部活道スタイル
新月の日。
曇天だからそもそも空は暗い。
雲が厚いと日中でも暗いままだった。
夜はもっと暗いだろう。
AppleのiPadのPVに非難が集まっている。
楽器だとか、ペンキだとかがぺちゃんこになるPV。
そこに残っているのは新型のiPad。
特に日本のクリエイターたちが怒っている。
日本人は道具を大事にするという文化があるからだとか。
いや、日本人以外も大事にしていると思うんだけれども。
でも実際に日本人クリエイターが一番怒っているようだ。
Appleが一番やばかった時期に支えたのはクリエイターだもんね。
驕りだと感じるのは仕方がないことかもしれない。
最近、似たようなニュースをいくつか目にしたなぁと感じた。
メジャーリーガーの日本人が、さっとゴミを拾ったり。
ピッチャーが審判からボールを受け取る時に頭を下げたり。
サッカー選手が相手チームの観客にも挨拶に行ったり。
そんな映像が切り取られては、公式アカウントがSNSに投稿する。
それに、日本人を見習うべきだ!みたいなコメントがつく。
全然似ていないようだけれど、なんだか同源のように思える。
ここ何年かさ、日本の部活動みたいなものがスポーツの世界で見直され始めているらしい。
スポーツ選手の発掘、育成などで大きな成果を出していると。
さらに各大会に挑戦することが大きな成長に繋がると。
外国にもクラブ活動はあると思うんだけれど、ちょっと違うのかな?
正直、僕なんかは中学の頃に窮屈だと思ったし、高校は帰宅部になったけれどもさ。まぁ、部活動に命をかけるような同級生たちは何人もいたし、確かに彼らには良い制度だっただろうなぁって思う。
日本の部活動ってさ、やっぱりどこか道場の精神に繋がっている。
いわゆる相手に敬意を持ちなさい。道具は大事にしなさい。
感謝をしなさい。挨拶をしなさい。
試合前も後も必ず礼に始まり礼に終わる。
部活の最後はグラウンド整備をして道具の手入れをする。
スポーツの上達以上に道徳面を重要視するようなところがある。
クラブチームなんかと違って学校という場所というのもあるのだろう。
バットやグローブを投げたりしたら怒られたもんね、やっぱり。
茶道でも華道でも棋道でもそう。道の精神ってのがある。
部活動っていうよりも、部活道なんだろうなあ。
まんが道とか、女の道とか、やっぱり一瞬で理解してしまう言葉だしさ。
そういうまず心を整えなさいみたいなことがどうやら最近、世界で称賛されている。
そういうニュースの一環だよなぁって思ったんだな。
まぁ、ちょっと窮屈なんだけどさ。
窮屈だからこそ、はみだし甲斐があるってのもあるし。
まぁ道をはずれるってやつなのだけれども。
道の精神からすればギターを潰しちゃだめよね。
むしろ様々な道具に支えられているような姿だったらよかったのに。
そこを非難して、非難する日本人を称賛する人まで現れて。
まぁ、日本人が凄いんじゃないんだよ、ほんとうは。
先人たちがすごいってことなんだよなぁ。実は。
そして僕はそんなことのいくつかを美しいと思いつつ少し窮屈なんだけれども。
それでもさ。
近所にある道場が今、壊されているのです。
柔道着を着た小学生がいたりして好きな場所だった。
ひょっとしたらマンションに建て替えて一階が道場になるとかかなって思ったんだけれども、今日、壁がはがれていてその中に棚があってさ。棚の中にVHSのビデオがびっしり並んでいたんだよ。
ああ、多分、昔の道場生たちの大会のビデオとかだろうなあって思ったら、これを一時避難させないってことは潰れたのかなって。
そうかぁ。なくなっちゃうんだなぁって思ったよ。
あの大きな畳の部屋から、ばんばん受け身の音が聞こえてたなぁとかさ。
モノを大事にする道場の精神。
でもその道場がぺちゃんこさ。
中にある記録ごと、更地にされていく。
精神だけは残るのかなぁ。
窮屈に感じる僕でさえ、少し寂しいなぁ。
世界中で称賛される文化ほど、国内では下火になっているような気がするよ。