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想像を超えることと期待を越えること
映画『演者』の感想をいくつか目にしてきて、すごく嬉しいなぁと思いながら同時に少しだけ複雑な思いになるなんともいえない言葉がある。
別にネガティブでもないし、厭なわけでもないし、なんにも悪いわけじゃないしその言葉を書いた人をどうこうということでもない。シンプルに自分の今いる場所というのを知るというか、わかるというか。
創作をする以上、観に来てくれる人の期待値のようなものは上回らないといけないと僕は思っている。もちろん、安心できる「いつもの」があればいいという考え方もあるし、そもそも創作は自分の内側から湧き出るもので期待は関係ないという考え方もあるだろうけれど、まぁ、僕はそうだということ。
そういう意味では初作品はスタイルも何もないからとても自由なのかもしれない。とは言え初と言っても、色々な活動を重ねてきたわけだから純粋な初とも言い難いし、イメージというのもあるはずで。
そういう中で映画を公開するということはとても面白いものだった。
「想像以上」「思っていたよりも」「予想外」「越えてきた」
以前から僕を知る人ほどそんな言葉を目にしたような気がした。
それがいくつか並んでくると、だんだん、どんな想像だったのかななんて気になったりする。一切気にする必要なんかないのだけれど。想像の想像なんて馬鹿げているから。
それは最初とても嬉しい言葉たちだった。
映画『演者』は想像していたモノよりも面白かったという反応なのだから。
ただ一週間のうちにその言葉を何度か見るうちに少しずつそれ以外の考え方も僕の心に沈着していった。
確かに僕自身も自主映画を観に行って面白い作品があれば同じような言葉を残すかもしれない。その時の僕の想定の正体だ。
つまり色眼鏡なんか何も持たないと口では言いながら、どこかで自主映画ってこういう感じだよなというラインのようなものを僕自身も持っているのかもしれないと感じたということだ。
もちろんむしろ商業作品よりもミニシアターの方がより面白い作品があることは身をもって知っているんだけれど、それは海千山千の作品群の中のほんのわずかな一部だということも確かなわけで。だからこそ、素晴らしい作品を見つけた時は嬉しいんだもんなぁ。
そしてそれはきっと誰にだってある色眼鏡とは違う宝探しのような何かなのだと思う。
つまり複雑な思いというのは、僕もその海千山千の宝探しの海の中にいるのだということを否応なく思い知るという意味だ。
そしてたとえそれが僕を知っている人でも同じなのだということ。
まぁ僕の場合は実際に創作自体はそれほど多くの人が知っているわけでもないのだけれど、それにしてもだ。
それこそ「セブンガールズ」の映画化は元の作品を知っている人は楽しみに出来るけれど、そうじゃなければどんなものだろうという興味からスタートするのだということ。
そしてその興味は、いくつもの作品体験の経験則の中からなんとなく想像の範囲が出来ているということ。
実際に今までも僕たちが関わった作品もあるわけで。
出演だけの作品は中々想像がつかないというスタートだった。
だから僕が映画を撮影するということはもちろん楽しみにしてくれて興味を持ってくれているし、期待もしてくれているのだけれど、そこはやっぱり安心感のようなものとは程遠い場所にいるんだなぁと思い知らされた。
まぁ、そりゃそうかとも思うのだけれど。
それでも同時に僕は今まで何をやって来たんだろう?なんていう、持つ必要のないモヤモヤとしたものを勝手に持ったりしてしまう。
まったくやれやれだ。
まぁ、僕のことだからその程度のモヤモヤはすぐに吹き飛ばすのだけれど。
それにしても「想像以上」だったのだとすれば胸を張っていい誇れることだ。その想像のレベルがどういうものだったのであれだ。
僕から言わせればこのメンバーなら良いモノになるに決まっているという確信があるわけだけれど、誰だってそうなわけじゃない。
それに、なんか評判が良さげだと思って観に来た方の中にも「想像を超えてきた」なんて言葉を残しているのだから、想像というよりも「期待を越えた」と考えてもいいんだよなんて僕自身思ったりもしている。
だからモヤモヤしながら同時にポジティブな感情も持ったりして。
どうもやけに複雑だなぁこれはなんて思うのだろう。
多分、クラウドファンディングに参加してくださった方でも、これまで舞台なんかで応援してくださった方でも、たまたまスケジュールが合わなかったことも含めてまだまだ映画『演者』を鑑賞していない方がいる。
そういう皆様はこれから今の評判を目にして、更に期待値を上げてどこかで鑑賞してくださるのかもしれないなぁなんて考えたらゾクゾクしてきた。
ここから先の「想像以上」があるのだとすれば、それはむしろすごいことなのかもしれないなんて思っている。
同時に真摯にね。誠実にね。
僕なんてものはまだまだ期待されるだけの人間じゃないのだよと。
自分自身に言い聞かせる。
思いあがるな、思いあがるな。
この作品は間違いなく傑作だと僕は言い切るけれど。
作品ではなく、僕自身に関してはまだまだ青二才なのだ。
まぁ青二才である方が面白いよ。
映画『演者』の映像体験をもっともっと拡げなくちゃなぁと思う。
面白そうとか、興味があるとか、そういう場所から更に一歩。
これは観に行かなくちゃいけない奴だと思えるまで。
その期待値とも正面からぶつかり合わなくちゃいけないぜと感じている。
どんとこいだ。
それでも引き出してやるのさ。
「越えてきた」なんていう言葉を。
そうなって初めて誰かが残してくれた「とんでもない作品」にほんとうに成るのだろう。
映画『演者』
企画 監督 脚本 小野寺隆一
音楽 吉田トオル
「ほんとう」はどちらなんですか?
【限定3回上映】
2023年4月15日(土)18日(火)21日(金)
各回10時から上映
名古屋シネマテーク(愛知・名古屋今池)
初日舞台挨拶あり 登壇:小野寺隆一
【限定2回上映】
2023年4月15日(土)、16日(日)
各回夕方上映
シアターセブン(大阪・十三)
予約開始:4月8日9時より
2日間舞台挨拶あり 登壇:小野寺隆一
◆終映◆
2023年3月25日(土)~31日(金)
K'sシネマ (東京・新宿)
出演
藤井菜魚子/河原幸子/広田あきほ
中野圭/織田稚成/金子透
安藤聖/樋口真衣
大多和麦/西本早輝/小野寺隆一
撮影 橋本篤志 照明 鈴木馨悟 録音 高島良太
題字 豊田利晃 絵画 宮大也
スチール 砂田耕希 制作応援 素材提供 佐久間孝
製作・宣伝・配給 うずめき
【あらすじ】
昭和20年春、終戦直前のとある村。嶋田家に嫁いだ3人の女たち。
血の繋がらない義理の三姉妹は男たちが戦時不在の家を守り続けている。
家長であるはずの長男の嫁、智恵は気を病んでいた。
三男の嫁、恵美は義姉を気遣う日々を送っている。
次男の嫁、陽子は智恵がおかしくなったふりをしているのではと疑っていた。
やがて魔物が再び女たちの前に現れる。
世界は反転して、演技は見抜かれる。
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![小野寺隆一](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/94886361/profile_a810bc4ddb266a85d40070362fa9669e.jpg?width=600&crop=1:1,smart)