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そっちの山道はけものみちだよ

OFF・OFFシアターに行く

知っている俳優が駅前劇場OFF・OFFシアターで一人芝居をやるとたまたま見かけた。なんかこのタイミングでこの劇場かぁと少し嬉しくなって上演時間のタイミングもあっていたのでふらりと観劇に行った。

予約なしの当日券でふらりと入って観終わったらすっと帰る。
一人芝居は稽古から大変だっただろうなぁなんて思いながら。

解散した劇団前方公演墳の本公演ではない企画公演があった。映画「セブンガールズ」上映前にも舞台をやりたいという意見から本公演ではなく、オムニバス形式の企画公演をやろうということになった。公開前の準備で慌ただしい中でも現実的に可能な公演だった。
規模は小さめで普段は俳優の劇団員が作・演出をしたりして実験的だった。
30分3本の作品の中に「演者」があった。
僕が作・演出。
いつもの大人数ではなくて出演者は3人の女優と僕だけ。
映画「演者」の下敷きになった作品だ。
その公演をした劇場がこのOFF・OFFシアターだった。

企画公演の面白さ

劇団というだけでインディーだしサブカルなのだけれど、企画公演というのは特別に手作り感が満載でそこの面白さが僕は好きだったりする。
実際、この公演では照明さんは一人だけだったし、音響操作はなんと出演者たちが交代しながらオペレーションをした。受付も場内整理も舞台監督も全て出演者がローテーションを組んだ。
そもそも楽屋のスペースがあまりないからオムニバスにして本番中に楽屋に待機できる人間を入れ替えての公演だったから、自由に動けたしだからこその手作り感だった。
僕は「演者」に出演する身でありながら自分の出番の前まで音響操作までやったりした。さっきまでサンプラーで音を出していたのに、そのまま楽屋に移動して着替えて袖から出ていって芝居をするという。

だからあの劇場の全てのスペースを知っている。
ステージも客席も受付も楽屋も照明・音響ブースも倉庫も。
あの劇場特有の匂いも全て知っている。
時々、下北沢の街の音が劇場内でも聞こえてしまうことも、それが聞こえやすい座席や、空調の音が聞こえやすい席も知っている。

そんな状況で演じることこそ企画公演の最大の面白さだった。

映画「演者」が生まれた場所

下北沢という街は小劇場がいくつもある。
その中でもOFF・OFFシアターは更に小さい劇場だ。
すぐ隣の駅前劇場とは段違いだ。
ここで原始的な形の「演者」が生まれた。

他の二作品がコメディ寄りだったからあえてシリアス側に振った。
だから好きな人は好きって言ってくれるかなって思ってた。
高い評判は貰えなくても、まぁ、そのぐらいがベストだろうと。
もちろん人数はいなくても、何人かはかなり面白がってくれるだろうと思ってた。
照明さんにも、こういうのは良いなんて言われたりしてたから。

自分の想定が低すぎたからかもしれないけれど。
思っていた以上に面白がってくれた人がたくさんいた。
全体の作品の中で毛色が違っていたこともあるし、まさかこの3人がというキャスティングの妙もあったからなのだけれど。
そして想定していた以上に、何をやろうとしていたのかが伝わっていた。
映画「演者」よりもオムニバス舞台は更にわかりづらかったはずだ。
それでも感想を目にするたびに伝わっているんだと驚いた。
自分の出番が終わって客席後方の音響ブースに戻ると、クライマックスで肩を揺らしているお客様がたくさんいて驚いた。

流行ってない

映画化できるかもなぁと直後にぼんやりと思っていた。このままの短編にするか、書き直してちゃんとした長編にするかぐらいまでは考えてた。
ただまぁ逆を行ってるよなとは思っていた。
コメディ作品が多いからシリアス側に行ったように。
今のインディーズムービーの流れの中にない作品なんだろうなと。
別にその流れのカウンターのつもりもないし。
一応、若い人が創るインディー映画で観れるものは観てきたけれど。
こういう作品は多分、その流れの逆を行っているなぁと思った。

どうも逆を行きたがる。
あまり人が歩いていない新雪の上を歩きたがる。
なるべく流行っていないところを探したがる。
これはどうも性癖に近い。

というか流行りに乗るのがどうもむず痒くて好きじゃない。
流行りが悪いことだなんて別に思っていないのに。
それはそれで大事なことだし、ムーブメントってそういうことなのだし、それで全体が盛り上がっていくことだってあるわけで、流行っていうのをいち早く見つけようとしている人だってたくさんいる。そのこと自体は僕自身も大事なことだし重要だぜって思っている。
だのに、いざ自分が何かをやろうと思うと、むず痒くなる。
やっかいだ。

OFF ROAD

企画公演を面白く感じたりさ。
手作り感が逆に好きだったり。
流行の表現方法を避けてみたり。
OFFなのだよ、結局。
あるいはアンダーグラウンド。
自覚しています。

そういう意味では。
今日、足を運んで分かったけれど。
下北沢から。
OFF・OFFシアターから。
一歩も外に出ていないままなのかもしれない。
観念的に言えばだけどさ。

自分の表現とはなんと偏屈なのだろう。
まぁ、でも、偏屈じゃない表現よりも結局好きなんだろうなぁ。
そういうのを相変わらず、かっけー!って思ってるんだもん。
かっこいいか、ダサいかってのが絶対的な価値観のまま大人になっちゃっている。いいのかそれでとは思うし、自覚しているけれどさ。もっとずっと現実的な場所で、なんだったら社会学とか民俗学とかの中から「刺さる」ものを研究して探している人とかからみたらガキすぎるんだけどさ。
もう仕方がない。そう育っちゃってる。もう大人になっちゃってる。諦観。

その代わり。そういう中からしか生まれないものを知ってる。
そういうことだろと自分を納得させるしかない。
やっかいだけど。苦しい場所だけど。

投げ銭は全て「演者」映画化計画に使用させていただきます。