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バニラとの別れ

「さようなら、バニラ」のつづき

バニラがおさまった箱を車にのせて、すぐ近くの斎場へ向かう。まだ寒い冬の朝。太陽が顔を出してくれていたのが救いだった。雨の寒い日でなくてよかった。斎場の前では、職員の方々が待っていてくれた。バニラは娘に任せて、私は受付へ行く。住所と名前を書きながら、斎場のホームページに「お骨はある程度の日数が経ったら静岡県のお寺へ埋葬される」と書いてあったことを思い出す。受付の方に「静岡県へ行くんですよね」と訊いてみた。そしたら受付の方が、あらって顔をして「去年から変わって七尾市の長齢寺というお寺に行くことなったんですよ」と言う。私はびっくりして泣きだした。この子は七尾から来たんです。七尾に帰るんですね。みたいなことを泣きながら話したと思う。受付の方は、うんうんとうなづいていたと思う。静岡県なんて遠いな〜と思っていたから、本当に驚いて、そしてうれしかった。バニラと散歩した大きな銀杏の木がある場所。私はあの木が好きだった。澄んだ空に凛と立つ、美しい木。黄金の。なつかしく思い出す、かわらない毎日。

いよいよ本当にバニラとお別れの時が来た。職員の方が「お線香を一本あげてください」と言った。お線香をつけて、手を合わせた。もう何がなんだかわからなくなって、その場に心が貼り付いてしまいそうで、お線香の煙が消えぬ間にその場を逃げるように去ってしまった。娘のことも心配だった。娘はバニラのことが本当に大好きだったから。。。

バニラは幸せだっただろうか。もっとしてあげられることはなかったか。足りないことだらけだったのでは、と気持ちがせまってくる。胸のなかが涙でいっぱいになって、たぷたぶと揺れていた。

つづく

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