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2024年8月31日

明後日から関東労災病院の口腔外科に入院することになっている。
地元の歯医者へ虫歯の治療で行った際レントゲンを撮ったところ、左下の親知らずの下の歯茎の中に割りと大きめの膿が見つかり
良性か悪性か分からないけど放っておくと骨までいってしまうので早めに摘出した方がよいとの事で手術する運びになった。
自覚症状は全くなく痛みも無いのだけど、どうも既に神経に触れているらしく
痺れを感じませんかと歯医者から言われたら、そういえばそんな気もしてくる。
我ながら自分の身体に無頓着すぎると思うが緊急性を要するような痛みでもない限り
そんなものだろうと思うし、まぁ普通なんじゃないか。
ついては外科手術なので歯医者ではなく大きな病院に行く必要があり紹介状を書いてもらい
その後は色々と検査をして会社に一週間の休暇を申請して、いよいよ明後日から二泊三日の入院になった。

で、入院となると酒も飲めないし手術の後は頬がパンパンに腫れて暫くマトモな食事ができないらしく好きな物を食って酒も呑んでおきたいので今日は川崎にホテルをとった。
とは言えただ居酒屋でクダを巻くだけも芸がないので、まずは一杯ひっかけたあと
この夏に公開予定で一番気になっていた『箱男』という映画を観に行くことにした。
箱男は阿部公房の小説が原作で…って読んだ事のない人に向けて書いても仕様がないので割愛するが
ストーリーは原作に全然、忠実ではなく箱男の設定を使って自由に作った映画という感じだ。
世界中で翻訳されて読まれている阿部公房の作品を今更まんま映像にしても仕様がないとも思うし
カフカの『変身』もそうだけど、まんま巨大な蜘蛛をCGで作られても面白くないように
あれは読んだ人のイメージでこそ完結されるものだと思うから悪くなかった。
途中、所々で挿しこまれるお色気に需要があるかは謎だが映画の中で特に感銘を受けたのは書く描写のシーン。箱男=箱+書くで成立するというのは非常に斬新な解釈だと思う。
個人的に今回の映画の中で最も冴えた監督の発明だと言って良い。
昨今のSNS流行りも、2ちゃんねるの時代もそうだが我々は未だに書く事がトレンドなのだ。
名だたる小説家もロックバンドも、遡れば原始時代に言葉を生み出してからずっと人間は言葉を紡ぐ事を流行にしてきた。
だから箱男の閉じた世界にも自分と言葉が必要なのだ。自分と言葉がセットで世界になる。
映画の中で出てくる偽箱男が本物になるために箱男が持っているノートを盗むシーンがまさにそれで、彼はそれを全て「私より私らしく」書き換え最後にはノートを捨てていなくなる。
「本物になった」と言い。
そうきっと彼は彼の世界の中での言語を手に入れて、新しい世界で続きを書くのだろう。
だから古い世界のノートは必要なくなったのだ。

言葉それこそが自分にとっての世界であるし、自分と他者を繋ぐツールであるなら書くという行為は世界の創造と言える。
話すというのには相手が必要で、それは伝達という結果を前提としたコミュニケーションだが
書くというのは自らの世界を作ることなのだ。
何なら相手も要らないし、読めなくても書いた紙を燃やしてもよくて結果ではなく書くという行為自体が大事なのだ。
その全てが頭の中だけで出来たら、もしかしたらそれこそが本物の到達点なのかも知れない。
それは最早、悟りの境地なのか。まぁいいや。
ともかくも明後日から関東労災病院に入院することになっている。

それまでは好きな物を食って、酒を呑んで過ごそう。


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