私が14歳だった頃 #14歳の栞
わたしが14歳だったころ
廊下はわたしを押し返すように迫ってき
水着の面積は小さすぎた
教室はきゅうくつで
たえず他人の不快な匂いに満ちており
大人たちは自分とは同じ生き物とは思えず
怒鳴ったり強いたり
意味があるとも思えない文字を黒板に羅列したりして
こんな生き物には
とうていなりたくないと思っていた
わたしの首すじには炎のたてがみが生えていて
願えばいつでも違う世界に飛んでいけると知っていた
わたし以外の誰もがそれを知らず
言えば笑われることも
わたしが14歳だったころ
毎日ブスと言ってくるクラスの男子の目をシャーペンで刺したかった
紐で足首をくくりつけ
ベッドの足に結んで寝ていた
クラスメイトの平均より2cmも足が短いと知っていたから
一度きりの万引きで2日寝込んだ
学校の柵を越えるのが誰より得意だった
自分を大切にと言う大人は信用できなかった
大切にできないのは
大人たちのせいだと思っていたから
恥ずかしいのは 懸命に生きているせい
自分を憎むのは 真摯に生きているせい
体を傷つけるのは はやく熟したいせい
支離滅裂なのは
知られたいと知られたくないの間でもがいているから
わたしが14歳だった頃
誰より早く大人になりたくて
わたしはわたしをやめたくて
しょっちゅう自分の体とケンカをした
吐いたり切ったり
今はもうできない
14歳の憎しみ
14歳の羞恥
14歳の怒り
苛立ちと憎しみの底に
光があると思って
かき分けてもかき分けても見つからなかったあの頃
殺される側も殺される側もしょっちゅう夢想したあの頃
要らないはずのものなのに
ときどき思い出す
決してお気に入りではなかったけど
失くしたことはいつまでも覚えている
図書室の本の中に取り残して
いつまでも挟まったままの栞のように
ーー
このテクストは映画「14歳の栞」を観覧して書き下ろしたものです。
水泳部の男子と宇宙と交信している男子が好きでした。
ありがとうございます。