それぞれの春
週末、金沢から娘が帰ってきていて、回らないお寿司屋さんに行ったり、買い物に行ったりして過ごした。サボテンが欲しいとのことで、近くの花屋さんへ行って、ちょっと変わった形のサボテンを買っていた。名前は「竜神木(リュウジンボク)」神様みたいでいいね、と満足そう。
夕方には、お隣りのママが家に来た。わが家を真ん中に、両隣はとても仲がいい。しばし、外でみんなでおしゃべりした。娘はそのまま、お隣りのママが大切にしている観葉植物たちを見に行き、私は夕飯の用意に取りかかることにした。しばらくして、娘が「お茶してきた~」と帰ってきた。夕方の忙しい時間に長居して大丈夫かと心配していたけど、隣りのママからLINEが来てた。そこにはうれしいメッセージが綴られていた・・・。
それぞれの家に、それぞれのにおいがある。娘は、優しいお隣りの家の、優しいにおいを、体いっぱいにくっつけてニコニコ顔で帰ってきた。なんか家族みたい、うん、家族やね、と言ってうれしそう。
娘よ。いやな波が来たら、上手に乗ろうとしなくていいよ。いやな波も楽しめばいい、面白がればいい。だって私たちは、楽しむために生まれてきたのだし、生まれる前に誰かとそれを約束してきたのだと思うし。
私は100円ショップで買った保冷バッグに、たくさんのおかずを詰めた。娘に持たせるための。きんぴらごぼう、煮玉子、椎茸の佃煮、ハヤシライス、野菜のトマト煮、ししとうとベーコンの串焼き。何でもないおかずばかり。近所のパン屋さんで買ったいろいろなパンも。娘はお風呂も入って、おなかも満たし、小さな車に乗って帰っていった。娘の車は、優しい隣人のにおいや、サボテンのにおいや、私が作ったおかずのにおいを積んで走り出した。夜空にはピカピカの星が光っている。春の星座って何かな・・・。
それぞれの春、うれしいさみしい春のにおい。私は夜のにおいを思いっきり吸いこんだ。このにおいを一生忘れないと思った。
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