「前澤友作」PIVOT動画 楽しみ方の手引き
今回、映像メディア「PIVOT」にて新番組「LIFE IS」のナビゲーターを務めました、グロービスキャピタルパートナーズの小野壮彦です。
初回放送では、前澤友作さんを特別ゲストにお招きし、ご自宅でリラックスした雰囲気の中でロングインタビューを行いました。この番組は全三部構成というPIVOTさんとしても異例の長さのコンテンツになりました。
さて、前澤さんという強烈にぶっ飛んだ方を題材として、はたして僕ら一般人が何かの学びを得ることは、できるのでしょうか。
このnoteでは、勝手ながらご視聴いただく上でのガイドを書かせていただきました。内容のネタバレはありませんので、是非ご視聴前でも、あとでも、読んでいただければ嬉しく思います。
LIFE ISとは
はじめに、「LIFE IS」という番組について少し説明させていただきます。実は、私もこの番組には企画段階から参加しています。テーマは「現代版の偉人伝」です。
現代日本を少し俯瞰してみると、どの分野でも「分かりやすさ」が求められています。その一方ではビジネスパーソンにとって、分かりやすいロールモデルが不在。という問題に気付かされます。
私が20代のころは雑誌が元気だったのですが、成功した起業家やビジネスパーソンの活躍を伝えるインタビュー記事が今より多かったように思います。
この番組では、そんな現代の中で指標となるべき人物の生き方や価値観に焦点を当てています。具体的には、ハウツーっぽい成功談(What)ではなく、ゲストが何者か(Who)に焦点を当てています。
この、人生を深掘って学びを紡ぎ出す。という作業は少し遠回りに感じるかもしれませんが、メディア対応に長けた成功者から本質を引き出して学びを得るには、これしかないと思っています。
考えをダイレクトに聞いてパワーワードを引き出すようなスタイルのインタビューだと、外向けにデザインされた言葉にどうしてもなりがちですから。
一方で、捉えどころがない話だね。などと感じてしまう方がいるかもしれませんので、楽しむための手引き書みたいなものを書いてみようと思った次第です。
前澤さんの3つの不思議
さて、本題に入ります。
じつは、今回のインタビューでは、大物ゲストを招くにもかかわらず、事前の準備を敢えて行わず、本人との打ち合わせも行いませんでした。
このアプローチは、予定調和を避け、前澤さんの素の姿を引き出すことを目的としました。典型的なインタビューではなく、より本物のやり取りを捉えることで、新鮮で予測不可能な内容を提供したいと考えたのです。
質問する私にとっても、極端な集中力が求められる、スリリングなセッションとなりました。普段は出ない脇汗をかいていたことに気づいたのは、前澤さんのご自宅を出た後です。とはいえ、撮影に臨むにあたっては、頭の中がまったく白紙だったわけではありません。
ご存じない方にあらかじめお伝えしておきますと、私は5年前までZOZO社に在籍し、ゾゾスーツを使ったプライベートブランド事業の立ち上げ責任者として働いた過去があります。その時期は前澤社長もフルスイングでこの新規事業に関わっておられたので、文字通り昼夜を問わず仕事をし、世界中を飛び回りました。
そんな濃密な時間を送った私でも、じつは前澤さんについて常々不思議だなあと思っていたことがあります。いつか聞いてみたいな。と思っていたことは、この三つでした。
繊細なタイプなのに、なぜ厳しい経営の道で成功できたか
好きなことばかりやって、なぜ上手くいくのか
その尽きない意欲はどこからくるのか
これらの謎について、なんらかの答えが見えたらしめたものだな。と思いながら当日の撮影に臨ませていただいたのですが、今回のインタビューを終えて、大変すっきりとしました。みなさんも、ぜひこの3点を気にして、番組をみていただきたいと思うのです。三話すべて見終わっていただくと、きっと答えは得られるのではないかと思います。
以下、具体的な解説を試みました。もしもう少しお時間があれば、お付き合いください!
不思議1 繊細なのに、大経営者
まず一つ目ですが、私がこれまで数多くの起業家や経営者を見てきた中で、前澤さんの経営者人格は特殊です。本当に外れ値の存在。
多くの経営者は、体育会系の気合いと根性を前面に出す「パワープレイ系」か、合理性と功利主義で勝負する「ロジカル系」が主流です。一方で、情熱的な「エモ系」のアプローチをあえて全面に出す経営者も少数いますが、エモ一本足では大きな成功は難しい場合が多いです。
前澤さんについては、メディアで見る華やかな姿とは異なり、実際に一緒に仕事をしてみると、繊細で感受性に富んだ、「クリエイティブ系」の人物だと強く感じます。彼の経営スタイルは、クリエイティブな人格を基盤にその他の要素をまぶしたものです。いわば、珍しいタイプの経営者と言えるでしょう。
えてして、このクリエイティブ系の経営者は、規模の経済と相性が良くありません。しかし前澤さんの場合、ゼロから時価総額一兆円を超える企業を築き上げた訳です。これは明らかに規格外の成果です。
同様のタイプでこれほどの大企業を作り上げた経営者は、ほかに類を見ません。(書籍などの印象から、ひょっとしたらSONY創業者の盛田昭夫さんは似ておられるのかもしれません)果たしてなぜ、彼はそんなことができたのか。それを探ることが私の最初の疑問でした。
不思議2 好きなことばかりで、大きく成功
二つ目の疑問です。
好きなことをやると成功する。ほんとうでしょうか。
一般的にそのように言われていることは認識していますし、否定をするつもりはありません。しかし、好きなことをやることと、「大きな」経済的成功を両立することは、至難の業なのです。(その考察はこちらのnoteを)
多くのケースでは、自分が好きなことは、他の多くの人も好むことが多く、それによって、激しい競争の中に突っ込んでゆく羽目になることがあります。その結果、粗利が低い商売になりがちで、拡大再生産モデルに入りにくく、事業規模が小さくまとまってしまいがちです。
一方で、超マイナーな趣味をビジネスに転換して、競争を避けるニッチ・アプローチもあり、それで一定の成功をされている方はおられます。しかしスケールアップは難しい。
極端な例え話ですが、「カメムシの匂いがたまらなく好き」という方がいるとします。その特異な好みを持つコミュニティを形成して、それに基づくECビジネスを展開したとしても、対象となる市場は必然的に小さくなりますよね。
このような現実の中。なぜ前澤さんはこのような罠にはまらず、大規模な成功を収めることができたのでしょうか。
なお、「好きなアパレルを商売にして儲かっただけの一発屋で、再現性がない」と彼を断じる方もおられるかもしれませんが、それには誤解があります。
彼は初期のころCD販売で成功したし、音楽でもミュージシャンの憧れであるメジャー契約をしています。また、アート分野でも実は好きなものを集めただけですが、結果として、しっかり収益を出しています。
また、近年はYouTube125万人、Xで日本一の約100万人の登録を抱えるインフルエンサーでもありますので、これもれっきとした事業です。
さらに、災害地をはじめ、全国各地に多大な寄附をされていることも触れておきます。寄附はちょっと稼ぐことと違うよね。と思われるかもしれませんが、彼にとっては「好きなこと」であるのは一緒なんですよね。
実はほとんど前澤さんはこのことを友人にも話しません。なんでそこで照れるのか謎ですが、寄附活動も好きなことのようで、エンジョイしておられるようです。
まとめますと、多くの人が好きな業界にひたすら突っ込み続け、サイズのある商売を、簡単そうに何度も何度も実現する、彼の秘訣は何か。いったいそのグロース実現能力は何なのか。それが二つ目の疑問です。
不思議3 どれだけ成功しても満足しない
最後に三つ目の疑問を投げかけます。
「足るを知る」ということわざがありますが、どうやら彼にはまったく当てはまらないようです。
例えば、もし自分が、生活には一生困らないどころか、持て余してしまうレベルの資産を得たときに、どうなってしまうのか想像してみてください。私たち一般人の感覚からすると、そろそろ落ち着いてもいいころですよね。前澤さんもぼちぼち、いい年齢。50代に入るお年頃です。
お金に対してのスタンスについては個人的なことですし、一人ひとりの価値観が違うことが当たり前で、他人がどうのこうの言うべきではない。ということは大事なことですので先に述べておきたいところですが、前澤さんの場合はいくらなんでも過剰というか。「あれも欲しい。これも欲しい。もっともっと欲しい」が、止まるところを知りません。
普通に話をしていて、「実はこんど、これするんだよね」「あれ買っちゃったんだよね」という突然のテヘペロ発言が十八番なのですが、近しい人ですら毎回戸惑いを覚えるレベルです。
特に、今回は久しぶりに事業会社を設立し、チームを組んで新たな事業を始められるということですが、また一から山を設定して登り始めるという「しんどいこと」を始めてしまうわけです。
これだけ自由奔放で趣味三昧の暮らしを送っておきながら、また事業に挑戦するとするのはなぜなのでしょうか。もう、そんなリスクを取らなくても、頑張らなくてもいいのではないかと思うのですが、どこからその欲は湧いてくるのでしょう。それが最後の疑問です。
いかがでしょうか。
以上のポイントを押さえて、これらの素朴な疑問を共有していただければ、ミステリードラマの謎解きのような感覚で、このインタビューをご観になっていただけるのではないか、と考えた次第です。
三話の放映が終了されたのち、気が向けばまたnoteできればと思います。
お付き合いいただき、ありがとうございました。
よろしければ、コメントも是非お願いします。
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