エンディングノートの作り方
普段は会社の財務を見ているのですが、仲のいい社長さん限定で3人分のエンディングノートを作りました。
初めはネット上の情報を元に必要項目をリストアップしていました。ところが実際に作ってみると、ネット上の情報だけでは足りないことも多かったです。
これからエンディングノートを作ろうと思っている人、エンディングノートに興味がある人向けに、必要リストを洗い出していきたいと思います。
エンディングノートの目的と対象者
何のためにエンディングノートを作るのか?
何事もゴールが異なると、必要な道筋が異なります。
「何のために」「誰が」によって、エンディングノートの内容も異なってきます。
今回は「30代と40代の経営者」が「残された遺族が困らないようにするため」です。
突然の交通事故や心臓発作その他もし何かがあった時、遺族が困らないように事前に何を用意すればいいか?
本人が死亡した場合、銀行口座は止められてしまって、遺族がお金を引き出すの手間がかかります。
そもそも遺族が、どの銀行に口座を持っているか知らなければ、あるはずのお金が手に入らないことになります。
株式は? 暗号資産は? 投資不動産は?
財産がどこにいくらあるのか、実は本人も正確に把握してなかったりします。
最近はスマホのアプリで銀行口座や資産運用の管理をすることが多いです。
ではスマホの暗証番号は?
アプリと言えば、課金しているサブスクは?
アプリ以外でも月会費を払っているスポーツジムや英会話教室はないか?
本人は生命保険会社の担当者と仲がいいが、家族は担当者の連絡を知っているのか?
もし死んだらお葬式はどうしよう?
家賃とか固定電話代は契約の解約?
何のためにエンディングノートを作るのか?
わざわざ会計士にお金を払ってエンディングノートを作るのです。
自分史や人生の振り返りノートは、ここでの対象外です。
①資産管理のため
何が、どこに、いくらあるのか?
遺族のためもそうですが、まずは自分で財産がどれだけあるか把握しましょう。
②パスワード管理のため
スマホ、パソコン、アプリ、ネットサービス、クレジットカード、銀行口座などなど。
サブスクを洗い出すと、余計なサービスを解約し忘れていることもわかります。
③死亡手続
もし何かあった時にどうするか?
なるべくリアルに考えて、事前にリストアップしましょう。
エンディングノートの保管方法(紙orデータ)
財産リストやパスワードなど、かなり重要な個人情報です。
絶対に外部に漏れてはいけません。
データで保管すると、ハッカーに情報を盗まれるから紙の方がいい!という意見もありますが、私はデータをおすすめします。
無料のパスワード管理アプリでは心配なので、セキュリティがしっかりしている有料版。ちゃんとしたサービスを受けたければ、それなりの金額を払うのは仕方がないです。
エンディングノートは1人では書けない
私もそうでした。
エンディングノートは必要なことは重々承知していたので、長年書こう書こうとは思っていました。しかし、優先事項の高い日々の業務に追われて、エンディングノートは後回しになっていました。
今回、経営者から依頼があったのでようやく重い腰を上げました。
専門家の会計士ですら、この有様です。よっぽど意志の強い人でなければ普通は1人では作れません。
下の方にエンディングノートのリストを載せてますが、この記事を見た人の大半はエンディングノートを書くことはないと思います。
なので、専門家に依頼するか、パートナーや家族と一緒だったら何とか……
会計士に依頼する理由
今回の依頼は、エンディングノートを作るだけではありませんでした。
有料のパスワード管理アプリでエンディングノートを作った後、そのアプリのマスターPWを教えてもらいました。クライアントのマスターPWは、事務所のパスワード管理アプリに保管します。
そして本人は、奥さんや家族、会社の役員に「自分にもし何かあった時にはここに連絡するように」とウチの事務所の連絡先を伝えておいてもらいます。もともと奥さんと子ども、役員と従業員のみなさんとは、お会いしているので話は早かったです。
つまり、もしなにかあった時の事後処理も、依頼内容に含まれていました。電話一本だけしてもらえば、後のことはすべてする。そのためには事前準備が万全でなければいけません。
私は会計士として、普段から会社の会計を見ています。扱っているのは社外秘の重要な秘密ばかりです。
会計士には厳しい守秘義務があるので、絶対に秘密を外部に漏らしません。
弁護士に依頼すると高額の報酬を請求されるし、かといって知らないコンサルに頼むのも怖いし……
もともと経営者と信頼関係があることが大前提ですが、こういった経緯でエンディングノートの作成に携わりました。
リスト結構リストが長いのでおわかりの通り、1人最低でも丸2日はかかりました……
エンディングノートのリスト
【個人情報】
名前
よみがな
生年月日
現住所
本籍地
電話番号
・スマホ
・固定電話
デバイスPW
・スマホ
・PC
・その他
血液型
勤務先・所属法人
名称
役職
持分比率
住所
電話番号
身分証明書のコピー
・運転免許証
・健康保険証
・年金手帳
・パスポート
・印鑑証明書
・マイナンバーカード
マイナンバー(住民基本台帳)PW
署名用電子証明書PW
【保管場所】
・運転免許証
・健康保険証
・年金手帳
・パスポート
・印鑑証明書
・マイナンバーカード
・印鑑
・銀行通帳
・銀行カード
・クレジットカード
・契約書(保険証書・住居の賃貸契約等)
【家族情報】
家族構成(法定相続人)
名前
よみがな
関係
生年月日
電話
住所
勤務先
戸籍謄本のコピー
【生命保険・損害保険】
会社
種類
担当者
担当連絡先
【資産管理】
銀行(通帳・キャッシュカード・印鑑の印影・オンラインID・PW)
電子マネー(PayPay等PW)
株式
証券
暗号資産
不動産(全部事項証明書)
借入金
住宅ローン
教育ローン
その他ローン
車両
船舶
ゴルフ会員権
貴金属
骨董品
ボトルキープ
その他
【信託】
家族信託
ペット信託
【事業管理】
会社
持株比率
事業承継(後継者・M&A)
【パスワード管理】
ログイン・SNS
・ID
・PW
クレジットカード
・カード情報
・オンラインID・PW
【サブスク管理】
名称
使用デバイス
金額(月/年)
契約更新日
【データ管理】
写真・動画・作成データ等
・保存場所
・遺影
【契約管理】
住居の賃貸契約
固定電話
テレビ
NHK
インターネット
水道(水道局)
ガス(ガス会社)
電気(電力会社)
【葬儀】
葬儀会社
・プラン
・金額
・参列者範囲
・喪主
埋葬方法
・永代供養(霊園・寺院):50万円〜
・納骨堂:5万円〜
・樹木葬:5万円〜
・海洋散骨:5万円〜
・宇宙葬:20万円〜
供養プラン
香典返し
四十九日法要
納骨式
本位牌
仏壇
お墓
【訃報】
連絡先
・名前
・よみがな
・関係
・電話
・住所
・勤め先
※第4等親(いとこ)以内・1年以内にLINE連絡した人などでも可
告知方法
・電話
・手紙
・メール
・SNS
・新聞等
【医療】
病院
かかりつけ医
アレルギー
持病
常備薬
【介護】
希望介護スタイル
入居予定の介護施設
終末医療・延命治療の希望
臓器提供の有無
【ペット】
名前
生年月日
性別
健康状態
かかりつけ病院
病歴
性格
好きなペットフード
お気に入りのオモチャ
【専門家手続】
ここから下は必ず専門家に頼む必要のないものもあります。
【死亡時手続】
死亡診断書の受取(病院が発行)
死体検案書の受取(事故死・突然死の場合/警察に連絡)
葬儀社へ連絡(通夜・葬儀式・告別式・火葬)
死亡届の提出(7日以内/役所)(葬儀社)
火葬許可証の受取(役所)(葬儀社)
訃報連絡
香典返しの手配
四十九日法要・納骨式の手配
本位牌・仏壇・お墓の手配
【社会保険労務士手続】
年金受給停止(10日または14日以内)
健康保険の資格喪失届(5日または14日以内)
介護保険資格喪失届(14日以内)
雇用保険受給資格者証の返還(1カ月以内)
国民年金の死亡一時金(12万~32万円)請求(2年以内)
高額医療費の還付申請(2年以内)
埋葬料(5万円)請求(2年以内)
葬祭費(1~7万円)請求(2年以内)
遺族年金(年額79万5000円+子の加算額)の請求(5年以内)
故人の未支給年金の請求(5年以内)
【行政書士手続】
住民票の世帯主変更届(14日以内)
運転免許書の返納
自動車の売却、名義変更、処分(廃車)
パスポート失効
公共料金の名義変更(水道・電気・ガス)
【税理士手続】
所得税の準確定申告・納税(個人事業主or給与年収2000万円超)(4カ月以内)
固定資産税の納税・現所有者申告
相続税の申告・納税(10カ月以内)
【弁護士・司法書士手続】
相続人調査(戸籍謄本類の取得)事前手続可能
遺言書の作成(公正証書遺言の証人2人つき)
遺言書の検認(家庭裁判所)
相続登記(不動産の名義変更)
相続放棄、限定承認の検討と手続き(債務超過の場合)(3カ月以内)
遺産分割(遺言書がない場合)
【財産整理】
銀行の預貯金払い戻し、名義変更(国内・海外)
クレジットカードの利用停止
株式の名義変更
団体信用生命保険の請求手続(住宅ローンがある場合)
生命保険金の受取請求
損害保険の解約・名義変更
契約の解約・名義変更(スマホ・サブスク・会員等)
おわりに
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