ベトナム人の不法労働者と話した話
ベトナムに来てるんだけど、しょっぱなのフライトから途上国の風を真正面から喰らい満身創痍に。
隣の席に座ったベトナム人の若い男性が何やら熱心に日本語で話しかけてくるのでなんだなんだと思って聞いたら、
彼はなんと、典型的な「悪徳ブローカーに騙されて日本に連れてこられた不法労働者」だった。
「語学学校のお金70万払ってー、日本に来たですよ。
そしたら仕事ばっかりで勉強どころじゃなかったネー!
学校14時から17時くらいまでありますネー!
そしたら一回家に帰って寝ますよ、
そんで夜の8時から働きマース!」
一回家に帰る?なんで?寝る?と思っていたら、そこからが凄い。
「勤務朝の10時までありますねー!」
えっえっ、夜の10時の間違いではないのか、と思い問いただしたが、朝の10時で合ってるらしい。
休憩なしで、夜8時から朝の10時までぶっつづけで働いて、
時には残業で正午まで店に居ることもあったそう。
「お昼に仕事あがったら、そのまま寝ないで学校行きますねー!でもみんな寝るよ!当たり前ね!普通寝るね!
先生は『みんなー!寝ちゃダメよー!」って言うけど、無理ね!勉強なりません!
それが毎日です、1日も休みありませんねー!!!」
そう言いながら、彼は嬉しそうに在留カード(1年経って失効)を見せてくれたが、そこにはばっちり
「就労不可」の文字が。。。
勤務先はとある埼玉のラーメン屋だそうだが、
え、なんて店で働いてたの?会社名教えてよ!というと、急に顔が曇り、キョロキョロしながら「わたし・・・日本語ワカリマセン」 とカタコトになるグェン君(25)。
彼の隣の席には、ブローカーらしきいかにも悪人ヅラの男が腕組みをして寝ていた・・・が、本当は起きていて、我々の会話に聞き耳を立てていたかもしれない。
彼は所定の金額を稼ぎきれなかったので、語学学校のお金を返済するために、これからベトナム中部のとある農場に連れて行かれて強制労働らしい。
……思いっきり、脅されとるがな!!
彼は最後、
「わたし、日本に来てこれね。いまこんな気持ちねー!」と言いながら
スマホのベトナム語→日本語の翻訳アプリの画面を見せてきた。
そこには
「冷水(ひやみず)」
「うらみます」
の2語が……。
生身の人間の直球どストレートな負の感情に久々に面して、生唾ごくり。東南アジアの人の「恨み」は日本人のそれと違い慕情ゼロで極彩色、なんていうか、食傷必至のデッド・ボールであった。
彼は日本を嫌いになっただろうか。
着陸寸前、
「あなたいくつね?」と聞かれたので、30歳だと言うと、すんばらしき笑みをたたえて
「ベトナムではー、30越えると結婚できないねー!!!」と言ってくるので、こっちもつい、笑ってしまって、
あはは〜、じゃあ、ベトナム人とは結婚できないね!と言うと、慌てて
「あなたはできますねー!大丈夫!お金あれば出来るよ!」と言ってきた。
失礼な。
そのくせ、街に着いたら遊ぼうと言って必死に連絡先を聞いてくる。
日本語は勉強したけれど、残念ながら日本人女性の口説き方は学べなかったらしい。
人生悲喜こもごも、ベトナム人のそれも日本人のそれも、おんなしぐらいにはアップダウンありやな。
彼の行く末を案じずにはいられない行きのフライトであった。