若さを生かす起業、経験を生かす起業
渋谷原宿エリアのタピオカ店のおおさには呆れますが、それと張るくらいに、世の中には、成功したビジネスマンの話がたくさんあります。
起業ノウハウ本も、必要以上にゴロゴロしています。
僕は全くの無名ですし、大してノウハウもないのですが、ネットベンチャーを19年前に起業し、破産の寸前で、逆転エグジットに、なんとか辿りつけた経験があります。
その濃厚な日々は、自分の中に様々な感情と、しこりをのこしました。
長年、この話には、蓋をしていたのですが、思うことありまして、最近、noteに連載として書きのこしてみました。それは、自分による自分への癒しだった。といえるかもしれません。
意図していなかったのですが、読み返してみると、結果的に、これはこれで、わりと珍しい、スタートアップ「ほぼ」失敗の教科書かなと気付きました。
ガチの大失敗をしていたら、振り返る余裕も意欲もないかもしれないですよね。僕らの場合、ギリギリで救われたので、珍しいかなと。(まぁ、四捨五入的なくくりをすれば、失敗なわけですけど)
成功談よりも、失敗談から多くを学べると、よく言うじゃないですか。
それで次は、もう少し踏み込んで、自分で自分の起業がどうだったのか、この「ドットコム起業物語」を、客観的に検証してみるのも、少しは意味があるかも。とおもうようになりました。
検証ポイントとして、ハイライトしたいテーマは、いくつか思い当たりますので、つれづれと、何回かに分けて、書いていきたいとおもいます。
(注:世の中の起業を大きく、技術開発型と、それ以外に分けますと、後者を念頭においてあります。技術開発型はまた全然違った論考になるとかんがえます)
起業検証 1
若さと無知と勢いを活かした起業は、はたしてアリだったのか?
僕は社会人3年目が終わる少し前、せっかく入社した会社を辞めて、起業の準備をはじめました。26歳でした。
若さの勢いって、根拠のない自信。思いこみの強さ。捨てるものの少なさ。ですよね。僕は結婚こそしてたけど、俺がやったら絶対成功する。今やらないと一生後悔する。って真剣に思ってました。はい、真剣に。
ドットコム起業物語 第一話より
実際のところ、サラリーマンからの起業は「勢い」というものがないと、なかなかできません。
あと数年、働いていたら、生活レベルも上がってしまっていたでしょうし、特定業界の慣行や、組織の仕組みに、どんどんハマってしまうので、もっと起業へのハードルは、高くなっていたとおもうんです。
実際、サラリーマンを少しやってから、若くして起業して、ピボットも経営交代もなく、大成功した方は、タピオカ店ほどではないものの、わりと多くいますよね。有名どころでは、CA藤田さん、SMS諸藤さん、Gree田中さんなどが、そのパターンでしょうか。
一方でこの、スタートアップするなら、若いほどいいよね。という話は、ほとんどB2Cの、ネットサービスでの話であり、偏った見方ではないかという指摘もできるとおもいます。
実際に、昨年8月に出た、このHBRの論考は、一つの主張として検討に値するでしょう。オバさん、オッさんの方がイケてると言われて、溜飲を下げ、ハイボールを飲み干した人も、少なくないのではないでしょうか。
確かに、大きなコンシューマー・テクノロジー・レベルでの非連続や(パソコン登場、インターネット登場、iPhone登場とか)、ビジネス面でインパクトある、大きな規制緩和が、なかなか見られないのが、今のご時世。
そうすると、B2Cで、広大な「空き地」を見つけ、ブロックバスター的なサービスをつくるのは、なかなか大変です。
日本の戦後に沢山、世界的なアントレプレナーが産まれたのは、大戦のあと、デカイ空き地が世界中に産まれたから。ベルリンが今、元気なのは、壁が崩れて、デカイ「空き地」ができたからでしょう。
ここでいう「空き地」というのは、先人が居ない領域を意味します。ビジネスチャンスのアナロジーですね。
実際、ベルリンのカルチャー・ホテルチェーン、The Circus Hotelを経営するアンドレアス(40代前半)は、壁崩壊直後の混乱の中、旧東ベルリン側にあった廃墟に不法滞在しながら、アート・コミュニティを作っていたヒッピーです。
ある日、資本家が現れて、金を渡され、アート臭の強い、バジェットトラベラー向けホステルをやり始めた。という具合で、起業家の人生をスタートしています。これはコンセプトとリアル両面での「空き地」を、体現した例でしょう。
いつの時代も、どの国でも、「空き地」が産まれたときには、経験も、しがらみもない、若い人にチャンスが到来して、そこからワクワクするような起業話が生まれているのです。
しかし、実際のところは、そんな空き地には、滅多に巡りあえないのが起業のリアルです。こういう若い人の起業譚には魅力があるので、バズってしまいますから、世の中にそれが多いようにかんじてしまいがち。
というか、そもそも、「デカイ空き地なんて、ないっす」って時期の方が通常モードなんです。そうすると、確かにHBR様がおっしゃるように、必ずしも若い方が起業に有利とは、言えないような気がしますね。
では、私はどうかんがえるか。
こういった年齢議論は、まったく意味がないと思います。はい。
HBRって、かしこい人が読者ターゲットですよね。ちょっとこれ、思惑を感じませんか。
あと、アメリカはシリアル・アントレプレナーや、フリーランサーを経てからの起業が多いので、起業は40代でも、最初に独立を経験したのは、若いころだった。という結論になるかもしれません。やや、ミスリーディングなデータだと思います。
年齢が意味ないなら、「このnote書くなよ、お前」とツッコミたくなりますが、ちょっと、書いておきたいことがありまして。それは、
若い起業家は、それを武器に使うべきだし、
経験がある起業家は、やはり、それを武器に使うべきだ。
徹底的に。
ということです。
意外と、その、年相応の武器ってなんなのか?を、ちゃんと意識して、振り切ってやっていない人が、多いんじゃなかと思うんですよね。ぐっー、と振り切って。
その点で、僕の、前回の起業を検証しますと、情報量じゃなくて、活動量で勝負するべきだったなと思うのです。
ネットワーキングとか、会食がやたらと多かったり、やたら業界ニュースを見ている若い経営者は、経験が乏しいわりに、情報が過多になってしまって、アンバランスになります。
弱みを補ってバランスとろうと思った結果、アンバランスになるという皮肉が、この世の中、とても多い。
ほんと、知りすぎてしまうことの、不幸ってあるんですよ。
周りから自社・自分がどう思われているか。自分のアイデアはどう評価されるか。競合他社がどんな動きをしているのか。そういう、自分がコントロールできないことに、振り回されてしまいます。
株式市場がどうなっているか、資金調達環境がどうか。どこの会社がいくらで買われた。などなど。そんなことを社長が知りすぎても、営業は進みません。プロダクトはよくなりません。
「市場経済で面白いのは、愚かさは、チャンス。ということだ」と言ったのは、Yコンビネータ−を作ったポール・グレアムでしたでしょうか。
堀江さんもよく、「ちょっとバカくらいが起業家にはちょうどいい」と、話していますね。「かしこい」人は、HBRを読んで納得して、終わってしまうのでしょう。
CA藤田さんも、SMS諸藤さんも、目の前のお客様に価値を出すため、日々シャツの袖を捲り上げて、はたらいておられました。時にはダブルヘッダーで会食を済まして、オフィスに戻って、明け方まで、事業に「取っ組んで」いたと聞きます。
Gree田中さんは、やはり深夜をまわっても、ずっとコーディングしてたり、プロダクト改善に取っ組んでいたと聞きます。合コンとかも時にはあったのかとは想像しますが。
なんといっても、知らないことからくる強さ。それと、圧倒的な活動量。それが若い起業の武器なのでしょう。
僕も、ハードワークはしていたつもりでしたが、そこまで、事業そのものに向き合って、突き抜けてやっていなかったので、ダメだったなと思います。
では、オッさん、オバさん起業(35歳過ぎ)の強さとはなんでしょう。おおかた、若い起業の逆でしょうか。
圧倒的な人脈と業界インサイダー的な情報
ある程度の自己資金
活動の質
それらを徹底的に磨き上げる。
中途半端に、業界知識があるとか、応援してくれる友達がいる。じゃ、ダメでしょうね。
あの人が笑うと、カネが動く。と思われるくらいの、実商売に繋がる「意味のある」人脈(金脈といってもいいかも)や、表にでない情報。
あと、シード期からシリーズAくらいまでは、セルフ・ファイナンスできるくらいの手元自己資金があれば、時間が買えます。トライ・エラーが効きます。
例を挙げると、マネックス松本さん、DeNA南場さんなどが、このタイプの武器を生かした起業だったのではないでしょうか。
それから、実は三木谷さんは、若手起業家と言われていましたが、僕はこちらの、オッさん起業だったとみています。
三木谷さんは、楽天の前身であるMDM社を起業した時点で、すでに大物経営者らと、踏み込んだ関係性を持っておられ、わりと手元資金もありました。
内実としてはおっさん起業ですが、外向きには、若手起業家の武器である、活動の量もはんぱなく多かった。だから、あれだけの大成功をされたのだと思います。
いずれにしても、起業家として成功するには、攻めのマインド、強い思い込み、行動力、発想力、人に恵まれること、地頭、あと、あれと、これと。などなど、多くの要素が、年齢関係なく必要なわけです。それらが揃っていたとしても、大成功するかなんて、わかりません。
ただ、少なくとも年相応の闘い方をしないと、失敗の確率は高まるのだろうなと思うので、僕もがんばらなきゃとおもうわけです。
続く
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?