季節は変わる 冬になる #0
冷たい風が吹く
冬の道をそぞろ歩く。
今年も、もう終わりだ。
ため息をつく
ため息をつくため
顔を上げると同時
そこらの店の店頭に
ゴテゴテと飾り付けられた
イルミネーションが目に入る。
あぁ、そうか。もうすぐ…
私には関係のないクリスマスと
私に関係ない年の瀬
あと正月がやって来る。
関係ある人々が湧き立つ通りに
場違いな自分を見るのは
今に始まった事ではない。
もう何度目だ。
ため息をつく
ため息をついて
トレンチコートのポケットに
乱暴に手を突っ込むと
なけなしの小銭とお札が
ジャラジャラと出てきたので
まとめて募金箱にくれてやる。
要求される前に施しをするのが
一般的に善行と云われるが
この場合、それには該当しないし
大体ただのヤケっぱちの散財だ。
結果えらい感謝されたが
私は感謝される様な人間ではない。
この間の事だ。
酒で酔っ払った挙句
人生において何度目か分からない
失態をまたやらかした。
どうしようもない阿呆だ。
反省や成長など
出来て当然の事が
出来てないからこうして繰り返す。
ため息をつくハメになる。
そんな自分を見るのは
もう何度目なんだ。
向上心があるなら
形にしなければ。
向上心は、あるだけでは
意味を成さないんだ。
見えないんだから。
ため息
いい加減そろそろ
ため息も在庫切れだ。
歳末の繁華街
カラフルな電飾
不景気な思考
犬の鳴き声
どこかで犬が
ワンワン吠えている声が聞こえる。
その吠え方が、何だか馬鹿みたいで
可愛いなと思う半面
馬鹿でも愛されるなんて
羨ましいなとも思う。
そんな人間だっているのだろう。
残念ながら、なれないけれど。
少し語弊があるため補足すると
なろうとして
なれるだけの器が無いのだ。
人間には向き、不向きがある。
あとは頭の良さが足りない。
絶望的に。
社会や実生活においての
頭の良さとは学歴ではない。
例えば、当たり前の事が
当たり前に出来るという
最低ラインから
如何に発展させ
どこまで発想を飛ばせるか。
その伸び代であったり
または、当たり前の事を
当たり前に繰り返す精度の高さを
実用的な頭の良さと呼んで
差し支えないと思うが…
まどろっこしいので
もっと簡潔に言おう。
上手く生きられる奴が
頭の良い奴なのだ。
そういった意味でも
救いようもなく出来損ないで
人間の屑。
頭が痛い。
頭が悪いし、痛い。
インナージャケットのポケットに
まだ若干の小銭が残っていたので
煙草を買うためコンビニへと入る。
店内には、懐かしい歌手の曲が
アレンジされたものが流れている
クリスマスを象徴したような旋律。
王道のコード進行。
季節感が溢れる
まさに名曲というやつだ。
そして、それは特に
私の心の中に
何の感慨も生まない。
ああいった音楽に
心が躍らなくなったのは
一体いつからだろうか。
自分でもビックリするぐらい
何も響かなくて
感動もない。
だからしばらく気付かなかった。
あの曲が
クリスマスを表現している事に。
あぁ、そうだ。
もう終わりだったな。
今年も。
そうか。
ため息
吸い終わった方の煙草の箱を
ゴミ箱に捨てる。
私は自分を屑だと思っている。
自虐などではない。
本当に屑なのだ。
まるで使えない
木偶の坊ならまだしも
生きているだけで
迷惑をかけ続ける。
しかも、それを自覚しつつ
一向に直っていかない。
マトモじゃない。
言い方は悪いけど
屑は屑なりの生き方があって
屑には屑なりの幸せの形がある
と思う。
そんな風に言うと
それは甘えだと怒られる事は
重々、承知してはいるが
きっとある。
その形はもちろん普通ではなくて
惨めなものだ。
だが、それすらも遠い。
普通
フツウ。ふつう。
口にするのは簡単だが
もはや雲の上にある
概念のような存在。
確かめようもない
お伽の世界での話。
だから私の口にするその普通が
誰にとっての
何と同義なのか知らない。
そんな事は、ただの言い訳で
お前は逃げているだけだと
普通の人なら思うかも知れない。
だけど、どうしても
普通になれない辛さ
歯がゆさは
屑にしか分からなくて
議論にならない。
しかも口応えした所で
言いくるめられてしまうのは
分かっているから
不通で…
まぁ、つまり、そういう事だ。
雨が降ってきた。
ところで傘がない。
買う金は募金箱の中。
さっきの施しはキャンセルだとか
今さら返せなどとはいくまい。
金で買えない物は沢山あるが
買える物すら手に入らない。
それが現状で
濡れながら歩く。
なるべくなら
人に迷惑はかけたくない。
人様に迷惑をかけておいて
そんな事を勝手に思う。
我ながら身勝手すぎると思う。
でも普通じゃなくてもいいから
首を締めるのは自分だけにしたい。
人は一人じゃ生きられないけど
首を吊る時は一人だ。
そう思っているからこそ
自覚してきたつもりだし
この度また
迷惑をかけてしまったのは
まだまだその自覚が
足りないという事だろう。
そしてこんな胸糞悪い文章を書き
読む人の気を悪くし
またリアルタイムで
迷惑をかけるのだから
全く世話がない。
こんな文章を書かなければ
心のバランスすら保てない
自分自身に、ため息が出る。
これは何度目だっけ?
そんなのは、もう分からないし
どうでもいい。
別に同情が欲しい訳じゃない。
唇を強く強く噛む。
そういえば電車賃もない
こんな私にも
何かと気にかけてくれたり
優しい言葉をかけて下さる
稀有な方達がいて
本当に感謝しかないのだが
私は屑だから
そんな優しさの上に
すぐ胡座をかいてしまうから
たまに戒めるために
自分自身を罰して
忘れない様しなければならない。
尊い愛を。
血の味がする。
寒い。
気温も
己のやっている事も。
まぁいいや。
歩こう。
口から血を流しながら
冬の繁華街を行く
来年は、来年こそは
もう少しだけマトモになるんだ。
強く生きるんだ。
強く、強く…
そんな身勝手な妄想と
精一杯の作り笑顔
顔を上げれば
ショーウィンドウに映る
悪魔
2014年末
メリークリスマス
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