ミロガンダの秘密【グリーンモンス】
1966年8月14日に初放映されたウルトラマン第5話「ミロガンダの秘密」。グリーンモンス(本編内ではそう呼ばれていない)と云う植物怪獣が登場する。あまり語られることはないが、このグリーンモンスは人の手によって作られた怪獣だ。
オイリス島と云う島からミロガンダと云う植物を採取して日本に持ち帰り、それに品種改良のためのガンマ線を浴びせたところ、幼体期(移動して虫などを補食するとのこと)に逆行し、そして幼体期の姿のまま成長して人を襲い、巨大化して街で暴れる。怪しげな島から怪しげな植物を持ち帰り、怪しげな実験をしたところ怪獣になった。これは人災であろう。
怪獣を生み出してしまった山田博士は、人口増加に伴う食糧難の解決に向けて農作物の巨大化を試みていたのだけれど、生命や自然は勝手にいじると怖いんだぞ。その警告を体現しているのがグリーンモンスなのだ。劇中でイデ隊員がアラシ隊員の怪力を「過ぎたるは及ばざるが如し」と評したのがいみじくもこの物語のテーマに思えて仕方がない。
物語の冒頭で自動車運転中の小林記者(この人もオイリス島調査団員の一人)がグリーンモンスに襲撃されるが、このシーンでは怪獣の全貌が映らずに、影と唸り声だけである。グリーンモンスの影が小林記者の影に覆い被さるのがとても怖くて、震え上がったのを覚えている。もちろんその日の夜は一人でトイレには行けない。お父ちゃんか母ちゃんが僕が用を足すまで見張っていてくれた。怖がりなのは今でも変わらない。怖がりのくせに薄気味の悪い映像や小説が好きなのだから始末に悪い。
オイリス島調査団員が次々に殺害されて、最期に残ったカメラマン浜口節子を科学特捜隊が身辺警護する。その浜口節子を演じたのが若林映子さん。ウルトラマン出演の翌年には007シリーズ『007は二度死ぬ』でボンドガールとして出演。そのエキゾチックな美貌は今でも色褪せない。とても綺麗です。ウルトラQの「クモ男爵」にも出演されています。
グリーンモンスが移動した後に残された粘液を分析すると、「ムチン」と云うタンパク質が検出される。この「ムチン」はカタツムリやナメクジが這った後に残される、キラキラと光を反射する粘液に含まれる物質と云う説明がされるが、一言に「ムチン」と云っても様々なタイプがある。人間の粘膜などに含まれる「ムチン」だけでも20種類以上。オクラやヤマイモやモロヘイヤのネバネバ、ナメコのぬるみも納豆の糸も全部「ムチン」の仲間。この物語では未知の相手が動物なのか植物なのかと云う謎を提示するために「ムチン」を使ったのだけれど、結局植物にも普遍的に「ムチン」は存在する。
ちなみにこの「ムチン」を僕に深く印象付けたのはウルトラマン本放送でなく、一峰大二作の漫画版「ウルトラマン」であった。「ムチン」の説明を映像よりもしっかり詳しくしてくれていたのを覚えている。その漫画を繰り返し繰り返し読むことで小学生の僕は「ムチン」を意識するようなった。無賃労働や無賃乗車と聞くと今でもタンパク質の方の「ムチン」を思い出してしまう。そんなか。
子供の頃はそのカタツムリの通った後の粘液を「ムチン」だと思っていた。梅雨時にはアジサイの葉はモチロンのことあちこちの葉の上にカタツムリがいっぱいいた。最近ではあまりカタツムリを見なくなった。カタツムリの住みにくい日本になったのか。それとも僕の目が悪くなったのだろうか。ちなみにまだ老眼鏡は要らない。文庫本も普通に読める。iPhoneも昔のSEのままだ。
物語の最終盤、グリーンモンスが巨大化して丸の内に出現。ウルトラマンと時計台を間に挟んで対峙し、時計のチャイムが鳴るとグリーンモンスが時計台を壊す対決シーン。この緊張感はウルトラマンでも後のウルトラシリーズでもトップクラス。左右非対称の造形が秀逸なグリーンモンス。最期はスペシウム光線を浴びて、燃やされて灰になってしまう。
その灰が風に運ばれて舞い上がるシーンで、ウルトラQでも使われた劇伴音楽の中でミュージカルソー(ノコギリ)の音色が聞ける。横山ホットブラザーズの「おまえはアホか」で有名なミュージカルソー。マレットで叩いたり弓で弾いたりして音を出す。横山ホットブラザーズは前者。ウルトラでは後者の弓の方であろう。この音を聞くと基本的にお化けや幽霊の出現を想起することとなる。お化けだぞーうらめしやーと云う台詞のバックにこのミュージカルソーのヴィブラートがたっぷりとかかったひゅううううと云う音色は欠かせない。僕もこのミュージカルソーを何本か持っていたのだけれどどこへやっただろうか。元々はジャグバンドなどで使用される楽器。クレイジーケンバンドのレコーディングでも使ったことがある。今度楽器庫で探してみよう。もう錆びちゃってるかも知れないけれど。まあいいか。
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