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ビンボー起業⑩ドン底、再び。の話。

前回は↓

日々起業に向けて情報収集が始まった。

その当時は、まだ今のように起業セミナーなどはほとんど無かった。
ましてや地方の大分では、そういう情報が物凄く少なかった。

そんな中、ある面白いセミナーが大分で開催されるという情報を見つけた。

参加費は3,000円程だったかな?
当時の我が家には、とてつもない大金である。

お金を払って、人の話を聞きに行くというのは、生まれて初めての経験だった。

セミナー参加者は、講師の方とのランチ会に参加できるとの事だった。
でも正直セミナー代の上にランチ代を払える余裕はない。

お昼時の開催という事で、私のお昼ご飯を心配した夫が、
おにぎりを握って持たせてくれた。

なので、私は車の中で夫が握ってくれたおにぎりを食べてからランチ会に参加。

ランチ会の間は「私お腹空いていないので、ドリンクだけで大丈夫ですー」とか言いながら、1番安いドリンクを頼んだ。笑

普通、起業するなんていったら、ランチも食べられなうような状況の人がする様なことではないかもしれない。

でも、どうしてもしたかった。


走り出した矢先の出来事だった。

毎日、仕事をしながら、起業準備に奔走していたある日のこと。
お腹の中に、新しい命が宿った事に気づいた。

嬉しい反面、複雑な気持ちだった。

今、これから起業しようという時に。
大丈夫なのだろうか??

今考えると、嬉しい気持ちよりも戸惑いと不安の方が大きかったと思う。
起業するの、もう少し先延ばしにした方がいいのかな??
なんて気持ちもありつつ。

でも、せっかく授かった命、嬉しい気持ちももちろんあった。

長男の時もそうだったけど、妊娠中って得も言われぬ暖かい気持ちになる。
まるで自分の体がとてもとても大切なものに思えてきて、
幸せな気持ちになる。

それは、私一人だけの体ではなく、大切な新しい命の寝床でもある。

だから、つわりなど体調が辛くても、
お腹が大きくて思うように動けなくても、
それらを全て受け入れることが出来る。

私だけの事ではないから。


夫とも相談して、せっかく授かった命を大切にして行こうと決めた。
これからもっと頑張らなきゃね!と。


そして、心拍確認も出来て、順調にいってるはずだった。

ある日、いつものように病院へ検診へいく。

エコーを見ていた先生の表情が曇って行く。
そして言われたのは
「赤ちゃん、成長していないね。胎嚢がしぼみかけてる。」

突然言われたその言葉。

そう、赤ちゃんは、お腹の中で成長を辞め、
もう死んでいる状態だった。
稽留流産だった。

私は、予想だにしていない事で

「あ、そうですか。。。」としか言葉が出てこなかった。

それからはあんまり記憶がはっきりしていない。
頭の中は真っ白で、フワフワとしてた。

看護師さんに別の部屋に案内されて、手術の説明を受けたり
夫にメールで報告したりしたと思う。

看護師さんに、
「こういう話をすると、取り乱してしまう人が多いけど、冷静だね。大丈夫?」

と優しく話しかけてくれたけど、あまりにも受け入れ難い現実を直視する勇気がなくて、思考も感情も停止させてたのだと思う。

家に帰り、夫と話をした。
ただただ、淡々と。

その日、夫があまりに長いことお風呂に入っていたので、心配になり
大丈夫かな?と思って様子を伺いに行ったら
シャワーを流しながら、泣いているのが見えた。

どうして、こうなってしまったのだろう。

何が悪かったのだろう。


起業、起業なんて言いながら、夜中まで色々作業していて、体に負担をかけてしまっていたのだろうか?

無理していたのだろうか?

それが赤ちゃんを苦しめていたんじゃないか?

自分を責めていないと、感情のぶつけどころがなかったので、
ひたすら自分を責め続けた。

ごめんなさい。
本当にごめんなさい。


もう、体に負担をかけるんだったら、起業なんて辞めてしまおうか。
色々考えた。


バイバイ、赤ちゃん。また会おうね。

稽留流産とは、妊娠初期にお腹の中で赤ちゃんの成長が止まってしまうこと。
流産したあとは、自然と体から生理のように出てくる事もあるけど、
そのまま身体の中に残ってしまうと、今後体に悪影響が出てくる可能性があるので、手術をして取り出さなければいけないと説明を受けた。

手術日は、流産が分かってから約1週間後に決まった。

もう心臓は止まってしまっているけど、あと1週間はこの子と一緒に過ごすことができる。

家族4人で過ごせる最後の7日間を大切に過ごそう。


そしていよいよ手術の日になった。
赤ちゃんとお別れの日だ。

全身麻酔をかけて手術をする。
先生が、1、2、3…とカウントを始めると、スーッと私の意識は遠のいていった。

バイバイ、赤ちゃん。
また会おうね。

目が覚めると、手術が終わっていた。
私の体の中は空っぽになったような虚無感に襲われた。

ぽっかりと、体の中が空洞になってしまったかのような感覚。


手術が終わると、数時間後には退院できる。
とてもじゃないけど、このまま何事も無かったかのように長男をお迎えに行ける気がしなかったので
気分転換に、夫と二人で病院近くの百貨店へ行った。

ちょうど全国の駅弁フェアーのようなものをしていた。

夫が、栄養つけなよ。と、仙台の牛タン弁当を買ってくれた。

一つ、1200円もするお弁当。
二つも買えないから、二人で半分こにして食べた。

美味しかったけど、もうこの栄養が赤ちゃんには届かないと思うと、
虚しい気持ちで涙が出てきた。


百貨店では、高級ブランド店でお買いものをする人たち。

そんな人たちの中に、1200円のお弁当を一つしか買えない私たち。
何やってんだろう。。。。。

もう、気持ちはぐっちゃぐちゃ。

どん底気分。

情けないし、みじめだし。


もう、起業やめちゃおっかな。
何もかも嫌になってきちゃった。


与えられた人生を無駄にしたくない。


また再び、どん底。
今回は、お金がないとか(なかったけど)そんなんじゃなくて、
心がポッキリ折れてしまった。

でも、そこから這い上がるのは早かった。
我ながら頑張ったと思う。

いつまでもどん底気分で、不幸ぶってることほど、
無駄なことはない。
人生は有限だ。

過去に死のうと思った事があったけれど、私は生かされた。

沢山の方が、助けてくれて私に与えてくれた人生だ。
無駄にしてどうする。

自分でやると決めた道だ。
起業という道で突っ走ろう。

そしてまた出発する決心をした。


派遣のお仕事も残すところあと1か月。


そろそろ本格始動だ。


夫が突然無職になってしまったあの日から、1年とちょっとが過ぎていた。




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