かはわからないのですが、「書かない」という選択肢を取ることによって読み手に想像させることができる、そうすると実際に書いてある文量以上の、感情を読み手に与えることができる、そんなふうに感じました。


京(kyo)さん、リクエストありがとうございました!
考察してみて、改めて大切なものに気がつかせていただいたような気がします。


そんなわけで、リクエストシリーズ、マイペースでやっていくと思いますので、気が向いたら読んでみていただけると嬉しいです。

ということで、今後どうするかもいつだって自分次第ということで、「今日一日を最高の一日に



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