灰色の世界
大抵のことは白黒はっきりしたいと思うものだけれど。
残念ながらこの世の中のほとんどはグレーだ。
そもそも色で言っても、完全な白も完全な黒もこの世に存在していない。
頭に「ほぼ」をつけた完全しか存在していない。
だから人は線を引く。
これ以上は白だし、これ以上は黒であると。
しかし実態はすべてグレーであり。
二元論でわりきれるようなものは存在していない。
そして結局、ラインを引いたところで白とも黒とも呼べない中間色がそこに大きく残っている。
どこかで僕たちは白黒つけたいと思いながらグレーであることを認識して受け入れているはずだ。
そうじゃなければ到底生きていくことなんか出来ない。
問題はそれを黒だ白だと言い切ってしまう何かだ。
言い切らざるを得ない何かだ。
本音ではグレーであることを知りながら言い切る。
ディティールを切り捨てる。
そうやっていかないと恐らく社会は成立しないのだろうけれど。
他者との関係性におけるルールなのだからそこは仕方がない。
それでも自分自身に置き換えてみれば別の話だ。
切り捨てたディティールがなんだったのか。
いつか忘れて、いつか凝り固まっていく。
太陽が沈んで夜がやってくるその隙間。
確かに太陽はもう見えないけれど。
僅かに空はまだ明るいあの時間。
或いは太陽が昇ってくる前の空が白んできたあの時間。
トワイライト。
見上げた空はグラデーションを描いている。
昼とも夜とも言い難いあの時間を僕たちは生きている。
いつか切り捨てられたデティールたちが道端にこぼれてる。
取るに足らないなんて思ってしまうようなわずかな想いたち。
微かな憂鬱みたいなものが吹き溜まりに溢れてる。
どこかで子供の泣き声がして。
何かを思い出したのに、それがなんだか思い出せない。
ああ、それはきっといつか僕がこぼしてしまった何かなのだなと気付く。
風が全てを吹き飛ばしてくれたら忘れられるのに。
それは空に舞い上がるだけで、ゆっくりともう一度堆積していく。
ご機嫌な日もどこかが不安でさ。
落ち込んだ日もどこかに希望を持ってた。
自己矛盾の中を進みながら、それでも何かをこぼしてる。
気付けばボーダーが消えていく。
切り捨てたと思っていたディティールが重なり続けてさ。
何が白で何が黒かもわからないほどの高さに溢れてる。
だからと言ってまぜこぜになるわけでもなく。
グラデーションを描いている。
圧倒的な凡庸。
いつか忘れたはずの中間色の記憶が蘇る。
それが明るいグレーなのか。
それが暗いグレーなのか。
未だに想像もつかない。
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