映画『演者』公開10日目
映画『演者』名古屋限定上映
2023年4月18日(火)二日目
10:00~ 名古屋シネマテーク@名古屋今池
肉体を休める日。
少しうとうとすると夢の中ではまだ今池や十三の風景が出てくる。
そこで出会った人たちの顔が浮かんでくる。
映画館のスタッフさんたちの声が聞こえてくる。
京都や神戸などにも足を伸ばした。
別に観光はしていない。
地域に根付くミニシアターを観て回った。
お会い出来た方もいた。
貴重な話を聞かせていただいた。
京都や神戸での上映を希望してくださったお客様もいたからさ。
関西まで行って何もしないという選択肢は僕になかっただけ。
でもあまり大きな期待はしないでくださいね。
あくまでも挨拶に行っただけだから。
もうこの夜が過ぎたら名古屋二日目の上映。
僕がいない場所で、僕の創った映画が上映される。
ホワイトカラーな皆様には厳しい日程だけれど、平日午前の需要がないわけじゃない。
例えば美容室で働く人にとっては火曜日上映はとても助かるという言葉を頂く。
それとミニシアターという場所は地域のシルバー世代にとってとても重要な場所だと何度も耳にしてきた。
週に一度、映画館で映画を観る。
ハリウッドの激しい大作などではなくて、名画や海外のマイナーな作品、ドキュメンタリー、自主制作映画、社会問題を扱った映画。
そんな映画が何かの発見に繋がったり、思考に繋がっていく。
映画館だけで受け取れる刺激が存在している空間。
ぎっしり満員になるというような文化とは違うけれど、それはそれは豊かな地域に根差した場所。
古くからの映画館がある場所は歓楽街が多い。
それはつまり空襲で焼け野原になって、闇市が出来て、人が集まるようなキャバレーや劇場やストリップ小屋が出来て、そんな興業の一つが映画だったことの名残だ。
それはまさに戦後復興のエネルギーそのものだと僕は思う。
徹底的な破壊を伴った敗北と喪失。
その中から生きるために生まれたものが映画館だったのだとしたら。
あの時、不要不急と言われた娯楽こそ、実は生きていくための活力の形そのものなのだという証左になる。
映画館は街のシンボルにだってなっていく。
今池も十三も飛行機の工場が近かった。
徹底的に焼け野原にされた街だったはずだ。
どのように立ち上がったのか生き証人が少なくなった今。
街の片隅に残る、建物や入り組んだ道や、その空気感に感じる不在の在。
そこにスクリーンがあって、光と音が集まるだなんてまるで奇跡みたいだ。
何人の方が映画『演者』を観てくださるかなんてわからないけれどさ。
それがたった一人だとしても、何かを受け止めてくれる。
そんなハッキリとした自覚がある。
なくしてはいけないものだと僕は思う。
そういえば、名古屋シネマテークでの舞台挨拶。
パンフレットの紹介をしてくださいねと言われたのだけれど。
思わず、パンフなんていいから映画館のTシャツ買いましょう!とか口走っていて、自分でもおかしかったのだけれど。
展示品のラスト1枚のTシャツが実際に売れていた。
どなたがほんとうに手に取ってくださったのかはわからないままだけど、それはすごく嬉しかった。
少しだけ恩返しができたぞって思えた。
思えばそんなことがたくさんある。
僕は僕の映画の話をしているのか、わからなくなることがある。
今を生きる僕たちのことを話しているような気がすることもある。
ミニシアターは楽しいですよという話ばかりのこともある。
製作委員会もないからレーベルを名乗っている「うずめき」
そのロゴマークは、三つ巴の紋から2つの巴を消している。
それは製作者は作品を完成できないということを表している。
上映館やその土地やイベンターというハードと、鑑賞してくださるお客様の二つが巴を組んで、初めて三つ巴になるという意味を込めている。
もちろん、その3つだけではないのだけれど、その意味を含めている。
十三でも今池でも三つ巴が完成しているという実感を僕は感じた。
舞台挨拶があることが当たり前のように毎日登壇してきた。
けれど、多くの映画上映には舞台挨拶がない。
そういう意味では初めての普通の上映になる。
僕はその時間、少しふわふわしているかもしれない。
誰かの心の動きを遠く離れていてもキャッチできるんじゃないかなんて考えてしまうかもしれない。
どこにも感想があがらないかもしれないけれど。
僕は想像する。
何を感じてくれるだろう?と想像する。
だから明日も楽しみだ。
映画『演者』
企画 監督 脚本 小野寺隆一
音楽 吉田トオル
「ほんとう」はどちらなんですか?
【限定3回上映】
2023年4月15日(土)18日(火)21日(金)
各回10時から上映
名古屋シネマテーク(愛知・名古屋今池)
◆終映◆
2023年3月25日(土)~31日(金)
K'sシネマ (東京・新宿)
2023年4月15日(土)18:30、16日(日)19:00
シアターセブン(大阪・十三)
出演
藤井菜魚子/河原幸子/広田あきほ
中野圭/織田稚成/金子透
安藤聖/樋口真衣
大多和麦/西本早輝/小野寺隆一
撮影 橋本篤志 照明 鈴木馨悟 録音 高島良太
題字 豊田利晃 絵画 宮大也
スチール 砂田耕希 制作応援 素材提供 佐久間孝
製作・宣伝・配給 うずめき
【あらすじ】
昭和20年春、終戦直前のとある村。嶋田家に嫁いだ3人の女たち。
血の繋がらない義理の三姉妹は男たちが戦時不在の家を守り続けている。
家長であるはずの長男の嫁、智恵は気を病んでいた。
三男の嫁、恵美は義姉を気遣う日々を送っている。
次男の嫁、陽子は智恵がおかしくなったふりをしているのではと疑っていた。
やがて魔物が再び女たちの前に現れる。
世界は反転して、演技は見抜かれる。